第6話怖い性格
「おい。どうしてくれるんだよ。お前のせいで仁吾が学校辞めそうだぞ…」
取り巻きが僕の元へ訪れたのは昼休みのことだった。
「知らないよ。僕が積極的に何かをしたわけじゃないんだから」
正直な思いを口にすると取り巻きもそれを理解しているようで苦々しい表情を浮かべる。
「佳代ちゃんとは付き合ってるのか?」
「いや。ただの幼馴染だよ」
「そんな風には見えなかったが?」
「そう?勘ぐりすぎでしょ」
適当に流すような言葉を口にすると時計を眺める。
「七瀬もお前のことが好きなのか?いつも一緒に居るのは知ってるけど」
「どうかな。わからない。普通に友達じゃない?」
「そんなわけ無いだろ。二人も恋人を持つ気か?頼むから佳代ちゃんは仁吾に譲ってやってくれ。このままじゃ仁吾が学校に来なくなる。あいつの人生を終わらせる気か?」
「譲るって…僕が何を言おうと佳代は変わらないと思うけど?」
「そんなに自信あるのかよ」
「そういうわけじゃないけど。佳代は仁吾のこと恨んでそうだったから」
「それでもお前が七瀬と付き合えば佳代ちゃんだって諦めるだろ?」
「わからない。それに僕だけの気持ちで何かを変えられるとも思わないし」
そこで取り巻きは言葉に詰まり口を噤んだ。
「このまま平然と暮らせると思うなよ?」
取り巻きは最終的に脅すような言葉を口にして僕の元を去っていった。
その様子を見ていたであろう七瀬が僕の元を訪れると慰めるような言葉を口にした。
「気にしないで良いよ。口だけで何も出来るわけ無いんだから」
「ありがとう。そんなに気にしてないから大丈夫」
「そう。三人で何処行こうか?」
「うーん。ショッピングモール?」
「えぇ〜。今日も鴇の家でいいじゃん」
「良くはないだろ…」
「佳代ちゃんにも聞いてくる」
七瀬はそれだけ言い残すと隣のクラスに居る佳代の元へと向かうようだった。
時計を確認しようと顔を上げた瞬間に昼休みを終えるチャイムが鳴り、五限目の授業の支度をするのであった。
何事もなく放課後を迎えると三人揃って学校を抜けた。
「佳代ちゃんも鴇の家で良いって」
七瀬は微笑んで僕に問いかけると隣りにいた佳代も意味深に頷いていた。
「僕の家で何するの?」
「ゲームでいいでしょ」
七瀬は昨日のことを伏せながら口を開き僕は軽く頷く。
「複数人で出来るゲームも持ってたよね?」
佳代が唐突に話に割り込むと七瀬は首を傾げたいた。
「鴇の家に行った事ある口ぶりだね?」
「うん。隣に住んでるから。何度も行ったことある」
「え?そうなんだ…」
七瀬はそこで言葉に詰まると思案げな表情を浮かべていた。
「早く帰ろう。私もスッキリしたから今日から色々と楽しみなんだ」
佳代は晴れやかな表情で口を開き、僕は疑問に思っていたことを口にする。
「何でそんなに仁吾を敵対視してるの?」
「ん?この間、言った通りだよ。仁吾が鴇の悪口を言っているのを偶然聞いて。ムカついたから復讐してやろうと思ったの」
「それだけ?そんなのいつものことだよ。誰のことでも悪く言うやつだし」
「それでも何かやり返したかったの」
「それだけで仁吾と三ヶ月も付き合っていたの?」
「うん。一番傷つくタイミングを見計らっていたの」
「怖い性格してるな…」
「そうだよ?だから私を裏切らないで?」
それにどうにか頷くと僕らは揃って家へと向かう。
マンションに到着すると三人で僕の家へと入っていくのであった。
これから何が起こるのかはまだ誰も知らない…。
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