負けイベントを覆す配信をしていたたらまさかオリジナルストーリー用意されていました!?

猫カイト

初配信 『マスクドアベンジャーズをぶっ壊す!』

 皆さんは負けイベントという物をご存知だろうか?

例えば序盤から終盤レベルのキャラが出てきたり、

即死技を持っていたり、あり方はそれぞれだ。

 だが共通しているのは勝てないように設定されていること。

 負けた所に師匠とか仲間とか新キャラが助けに来たり、

新たな技を習得するというイベントのトリガーとなったり、それがいわゆる負けイベントだ。

 だがその負けイベントを崩そうとする変態も存在する。

これはその負けイベントを崩そうとした一人の配信者の話。



「皆さんこんばんは。ドウモシチョウシャ=サン。負けイベクラッシャーです。今日は人気マスクドアベンジャーズを壊していこうと思いまーす。」


『は?』

『どういうこと?』

『チート宣言乙。』

『通報しますた。』


コメントが疑問と怒りのコメントで埋め尽くされる。

そりゃそうだ人気ゲームを壊すといっているのだから

そうなる。

誰だってそうなる。


「コメントが荒れてますねぇー 説明が足りませんでした今回は序盤の負けイベントで有名なデリンジャーを撃破したいと思いまーす。」


『は?』

『マジ?』

『嘘乙。』


 デリンジャー、それはマスクドアベンジャーズに登場する敵キャラで主人公の復讐相手でもある。

主人公の村から略奪の限りを尽くし、主人公の家族や村の人々を焼き払う男。

 主人公はその悪魔のような所業を目にし、激昂して襲いかかるが返り討ちにあってしまい復讐をするために

仮面を被り敵組織に潜入するというのがゲームのストーリーだ。

その復讐というダークなストーリーが人気をはくしたゲームなわけで当然勝てないように設定されている。


『無理だろ。あいつHPいくつあると思ってるんだよ?』

『そもそもストーリー的に勝てないだろJK』

『同接の為とは言え吊りタイトルはどうかと思うゾ。』

『チートでもすれば別だけど』


 コメントが無理という意見で埋め尽くされる。

そりゃそうだ。

 なんせデリンジャーの体力は5000もあり攻撃も一発食らえば即死だし、しかも序盤で即死アイテムなんて手に入らないし、ボスキャラは即死無効がほとんどだ。

コメントであった通りチートでもしなきゃあり得ない。

 俺はどうせ吊り生放送だと思い、枠を閉じようとする。


「待って!皆帰らないで!方法は思い付いてるから!」


『ほぉ。』

『ほんとぉ?』

『絶対嘘だゾ。』


「その方法とはー」


 クラッシャーがそこでドラムロールのSEを流す。


「どうせ引き延ばしだろ?」


 俺は呆れながらもウィンドウを切れずにいた。

もしそれが本当なら革命的な事だ。

まぁ、ストーリーに影響はないだろうが。

 負けイベントには時折、勝てるものも存在している。

だが勝ってもストーリーに反映されないのが普通だ。

負けイベントに勝った場合のストーリーを作るなんてメモリーの無駄遣いだ。

どこかのピエロも教えてくれるぐらいの無駄遣いだ。

 そんなことを考えているとドラムロールがなりやむ。


「『ハメ殺し』をします。」

 

『は?』

『だから気に入った。』

『解散。』


視聴者がみるみる内に去っていく。

そりゃあそうだ。

一発食らえば終わりで体力が5000もあるキャラをハメ殺し出来るわけがない。


「皆さん攻撃をどうするかって思ってますね?あるぜ!取って置きの策がな。」


『ま、まさか』


「そうそのまさかさ。逃げるんだよォ!視聴者ァ!!」


『無理無理無理』

『そもそもボス戦から逃げれねぇだろダボが。』

『逃げれても体力リセットされね?』


「まぁ、見ててくださいよー」


そういい配信にゲーム画面が写し出される。


「やっぱりこのタイトルかっこいいですよねーこの黒い甲冑といいロゴといい、どこか往年のレトロゲーを思わせるような...」


視聴者の不安を他所にどんどんゲームを進めていく。


【あなた名前なんていうの?】

 

「名前かーそういえば考えてませんでしたねー。」


『コメントここまで無視できるの一種の才能だわ。』

『あぁ、理解したよ。あんたが理解しないということを』


視聴者は自信満々なクラッシャーに呆れていた。

そりゃあそうだ。

聞かされた作戦は逃げるだけ。

呆れない方がおかしい。


「まぁまぁ、落ち着いてー 気分転換のために安価でもしますかー。」


『来ちゃ!』

『待ってた。』

『マ?』


「それじゃあ私が打った下のコメントが名前ね。」


 そこからコメントが爆速に流れていく。

さっきまでの疑っていた空気はどこへやら、

そんな風に思っていた俺もコメントしているのだから分からない。


「ええーと 名前は...アレス。何か荒れそうな名前ですねー。」


『草』

『神様の名前なんだよなぁ』

『その発想は無かった。天才じゃったか。』


「よーしここから自由行動のパートまでAボタン連打ですねー」


『まさか?』


「そんな皆様のために~映像を用意してきました!」


『ほんへ』

『本編来ちゃ~』


「あくまで討伐がメインですからね!」


『それより映像はよ。』


「まったく。今回はエッチなキャラの映像を用意しました。」


『妹ちゃんか!?』

『妹ちゃんきちゃ!!』

『嫌々、李姉さんだろJK』


 皆が各々好きなキャラの名前を挙げているなか、映像は始まる。


 そこは闘技場で...


『拳闘士ちゃんだー!!やったー』

『くっ、妹ちゃんじゃなかったか。(実際あの筋肉はエロい)』

『李の姉御かと思ったゾ』


皆が筋肉ムキムキお姉さんの拳闘士ちゃんの映像に心踊らされている中。

まず写し出されたのは腕の筋肉だった。


『うんうんこの筋肉...あれこれ...』

『まさかね?』


 そして次に写し出されたのは胸の筋肉だった。


『『『アレキサンダーじゃねぇか!!』』』


 アレキサンダー

通称ファイティングバーサーカー。

闘技場のチャンプで戦う相手は皆絶命するというやべぇキャラ。

やべぇのはその強さでは無く格好だ。

パンツ一丁なのだ。

しかも何を思ったかファイターパンツとかではなく、ショートパンツなのだ。

その破壊力抜群の見た目から一部のファンからはパンツバーサーカーと言われている。


『エッチだけどさぁ!』

『トイレ行ってくる。』


「えー皆さんまだ足りないと思いますが、いよいよ、ボス戦前です。」


『十分だわ!』

『もう少し堪能したかったゾ。』

『えぇ』


クラッシャーに浴びさせられる罵詈雑言を無視しゲームを続けるクラッシャー。


「さぁボス戦始めて行きましょうか。」


 ボス戦のBGMが鳴り響く。


『マ?特別なことなにもしてないぞ。』

『本当に勝てるのか?』


「えーここで攻撃部位を選びます。」


そうこれがこのゲームの特徴で、攻撃箇所を選ぶことが出来る。

相手の素早さや自分の命中力によって部位の命中確率が違ったりするこれが面白いポイントだ。

だがレベル1の子供ということもあってか、攻撃できる箇所は狙いやすい箇所しか通らない。


「ここで足の筋を狙います。」


『は?』

『ウッソだろお前!』

『そこ命中率0%だぞ!』


俺もコメントと同じように驚く命中率が0の部位に攻撃?無駄な行動だ。


「実はこのゲーム小数点以下もあるみたいでぇ。」


『マ?』

『初耳だわ。』


「私も偶然間違ってボタン押したときに知ったんですが。何故か命中したんですよね。」


 そしてクラッシャーは攻撃ボタンを押す。


【攻撃は外れた。】


『まぁ、小数点以下だからな。』

『ここからどうするの?』


「えー当たるまでリセマラです。」


『ウッソだろ!お前!何時間いや、何日かかると!?』


「嫌、そんなに時間はかかりませんよー一発命中出来ればいいはずですからー 」


『筈って』


「そう実は理論は出来てたんですが初めての挑戦なんですよねー。」


『それで生放送ってマジか。』


「一人で何時間も黙々とやるのも嫌だし、証拠も残したいし、生放送にしましたー。」


 まさかその苦行に俺たちも付き合えと。


『こんな所にいられるか!俺は帰るぞ!!』


「まぁ、そんなこと言わずに話でもしようや。」


それから二時間の時が流れた。


「最強はスターブロンズやろがい!!」


『シルバーエクスペリエンスなんだよなぁ』

『そうだぞ。』


俺達はなんだかんだいって下らない雑談を続けていた。


【攻撃が命中した1のダメージ。】


「おっ、思ったより早かったですね~」


『1ってお前。後どんだけかかるんだよ。』

『そもそも次の攻撃で死なね?』


「大丈夫です。」


【デリンジャーはあまりの痛さに傷を押さえて悶えている。】


『は?』

『1で悶えているとかw』


「やっぱり、こいつあるイベントの後遺症でダメージ食らうとある程度の確率で悶えるんですよね。」


確か裏ストーリーの後半のイベントだったかでダメージを与えておくと殺傷武器でラスボス戦のデリンジャーが悶えて大ダメージとかあったような朧気な記憶がよみがえる。


『まさか...』


「そうそのまさかです。こいつそのデリンジャーの流用です。流用した事が裏目に出たなぁ運営!」


【デリンジャーは5000ダメージを受けた。デリンジャーは倒れた。】


そして勝利BGMが鳴り響く。

 

『888888』


コメントで拍手が爆速で流れていく。


「皆さんありがとうございます。まぁ、この後のイベントは変わらないと思うし、疲れたし、配信はここまでにしようと思います。」


『おつかれー』


 そしてエンディング画面が写し出される。

その光景をみた視聴者達は久々にマスクドアベンジャー

をつけたとか。


「疲れた~」


 俺ははじめての配信に疲れて身体を伸ばす。

 

「思ったより速く終わったけど疲れたな。」

 

 初めてという事もあり俺は思ったより疲れていた。


「いやー最強議論に思ったより時間かけちゃったな反省反省。」


 俺は一服しながら配信の反省をする。

そんな反省をしている時、俺はあることに気づく。


「あれ...こんなシーンあったっけ?」


俺の見たことがないシーンがそこには映し出されていた。


続く?

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