第9話 親友(橘 樹)

橘樹、15歳。

朝日奈正の親友である。


若葉高校1年3組。


正とは小学校からの付き合いでお互いを認め合う親友である。


樹には悩みがあった。

小学生からずっと抱いていた悩みだ。

中学校卒業まで必死に我慢していたが、高校入学を前に我慢しきれず爆発してしまった。

部屋に引きこもってしまった樹を救ったのが正の言葉だった。


「いつまで我慢するつもりだ!

お前が何を悩んでいるか俺はしってるぞ。

お前が心を壊してまで我慢する事か!!

俺が助けてやるから、部屋から出て来い!!」


正の言葉に涙が止まらない。


樹は号泣しながら部屋の扉を開けると正に願った。


「正、たすけて‥。

もう我慢したくない‥。」


「おう!

助けてやる!!」


男前なセリフを吐くと正は飛び出して行った。


後で聞いた話だと正はやり過ぎたらしい。


入学する前の学校に乗り込んで、先生たちに土下座したようだ。さらに渋る先生たちでは埒があかないと教育委員会に乗り込んで‥。


その後、ボクの家に戻ってくると、まだ袖も通してない制服を掻っ攫っていった。


そして、ボクが恋焦がれた制服を持って戻ってきてくれる。


嬉しくてまた涙が溢れる。


「これを着て学校通っていいの?」


ボクは正に尋ねる。


「おう、問題ない。

誰も何も言わないから、安心しろ。

何かあったら俺がなんとかする!!」


う゛

ダメだとわかっているのに我慢出来ない。


こればかりは我慢しなければいけないのに‥。


でも、正を好きになってしまった。


だってしょうがないよね?

ここまでされたら惚れるよね?


正、ごめん。

今からちょっと悪い子になるね。


「ねぇ、正。

ボクもう我慢しないよ。

それでもいいよね?」


「おう、我慢するな。

お前の為なら、何でも力になるから。」


殺す気ですか!?


でも、しっかりこの耳に聞かせてもらいました。


ボクもう我慢しないよ。


あの女に遠慮していたけど、これも今日までだ。


ボクはかなり不利だけど、可能性は0じゃない。

まぁ、アイツ以外なら2番目でもいいし‥。


よし、まずは先制しようかな!


*    *    *    *


ボクは正をリビングで待たせて、自分の部屋で着替えを済ませる。


正は入学式でもって言ってたけど、それじゃあダメだよ。

正に一番に見て欲しい。


ボクはドキドキしながらリビングの扉を開く。


正がボクの姿を見て、笑顔を見せてくれる。


「どう?

似合ってるかなぁ?」


正の前でゆっくり回ってみせる。

慣れてないので捲れそうになって慌てて手で押さえる。


「おう、似合ってる。

‥‥可愛いぞ。」


正が照れながら褒めてくれる。


ドキッ!


正に抱きつきたくなるが、ぐっと我慢して今の気持ちを伝えることにする。


「ボク‥

私は正のおかげで生まれ変われることが出来たよ。

ありがとう!」


私は少し照れながらスカートの裾を持ち上げてお礼を伝えるのであった。


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