第4話 放課後
6限目の授業終わると、やる必要ある?っと言われている帰りのホームルームの時間になる。
いつものような平和な日常だが、数名の者はある生徒の変化に気がついていた。
ちなみにその生徒の二つ名は『人畜無害』『無味無臭』『牙のない犬』など複数存在している。
容姿は際立って良くはないが、不細工ではない。明るく真面目で、1番の特徴は優しさだ。その優しさはクラスで浮いているギャルやヤンキーにも分け隔てなく向けられていた。
そんな彼の変化に気がつかない者が日課にしている事を始めようとしていた。
ホームルームが終わると彼女は勢いよく席を立つと彼の元に向かう。
そしてあの一言を彼に告げる。
「正、帰りにカラオケに行こうぜ!」
彼に断られる事がわかっているのに懲りずに誘い続けている。
クラスメイトはこの後に彼から告げられるいつもの言葉を脳内で再生させていた。
『ごめん。家でゲームするからまた今度。悪いないつも誘ってくれて、ありがとう。』
幾度となく聞かされている言葉だ。
稀に『兄貴と買い物』などの別理由が出るとその日はラッキーだと喜ぶものがいたとか。
さぁ、今日の断る理由は何かな?
帰り支度をしながらクラスメイトは聞き耳を立てる。
そんなクラスメイトの期待を裏切るような言葉を彼は口にする。
「あぁ、良いよ。」
!!!!!!!!
どこかのスタンド使いが能力をつかったかのように刻が止まる。
平和な日常をぶち壊すかのような彼の返答。
120%断られると確信していた彼女は彼の言葉を真剣に聞いていなかった。
「そうかぁ‥。
じゃぁ、また今度な。」
これもいつもと同じ言葉を彼女は口にする。
この時、彼と彼女以外のクラスメイト達の刻はまだ動いていない。
彼女はいつものように断られたと勘違いして、恥ずかしさを誤魔化すように足早に駆け抜けて行こうとする。
しかし、彼は言葉を続ける。
「ん?
この後、すぐに行くんだろ?
俺、家族以外とカラオケとか行ったことないけど制服のままでいいの?
一旦家に帰って着替えたがいいかな?」
彼の言葉に今度は彼女の刻が止まる。
クラスメイトの刻が止まっている為、他のクラスと違い1年3組だけ教室は静かであった。
完全停止する彼女に彼は困惑する。
「大丈夫?」
完全停止する彼女を心配して彼が近づいて来る。
彼女は気力で固まってしまったシステムを再起動させる。
「だ、大丈夫。
着替えるとかマジウケるわ。
制服のままでいいよ。」
動揺する気持ちを抑えて彼女は頑張って平気を装う。
「制服かぁ‥。
でもデートって私服じゃないの?」
ゴトッ!!
機能停止した彼女が重い教科書の詰まった鞄を取り落とすのであった。
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