第15話
あれから数日が経ち八月の中盤、俺はあることで悩んでいた。
「頼むよ〜、一日だけでいいからさ! 」
亮太が家に泊まりたいと言い出してきたのだ。
「まなもいるし、お前が寝るスペースなんてないんだよ。それに、まなの少し崩れた姿を俺以外に見られたくない」
「そんな惚気聞きたくねーわ! って、そうじゃなくて。お前しか頼れる奴がいねんだよ〜、親と喧嘩しちゃって家出てきちまったからさ、どこかで絶対借りは返すから! 頼む!」
どうしよう。
俺はいいけどやっぱりまなの事が気になるな。
特に関わりのない人と同じ屋根の下で寝るなんて嫌だろうし。
でもな〜、ここまでお願いされて断るっていうのもなんだか気が引ける。
「は〜、一応まなには聞いてみる。今買い物に行ってるからちょっと待っとけ」
「神! ガチでありがとう! じゃあお菓子とか買って待ってるわ!」
「あ、おいっ! まだ泊まれるってわけじゃ······切られた。まぁいいか、とりあえずまなに電話してみよう」
まなとのトーク画面を開き、電話をかける。
「はい、どうかしましたか?」
「もしもし、急にごめんな。俺の友達の亮太ってやつがいるんだけどさ、そいつがどうしても家に泊まりたいって言ってて。俺だけじゃ決められないからまなに確認を取ろうと······」
「いいですよ?」
「そうだよね、じゃあちょっと断ってく······え? いいの?」
「私のことは気にしなくても全然大丈夫ですよ。工藤くんは別に知らない仲でもないですからね」
「そうか、ありがとう! それじゃああいつの夜ご飯とかもお願いできたりする?」
「もちろん。まだ買い物の途中ですから彼の分の食材も買って行きますね」
「本当にありがとう! 今度何かお礼するよ!」
「ふふっ、楽しみにしていますね。それじゃあ切りますね。また後で」
「あぁ、後でな」
そう言って通話が切れる。
まさかOKが出るとは思わなかった。
それに亮太の事を知っているみたいだったし。
まぁそれは後でいいから、とりあえずあいつに連絡しないと。
「もしもし? まなが泊まっていいってさ」
「まじ?! お前の奥さんまじで天使だな! それじゃあお前ん家向かうわ! じゃあな!」
「あっ、おいちょっとまて! はぁ、あいつはなんで人の話を聞かないんだ。もういいや、とりあえず部屋の片付けでもして待とう」
それから三十分程が経ち、まなが買い物から帰ってきた。
「おかえり、急にごめんね。変なやつ泊めることになっちゃって」
「大丈夫ですってば、空くんは気にしすぎです。ここは空くんの家なんですよ?」
「そうだね、ありがとう」
なんて優しいんだ。
さすがまなだ。
「それじゃあ私は夜ご飯の支度を始めますね。空くんは工藤くんのお迎えにでも行ってあげてください」
「いや、お迎え入らなさそうだ。さっきメッセージでもう少しで着くって連絡が来たからな」
「そうですか、それじゃあ家で待ちましょうか」
ピンポーン
「お、噂をすれば」
玄関に向かい俺はドアを開ける。
「うぃーす、来たぞ〜」
「なんだその馬鹿でかい袋は」
ドアの前に立っていた亮太は、両手にとても大きい袋を持っていた。
「何って、お菓子とかジュースに決まってるだろ? お泊まりなんだからよ」
「買いすぎだろ馬鹿が。お前そんなのくいきれるのかよ」
「まぁ夜ご飯も兼ねてだからな。これくらいで丁度いいだろ」
あ〜、そうだこいつがすぐに電話を切ったせいで伝えられてなかった。
「夜ご飯ならまなが作ってくれる。だからお前はそのお菓子を食いきれないぞ?」
「え! まなさんがご飯を?!」
「声がでかい、玄関だぞここ」
「そんなこと言うなら早く中に入れてくれよ〜。意外と重いんだぞこれ」
「あぁ、それもそうか。いいぞ入って、準備はしてある」
「それじゃあ遠慮なく。お邪魔しマース!」
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