第17話

意識が深い海の中から浮上してくる。


しばらくその感覚を味わいゆっくり目を開けると、真っ暗な部屋の中を一筋の淡い光が優しく照らしていた。


スマホを開いて時間を確認すると、三時と表示されていた。


そこで初めて俺は寝落ちしたのだと認識する。


亮太には申し訳ないことをしたな。


しかしまた変な時間に起きてしまった。


眠気も覚めてしまって寝れそうにないし、とりあえず喉が乾いたしアイスココアでも作るか。


ソファから体を起こして台所に向かうとトイレから水を流す音が聞こえた。


ん?誰か起きてるのかな。こんな時間に起きてるなんて多分涼太だろう。


そう思い俺は進路を変えてトイレの方へと歩いていく。


すると、ガチャっと音を立ててトイレのドアが開き、中に入っていた人がゆっくりと姿を現した。


「え、まな?こんな時間にどうしたの?」


トイレから出てきたのはおれの予想と違い、まなだった。


「空くん、すみません起こしてしまいましたか」


「いや大丈夫だよ。寝れないの?」


「いえ、ゆっくり寝ていたのですが目が覚めてしまって」


「そっか〜、同じだね。おれも目が覚めちゃってさ、今からココアでも作ろうかと思ってたんだ。まなも一緒に飲む?」


「いいですね」


「じゃあ作ってくるからまなはゆっくりしてて」


「それではお言葉に甘えさせていただきますね」


そう言ってまなはリビングへと向かっていった。


おれだけならアイスで良かったけどまなも飲むならホットに変更しよう。


お湯を沸かして二つコップを用意し、ココアの粉を規定の量だけ入れる。


出来上がったココアを持っておれはリビングへと向かった。


「おまたせ〜ってあれ、寝ちゃったか」


そこにはソファの上に横たわって静かに寝息を立てる姿があった。


普段規則正しい生活を送っている彼女にはこの時間に起きること自体イレギュラーだったのだろう。


そんなことを思いつつ寝室から毛布を持ってきて静かにかけてあげる。


まなの寝顔。


心の底の男心がくすぐられてしまう。


少しぐらい触ってもバレないよな?


ていうか夫婦なんだからこれぐらいいいよな?


心の中で葛藤を繰り返しおれは決心をする。


柔らかそうなほっぺたをつんつんと突きそれを何度も繰り返す。


あぁ可愛いな。


自然と表情が緩んでしまう。


すると後ろからガチャっと音が鳴り、体がビクッと反応する。


「あれ、空?起きたのか」


後ろを振り返ると、眠たそうに目をこする亮太がいた。


「しーっ、まなが寝てる」


口に指を当ててそう言うと亮太はすぐに理解して静かにこちらへ寄ってきて小声で話し始めた。


「お前まだ眠い?眠くないならあっちで話そうぜ」


亮太は食卓を指さしながらそう言った。


おれは頷いて2人で静かに移動した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る