第18話

あれからどれくらいの時間がたっただろうか。

2人で雑談をしてるだけなのに時間が経つのがとても早い。


「なぁ空、まなさんとの結婚生活はどうだ?正直おれは心配だったよ。話しかけるだけであんなに緊張してた空がほんとに2人で生活していけるのかなって」


これはおそらく亮太の本心だろう。


おれ自信こんなに楽しく過ごせるとは思ってなかった。


「楽しいよ。確かに最初は緊張すると思ってたけどさ、あんなに真摯におれにむきあってくれるのに緊張なんかしてられないだろ?ってそう考えたら気持ちが落ち着いたんだ。プロポーズしたのもおれで最初に好きになったのもおれ。なのにこっちが素っ気ない態度取るとかありえないからさ」


「そっか。その言葉を言えるなら安心だな。これからも楽しくやって行けることを願ってるよ」


「あぁ、ありがとな」


亮太はおれの親友で多分まなよりもおれのことを理解してる。だからこそおれへの心配があったのだろう。


「ところで、おれが部屋から出てきた時お前は何をしていたのかな〜?」


!!


急なことを言われて口からココアを吹き出してしまった。


「な、なんだよ急に関係ないだろ!」


「いや〜だってまなさんの前にしゃがんで手をゴソゴソしてるからさ?手を出そうとしてるのかなって」


なんでこいつはこんなにニヤニヤしながらしてるんだ!

なんか腹立つな。


「お前が想像してるようなことはないよ。父さんとも約束してるし」


「約束ってなんだよ」


「結婚する時に父さんといくつか約束をしたんだ。それを破れば無理やり離婚させるって」


おれはゆっくりと約束の内容を話し始める。


一つ、いくら生活が楽しくても成績は絶対に落とさないこと。


二つ、責任を取れないことをしないこと。


三つ、まなを傷付けるようなことを絶対にしないこと。


四つ、月一でいいから現状報告をすること。


この4つを守らなければおれ達の生活が終わってしまう。


亮太に全て話すと、真剣な顔で口を開き始めた。


「責任を取れないことってさ、つまり行為ってことだよな?空はさどこからがダメだと思ってる?」


急になんだその質問は。


「そりゃ、、、ん〜どこからなんだろう」


「お前のことだからその約束、結構重くとらえてね?」


「それは当たり前だろ。約束を破るだけでまなとの生活が終わっちゃうんだ。そんなの軽く捉える方が難しいだろ」


「まなさんとの生活が終わるぐらいなら自分が我慢し続ければいいってか?じゃあ聞くけどよ、世の子作りってだいたいキスからスタートするだろ?つまりキスも行為の中の一つとして捉えられるわけだ。それはわかるか?」


おれは静かに頷く。


「お前の父さんの約束を遵守するならキスも禁止になるわけだけどそれでいいのか?世のカップルはだいたい付き合って2ヶ月とかで済ましちまうその行為をお前は高校を卒業するまで禁止されるんだぞ?」


「それはしょうがないだろ。おれは約束を破ることは出来ないよ」


「あのな、もっと余裕を持てよ。約束をそんなに厳しく考えるな。キスしただけで妊娠するのか?そんなわけないだろ。避妊すれば行為をしたって妊娠しないんだ。キスぐらいよくね?」


確かに。キスなんて夫婦でもないカップルですらしてる事だ。それをおれ達がしちゃダメなんて道理はないな。


「でも、そうやって俺の気持ちを押し付けたらまなが傷ついてしまうかもしれない。そう考えたらどっちにしろそんなことは出来ないよ」


「は〜、お前は馬鹿なのか?なんでお前の無茶なプロポーズにまなさんが応えたと思う。その後もこうやって一緒に時間を過ごしてくれてさ。それはお前のことを好きだからだろ?好きな奴にキスされて嫌がる人なんていねーよ!」


「ちょ、わかった、わかったから声を抑えろ、な?まなが起きちゃうから」


まなの方を確認するが起きる気配は無い。


「あぁ、すまん。でも俺の言いたいことはわかったか?」


「わかったよ。でも今すぐどうこうってするわけじゃない。おれはゆっくりでもいいと思ってるよ。まながその気なら話しは別だけどさ」


「そっか、わかったならいいんだ。お前はなんでも重く捉えすぎるからさ。要はもっと視野を広く考えろってことだよ」


「うん、ありがとな」


「いいんだよお礼なんて、おれ達親友だろ?」


おれはいい友を持ったようだ。こんなに他人のことを考えられるやつなんてそうそういたもんじゃない。


「あぁ、これからもよろしく頼むよ親友さん」


「あたりまえだ、親友」


話が一区切りつき、時間を確認するとすでに6時を過ぎ外は明るくなり、小鳥が元気に鳴いていた。


「もうこんな時間だ。まなも起きるだろうし二人で朝飯でも作る?」


「おれ料理できないからパスで」


「は〜、わかったよ。じゃあご飯作るからゆっくりしてて」


「ん、ありがと〜。おれはまなさんのこと起こさないように客間に居るわ〜」


そう言って亮太は静かに部屋へ戻って行った。


まなとの生活。もう四ヶ月経ったけど目立った喧嘩もないしとても順調ではある。だけど、この間聞いたまなの辛い過去。今はまなも元気だけどきっといつかは思い出さなければいけない。それまでに幸せな思い出を沢山作ろう。


まなが辛い時はおれが傍にいることを知っておいて貰えば、きっと乗り越えられるはずだから。

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