第34話

 「それで今日は何を作るの? 私はまなみんの料理なら何でも食べてみたい!」


「そうですね、今日はビーフシチューにする予定でしたし、そのままで行こうと思います」


俺たちは今、高校をでてしばらくしたところにあるスーパーマーケットに来ていた。


といっても、必要な材料などが分かるのはまなだけなので、他の三人は後ろをついていいているだけだ。


「そういえば亮太たちっていつから付き合ってたんだ? 同じクラスだったのに全く気づかなかったんだけど」


「あ? いつからってそりゃ一年の頃から付き合ってるよ。三年にもなれば別に教室でまでつるむ必要もなかったから、それで気づかなかったんだろうな」


「一年から? お前何回か別れた報告してきてただろ。あれはどういうことだ?」


「あー、その都度復縁してんだよ。いつもくだらない喧嘩別れしちゃっててお互いにすぐ反省して、みたいな感じ」


「なるほどな。それで別れたあとすぐまた彼女ができてたのか。俺はてっきり亮太はチャラいやつだと思ってたけどそうじゃなかったんだな」


「そうだよ! お前は事あるごとに俺をプレイボーイ扱いしてくるけどな、俺は意外と一途なんだからな!」



「わかったからそんなに怒るなよ。ほら、まなたちも買い物終わったみたいだし俺たち荷物係の出番だぞ」


そういって俺は無理やり話題を変えてまなたちの荷物を変わりに持った。


「さて、それでは家に向かいますかー!」


「おい、今から向かうのはお前の家じゃないんだぞ。そこんとこしっかりわかってるのか?」


こうしてみると確かにカップル感、というか熟年夫婦感がある。


亮太の言う通り一年生の頃からの付き合いのようだ。


「こんな道なかで騒がないでくれ。俺とまなに迷惑だ」


「おいおい、何だよその一緒にいるのが恥ずかしいみたいな言い方は! 俺たち親友だろ?」


「どうだか」


「え? 俺ら親友じゃなかったの? そんな・・・。俺泣いちゃうよ」


「ちょっとー、私の亮太を泣かせないでよ! 空くんてそんな人だったんだね! そんな人に私のまなみんは渡せないから!」


「おい! 誰が私のだって? まなは俺のだ! というかまなを物扱いするな!」


なんて言い合っていると、なぜかまなの顔が赤くなっていった。


「まな? 体調でも悪いのか? それならこいつらには帰ってもらうけど」


「い、いえ。別に体調が悪いわけではないので大丈夫です! それより早く行きましょう」


そう言ってまなはてくてくとあるき出した。


俺はどうしてまなの顔が赤いのかわからなくて首をかしげていると、後ろから亮太に話しかけられた。


「おいおい旦那さんや、あんだけ大声で俺のものだ宣言をしておいてそりゃないでっせ」


「そうですよー、旦那ったら自分の言動を理解してないんですか~?」


なんだろう、無性に腹が立つ。


だが先程の発言を思い出すとたしかに俺はものすごい発言をしていたらしい。


別に俺はもう恥ずかしくはないがまなには相当効いたようだ。


それにしてもこいつらはなんでこんなにも相手にするのが面倒臭いのだろう。


「うるさい! いいから早く行くぞ。まなが先に行っちゃうだろ」


俺はすぐにまなの後を追った。


後ろからからかうような声が聞こえたが面倒臭いので無視して歩き続ける。


その後もなんだかんだで雑談が続き、俺たちはいつの間にか目的地の自宅に到着していた。


「おじゃましま~す。久しぶりに来たなここ」


「え? 亮太ここに来たことあるの?」


「ほら、夏休みに俺が親と喧嘩したときあるだろ? あのときに泊まらせてもらったんだよ」


「へー、友達の家とは聞いてたけどまさか空くんの家だったとは」


今気がついたが新村さんが俺のことを空くんと呼んでいる。


この間は名字呼びだったのに、距離を詰めるスピードが相変わらず陽キャだな。


「それでは私はご飯の支度をするので皆さんはリビングで寛いでいてください」


「まな、俺も手伝うよ。この人数だと一人じゃ大変だろ?」


「そんなこととないので大丈夫ですよ。空くんもゆっくりしていてください」


こうなったらまなは引かない。


ここはおとなしく言葉に甘えるとしよう。


「わかった。何かあったら呼んでくれ」


そう言って俺は亮太と新村さんを連れてリビングに向かった。


「それじゃあゲームしようぜ! 空はめっちゃ強いからな。沙奈はボコボコにされるんじゃないか?」


「はー? そんなことないし! 私だって結構やってるんだからね!」


「わかったから静かにしてくれ。あんまりうるさいと外に放り出すぞ」


そういうと二人は素直に従ってくれた。


それにしてもなんで二人はこんなにテンションが高いんだ?


「それじゃあ空くん、スマッシュファイターズで勝負しよ!」


新村さんはいつの間にゲームを起動させたのか、俺に早速対戦を挑んできた。


「まあいいけど。泣くなよ?」


「私のほうが強いんだから!」


そうして勢いよく勝負を挑んできた新村さん。


結果は五戦五勝。


どっちがって? そんなの俺に決まってるだろ。


結局新村さんは俺を一度も倒すことができずに終わった。


その後も何度も挑んできたが、タイミングよくまなの料理ができたため、ゲームは一度終了となり、みんな食卓へと移動していった。

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