第4話

あれから一ヶ月、色々なことがサクサクと進んだ。


まず婚姻届、これはあの場で書いてすぐにその日の放課後に一緒に区役所へと出しに向かった。


その時に若井さんに、君の両親にも挨拶をしたいと言ったが、両親は二人とも海外赴任でいません。と断られてしまった。


次に家の事だが、これは父さんが保証人となってくれて、マンションの一部屋を借りることができた。


今は二人でそこに住んでいる。

まぁそんな感じで一ヶ月間過ごしたわけだけど、うん。最高。


結婚っていいな。毎日朝から晩まで好きな人の顔を見続けられるんだから。


あ、これと同じことを若井さんにも言ったら、彼女は赤面してしばらく顔を合わせてくれなかった。


「ねぇ若井s」


「まーな!」


そう僕が唯一問題に感じてることがある。


それは名前呼びだ。


僕は二年以上若井さんと呼び続けたため、その呼び方が定着してしまったのだ。


あと、普通に恥ずかしいというのが本音。


「ま、まなはさ」


「はいどうしました?」


「新婚旅行とか行きたくない?」


「そうですね。行きたい気持ちはありますが、私たちは行く時間が無いのでは?あとお金も」


「あと少ししたら夏休みに入るだろ?そこで一緒に出かけたいなって。お金に関しては、今は受験のために辞めたけど、一年と二年の時はバイトしてたから結構貯金があるんだ。それに、僕はまなと二人でどこかに出かけたいな」


この一ヶ月でわかったことがある。


まなはとても倹約家だ。全然お金を使わない。


だから、この旅行も断られるかもしれない。


それでも僕は行きたかった。


「ダメ?せっかく結婚したからさ、夫婦っぽいことしたいな」


そう言うと、まなは顎に手を当てて考え込み始めた。


そして数十秒後口を開く。


「いいですよ。行きましょうか、新婚旅行」


「やった!まな大好き」


僕はまなに抱きついた。


まなはまだスキンシップに慣れていないらしく、少し硬直するものの、少ししたら抱きしめ返してくれた。


「でもその前に定期テストですよ?わかってますか?受験前のテストがどれだけ大事か」


あ、そうだった。まぁ僕は毎日復習してるし、まなはずっと学年一位だしそこは大丈夫だろう。


「大丈夫、ちゃんとわかってるよ。勉強を疎かにしない。それが父さんとの約束だから」


そう。僕がまなと結婚するに当たって、父さんからいくつか条件が出された。


その中に、勉学を疎かにしないという項目があるのだ。


「わかっているならいいのですが」


そう言ってまなは僕に向かって微笑む。


あぁ、なんでこんなに美しいんだ。これが毎日見れるなんて。ニャニャ止まらn。


「いっ、痛いでふまなはん。ほっぺをふまむのは、やめて、くだはい」


「私を見て笑うこのお口はお仕置です!」


あぁ、かわいい。幸せだ。この幸せを奪われないためにも、父さんとの約束はしっかりと守ることにしよう。

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