彼女たち2

第10話 ハーフ(鉄 千「くろがね せん」)

鉄千、15歳。

朝日奈正のクラスメイトである。


若葉高校1年3組。


父の仕事の都合で5月という中途半端な時期にこの学校のこのクラスに転校してきていた。


『アメリカ人のハーフの転校生』


皆が勝手に想像を膨らませる。


そして、転校してきた私を見てガッカリする。


そっちが勝手に期待して、勝手に失望していく。


その時の目を私は何度も見てきた。


私の何が悪いの?

アメリカ人のハーフなのに黒髪黒目が駄目なの?

そんなに金髪が良かった?


アメリカ人のハーフなのにバスケットボールが下手なのが駄目なの?

アメリカ人が全員バスケットボールが上手いわけないからね!!

日本人が全員書道が上手ってわけじゃないよね?それと同じだよ。


アメリカ人のハーフなのに背が低いのが駄目なの?

ごめんね、144㎝しかなくて!!


アメリカ人のハーフなのに胸がないの駄目なの?

ブラのカップはAAよ!!基本的にスポーツブラしかしないけど‥。


肌色だけは褐色でハーフらしいけど‥。


そんなガッカリした目でみないで!!

直接的な差別はないけど、その目で見られるのが精神的なきつい。


さらにもっときついのが、ハーフらしくない私を同情する目!!

その哀れみの目が嫌い!


あと、名前も。

ファーストネームを付けることも出来たけど、父が日本っぽい名前にこだわったから‥。


鉄(くろがね)はお母さんの姓だから仕方がないけど、名前の千(せん)はないよ。

お父さんがジブリのファンだからつけたらしいけど‥。

それだったら千尋でよくない?

どうして湯◯婆に取られた後にする?

漢字ふた文字とか少なすぎだよ。


失望、同情とあと無関心の目。

だから転校してからも誰とも仲良くしようとしてなかった。


そして、彼に出会った。


彼は私を変な目で見ない。見ないばかりではなく笑顔で接してくれる。


その笑顔に本当に救われた。同情からではなく、純粋な笑顔。


これで惚れなければ逆におかしいよね。


*    *    *    *


いつもは小さい身体に産んだ母を心のどこかで、恨んでいたかもしれない。今思えば、ただの逆恨みだ。健康に産んでくれた母に感謝しなければいけないのに‥。


最近はずっと両親とは喧嘩ばかりしていた。でも彼と出会ってからは毎日学校であった事を話すようになったりして、今は仲が良い。


それもこれも全部彼のおかげだ。


だから、彼と添い遂げたいと本気で思っている。


一度彼の話を父親にしたら、反対されるかと思ったが意外にも真逆の反応を示してくれた。


『千、その彼を逃したら駄目だよ。

アメリカ人は狙った獲物は逃さない!

どんな手を使っでも彼を落とすように!」


父親が私の背中を押してくれた。


これで私の行手を阻むものはいない。


それから攻めまくった。


ずっと卑屈に思っていた身体も、逆手にとった。小ささを利用して彼の膝の上に座った。


死ぬほどドキドキしたけど、彼は嫌がる素振りを見せなかった。


まぁ、何人か殺気のこもった目を向ける女子はいたけど‥。


はん!

お前達はそこで、手をこまねいていればいい。私が彼を落とす!


ただ、少しだけ彼に不満がある。

ちっちゃいけど胸とか押し付けてるのに全く反応してくれないのだった。

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