第25話

リビングに到着したとき、スマホに着信があった。


画面を開いて誰からなのか確認すると、それは亮太だった。


「ごめんまな、ちょっと亮太と電話してくる。先にご飯食べてて」


そう言って俺は食卓ではなくソファーに座って電話に出た。


「もしもし?お前今学校だろ。どうしたんだよ」


『どうしたじゃねーよ、普段休まないお前が学校にいないから心配してんだろーが』


なるほど。それは確かに・


「ああ、それはすまんな。ちょっと寝坊しちゃってさっき起きたばかりなんだよ」


『はー?じゃあお前今日はさぼりかよ。一緒に休んでるまなさんもってことか?』


「いや、まなが昨日の夜熱出してさ。病み上がりだから大事をとって、ってところかな」


『ふ~ん、それならまあいいや。明日はこいよ!』


「ああ、わかってるよ。それじゃ」


『あいよー』


亮太との電話が終わるとすぐにまなが話しかけてきた。


「亮太くんなんて言ってました?心配の電話ですよね?」


「ああ。俺たちが二人とも休むからサボりじゃないかって言われたよ」


「ふふっ、まあそれは一概に間違いとは言えませんね」


「まあそうだね。あれ、先に食べてって言ったのに待っててくれたの?」


「ええ、だって一人で食べるより二人で食べたほうが美味しいですから」


「そうだね、待たせてごめん。それじゃあたべようか。いただきます」


「はい、どうぞ」


俺たちは両手を合わせて挨拶をしたあと、まなが作ってくれた朝食を食べ始めた。


「今日は朝から随分と豪華だね」


本当に今日はいつもよりも豪華だ。


あ、別に普段の朝食を貧相だと言っているわけではない。


俺からすれば、朝食が出てくるだけでもありがたいぐらいだ。


しかし今日は本当に豪華なのだ。


メニューこうだ。


・白米

・なめこの味噌汁

・焼鮭

・ほうれん草のお浸し

・だし巻きたまご


普段の朝は時間があまりないので、お弁当と同時に作れれうものが多いためここまでの料理が出てくることはなかなかない。


「今日は時間がありましたからね。たまにはこういうのもいいですね」


「そうだね。いつもありがとうね」


「え?あ、いえ。どういたしまして」


あれ、お礼を言っただけなのに顔が赤くなっちゃたみたい。


「今日は一日暇だよね?」


「そうですね、本当なら学校に行っている時間ですから」


「それなら久しぶりにデートしない?」


思えば俺たちは、あの旅行以降一緒に出かけることが全然なかった。

今日は折角休んだんだしこれぐらいしてもいいんじゃないかな。


「ん~、そうですね。私もお出かけしたいです」


「それじゃあ決定だ。食べ終わったら準備して、お昼は外で食べようか」


そして、朝食を終えた俺達はそれぞれ外に出る準備を始めた。


「さて、まなとデートするのは久しぶりだしちゃんと気合を入れて準備しないと」


とりあえず、着ていく服を決めてそれをもって洗面所へ移動をしてシャワーを浴びる。


シャワーから上がったら、服を着て髪を乾かす。


ここからヘアセットになるんだけど、最近流行りの髪型とかを調べていたら俺の好みにぶっ刺さるものを見つけた。


まなの好みに合うかはわからないけど、ものは試しだ。とりあえずやってみよう。


「え~っと、オールバックに乾かしてアイロンでも形を付ける。ワックスは形が崩れないように補助程度につける、だったよな。よし、やるか」


そして俺は約十五分ほどかけてセットを終わらせた。


「最後にスプレーをふりかけてっと。よし、完成!」


俺の準備は終わったが、まなはまだまだかかるはずだ。


そう思い俺はまながいるであろうメイク部屋の方に向かって声をかける。


ちなみにメイク部屋って何と思う人もいると思おうけど、俺もそんなものが本当に必要なのかはわからない。


ただ、まあ部屋は余っていたから別にいいかなと思って作っただけだ。


「まなー、俺ちょっとカフェで飲み物買ってくるからー」


まなは予想通りの部屋にいたらしく、すぐに返事が帰ってくる。


「わかりましたー、いってらっしゃい」


「いってきます」


まなへの報告を終えた俺は靴を履いて外に出て、早速カフェへ向かう。


目的のお店は徒歩五分ほどのところにあり、世界的に有名なお店だ。


それにしても平日のこの時間に外を歩くっていうのはやっぱり新鮮だ。

たまにはこういうのも悪くないな。


そんなことを考えているうちに目的地に到着して、俺はレジに並んだ。


「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」


「アイスコーヒーのMサイズがひとつ、あと、キャラメルフラ○チーノのMサイズもひとつお願いします」


「かしこまりました、お会計千二百円となります」


俺は、財布から千二百円ちょうどを出して会計を終える。


あとは作り終わるのを待つだけだ。


今は平日の昼前ということもあり、客が殆どいないので早めに帰れそうだ。


数分後、予想通りすぐにドリンクを渡された俺はまっすぐ帰宅し始めた。


あと二分ほどで家につく。


その時、あいつに声をかけられるなんて誰が予想できただろうか。


「あれ?天心くんじゃーん。何してるの?」


予想外の人物。それは新村沙奈だった。

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