第16話
こんにちは工藤くん。今ご飯を作っていますから是非ゆっくりしていてください」
「お邪魔しますまなさん! 今日はお泊まりを許してくれて本当にありがとう!」
「ふふっ、そんなの構いませんよ。いつも空くんがお世話になっていますからね」
「余計なことは言わなくていいから! こいつにお世話になんてなってないし!」
急になんてことを言うんだ。
そんなことを言ったらこいつが調子に乗ってしまうでは無いか。
「えへ! そうかな! 俺がこいつのこと世話してやってるように見えるかな! そうかそうか〜」
ほら、すぐ調子に乗った。
「もういいから! ほら、早くあっちでゲームするぞ。それともここで家を追い出されたいか?」
「本当にすみませんでした。こんな愚かなわたくしめをどうかお許しください」
俺が少し脅すと、コンマ数秒で態度を変えてきた亮太を少し睨み、顎であっちへ行け、と合図をだす。
「かしこまりました!」
そう言って亮太はリビングへと向かっていった。
「随分と賑やかですね。とても楽しいです」
「そうか? あんなのただうるさいだけだろ。すぐ調子に乗るし」
「周りから見ると空くんと工藤くんの兼ね合いは見ていてとても面白いですよ? それに、普段は見れない空くんを見れる気がします」
「まぁ、まなが楽しいならそれでいいけどさ。とりあえずご飯を作っちゃおう。俺も手伝うよ」
「いえ、ここは私がやっておくので空くんは工藤くんとゲームでもしてきてくださいな」
まなは、包丁を持とうとする俺の手を掴んでそう言った。
「それに、工藤くんが寂しそうな目でこっちを見ていますよ?」
リビングの方を見ると、ゲーム用のコントローラーを握った亮太がまだかまだかと、こちらを見つめていて、まるで犬がしっぽを振っているようだった。
「それじゃあお言葉に甘えさせて貰うよ。ごめんな、1人でやらせちゃって」
「そんなの大丈夫ですから」
「それじゃああっちに行ってるよ。なにかあったらすぐに呼んでくれ」
「わかりました」
「亮太! 久々にあれやるか」
「お! やっぱりあれだよな? 俺もそれを言おうと思ってたところだ」
「今日も俺がボコしてやるよ」
「はぁ〜? おれがお前をボコしてやるよ! まなさんの前でカッコつけさせてたまるか! お前のかっこ悪いとこを見せてやる!」
俺達は、一時期とてもハマっていたゲームを起動させて、すぐにプレイを開始した。
それから数十分が経ち、結果は二人の表情を見れば明白だった。
「まだまだだな。あんな啖呵を切っておいて雑魚いままじゃないか」
「う、うるせ! 俺だって負けたく手負けてるんじゃねーし! お前が強すぎるんだろうが!」
「言い訳か?」
まぁ確かにその通りではある。
俺たちが今やっているゲーム、通称スマシスで俺は世界のトップランカーに名を連ねていた時期があるのだ。
「まぁ、もっと上手くなったら出直してこいよ。まぁその時は俺ももっと上手くなってるけどな」
「クソ! もう一戦やるぞ! 次は勝ってやる!」
「ゲームはそこまでです」
意気込む亮太を前にまなが電源を消す。
「ご飯ができましたから、まずはみんなで食べましょう」
少し不服そうな亮太も、ご飯の匂いを嗅ぐとすぐに機嫌が治った。
「やった! 空にめっちゃ好評なまなさんの料理! 今日はこのために来たと言っても過言では無い」
「じゃあご飯を食べ終わったら家から出ていくか?」
「すみませんまた調子に乗りました」
「ふふっ、おふざけはそのぐらいにしておいてくださいね。熱いうちに食べてしまいましょう」
俺たちはそんな談笑を交えて食卓へ向かった。
テーブルの上に用意されていたのは、白米、唐揚げ、味噌汁、サラダの四品だった。
健康を気遣ってか、唐揚げよりもサラダが多く盛り付けられているのはきっと俺たちのためだろう。
「それじゃあ遠慮なく食べてください」
「まなさんありがとう! それじゃあいただきます!」
そう言って亮太は美味しそうにご飯を食べ始めた。
「! なんだこれ! うますぎる! 俺の母さんの百倍は料理上手だぞこれ!」
「バカ、自分の親と人の妻を比べるな。お前はまだそんなに家を出されたいのか?」
「言い過ぎですよ空くん。別に工藤くんも悪気があったわけじゃないんですから」
俺が亮太をからかっていると、まなから仲裁が入ってしまい、思うように亮太をからかう事ができなかった。
それを見て亮太は口を開く。
「普段あんなに怖い空も、まなさんの前だとただの猫みたいだな!」
「おい、いい加減にしとけよ?」
「こら!」
「「ごめんなさい」」
また、まなに怒られてしまった。
「亮太、ここは休戦と行こう。俺はこれ以上まなに怒られたくない」
「そうだな、ここは大人しくご飯を食べるとしよう」
そう言って俺たちは静かにご飯を食べ始めたのだった。
それから三十分程が経ちご飯を食べ終わった俺たちは順番に風呂に入っていた。
今は亮太が入っている。
「まな、今日は本当にありがとう。あいつの分のご飯も作ってくれたしさ」
「いいんですよそんなことは。私も普段と違う空気がとても楽しかったですから」
「そうか、それなら良かった。今日は俺は亮太と一緒に客室で寝るからまなは寝室でゆっくり寝てくれ」
「わかりました、それでは私は先に失礼しますね。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
まなは眠そうに欠伸をしながら寝室へと向かっていった。
今日はいつもと違って家にた人がいたからな。
疲れていて当たり前だ。
まなにはゆっくりとやすんでもらおう。
さて、亮太が風呂から上がってくるまで暇だし、少しゲームでもして待つかな。
そう思ってソファの上に寝っ転がりスマホを開いたが、俺はいつの間にか寝落ちをしてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます