第5話

新婚旅行にいく約束をしてから更に一ヶ月後、僕たちは夏休みに入って自宅でゆっくりしていた。


「ねえねえまな?今日はやけに積極的だね。どうしたの?」


なにが積極的か、それはもちろんスキンシップである。


彼女は自分からくっついてくることが少ないのだが、今日は僕がソファで小説を読んでいると自分から膝の上に乗ってきたのだ。


「たまには自分から愛情表現をしたくなったんです。いつも私は貰ってばかりですから、たまには私からと思いまして」


あぁ、なんでこんなにかわいいんだこの子は。


やばい、このままだと理性が崩壊してしまうかもしれない。しかしダメなのだ。


父さんとの約束で、そういうことは高校を卒業してからということになっている。


我慢だ我慢。


「そっか。ところで旅行の話だけどさ、どこいきたいとか希望はある?」


「そうですね、やっぱり温泉でしょうか。旅館ならばふたりでまったりできますし」


「へ~ふたりで、ね」


「な、なんですか急に」


「いや別に?まなもそういうこと言うようになってきてくれたなって。ほら、最初はスキンシップも苦手だし、僕と目が合うとすぐそらしちゃってたじゃん?それが今は、、、ねえ?」


そういうとまなは顔を真っ赤にして、ぽこぽこと効果音がつきそうなかわいい叩き肩で僕の太ももをたたいてきた。


「もう!いじわるするのはやめてください!私だって頑張ってるのに、、、、」


やばい、これ以上からかったらしばらく口を利いてくれなくなってしまう。


「ごめんって。もうしないよ」


そういって僕はまなの頭を優しく撫でた。


しばらくそうしているとまなは機嫌が直ったらしく、


「空くんの手、好きです」


何て言いながら僕のもう片方の手をにぎにぎしてきた。


本当に何なんだこのかわいい小動物は。


「話戻すけどさ、温泉にいくのはいいとして、やっぱりここら辺の温泉といったら、登別かな」


(登別→北海道の温泉地。ちなみに彼らが住んでいるのは札幌である)


「そうですね、そこにしましょうか。旅館はわたしが予約しておきますね!ちなみに何泊します?」


「そうだな~、二泊でいいんじゃないか?せっかくの旅行だから長居したいし」


「じゃあ今日からちょうど一週間後の八月三日から二日間予約しておきますね」


「ああ、ありがとな」


こうして僕たちの新婚旅行の予定が決まった。


そして旅行前日。


「まな~、荷物ってあんまり要らないよなホテルに泊まるから浴衣があるだろうし」


「そうですね、ですが帰りに着用する服を持っていかないとですね。あとは下着を数着。衣服類はそんなところでしょう」


相変わらずまなはとても頼りになる。


「準備はこんな感じでいいんじゃないかな」


「そうですね。あとはしっかりと休んで明日に備えるだけです。明日は電車での移動ですから」


「それじゃあご飯にしようか。今日はもうスーパーにいく気力もないから出前にしよ?」


「じゃ、じゃあ私ラーメンが食べたいです、、、いいですか?」


か、かわいい!!!そんな上目づかいで頼まれて断るわけないだろ!


「もちろんだよ。まなはいつも頑張っているからね」


そういって僕はラーメン屋のチラシを渡して、ふたりで一緒に選んだ。


「ふぅ~、おなかがいっぱいだ。もう食べれないや」


「ふふっ、空くん大盛りを頼んでいましたからね」


「まな、こっちおいで」


そういって僕は自分のひざを叩く。


するとまなは思ったより素直にストンっと僕の上にすわった。


「僕さ、未だにこの生活が夢なんじゃないのかって思うときがあるんだ。だって高校に入学してからずっと好きだった人と結婚してるんだよ?こんな幸せなことがあっていいのかーって」


僕が話始めると、まなは黙って僕の話を聞いてくれた。


「僕は何か特別な能力があるわけでもないのにさ、僕を選んでくれてありがとうね。まな、愛してる」


そう言って僕は後ろからまなを抱きしめる。


「私も愛していますよ空くん」


あぁ、やっぱり幸せだな。僕は誓うよ。


この幸せな生活を絶対に守り続けるって。


「さて、そろそろねましょうか。明日は早いですからしっかり早起きしてくださいよ?」


「分かってるよ。それに万が一起きれなくてもまなが起こしてくれるでしょ?」


「それもそうですね。それじゃあ、おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」

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