第34話 十和(とわ)&沙月(さつき)2

「沙月ちゃんが正くんに告白してくれない?」


 目の前の友人が真顔でトンデモない事を口にする。

 頭の中で何度もリピート再生される十和ちゃんの言葉。

 何度も聞き返しても聞き間違いではなさそう。

 十和ちゃんの奇行には慣れてきていたと思っていたが、私はまだまだのようだ。

 よし、一度頭をリセットして心穏やかに返答しよう。


「告白するってどういうこと?

 私が正くんに好きって言うの?

 それとも十和ちゃんが正くんを好きだって伝えればいいの?

 ねぇ、どっち?

 どっちなの?」


 あれ?

 琵琶湖のように穏やかな心のはずが、冬の日本海のように私の心は荒れ狂っている。


「さ、沙月ちゃん怖いよ‥。」


 あっ、十和ちゃんを怖がらせてしまったようだ。

 でも、仕方がないよね?

 十和ちゃんが私を怒らせるんだから‥。


「それで、どっちなの?

 きちんと答えてくれる?」


 どうしても十和ちゃんに答えて欲しくて、私はどんどん顔を近づけていく。

 私に顔を近づけられた十和ちゃんはかなり怖がっているようだ。


「全然怒ってないから、早く答えてくれるかな?」


 私は満面の笑みで十和ちゃんに答えるように促す。


「わかった‥。

 十和ちゃんが正くんに告白するの。」


 十和ちゃんはじゃない方を選んでしまった。


「ねぇ、何で私が正くんに告白する必要があるの?

 ねぇ、何で?

 理由が知りないかな?

 ねぇ、怒らないから教えて欲しいかな。」


 十和ちゃんの真意が知りたいから質問しても大丈夫だよね?

 私は十和ちゃんにさらに接近する。


「わ、私一人じゃ断られそうだから‥。

 二人セットで好きになってもらえないかと‥。」


 ここで、やっと十和ちゃんの真意に気が付いた。

 私を捨て石にするのではなく、セット販売する気なんだと‥。

 

 何だろう‥。

 馬鹿げた事をここまで真剣に口にされると、逆に感心してしまう。

 先程まで怒りの対象であった十和ちゃんを愛おしく思えてくる。


「はぁ〜。」


 私はため息をつくと、十和ちゃんと告白に向けての作戦を練るのであった。

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