第26話 仮眠(26、すやすや)


榊さんは休憩中、仮眠を取ることが多い。

少しうたた寝してるかな、くらいの時間だけなんだけど。私に負担が掛かり過ぎないように、お客さんもいなくて手が空く、という時間まで待って休憩に入ってくれるから、なるべくゆっくりしてもらいたい。それでも私は時々こっそり事務所に入って、彼の寝顔を見に行く。彼は、パイプ椅子に座って腕を組んで寝ていることが多かった。寝顔もやっぱり良い。何度も見ているはずなんだけど、綺麗な中に幼さが見えるのが好きなのだ。いつもはなんだかんだ頼りになって、年上らしさもあるから、このギャップは狡いとも思う。ずっと見ていたいなと思って動けなくなってしまう。

今日もいつも通り、すやすや眠る姿を少しだけ眺めて戻ろうとしたら、不意に腕を掴まれた。

「ひえっ!?」

「そんなに見られると、そろそろ穴空いちまうな」

振り向くと、榊さんがにやっと笑ってた。

「……気付いてたんですか」

「仕事中に、休憩時間いっぱいマジ寝するわけ無いだろ」

気付かれると恥ずかしいな。何も言えずにいると、榊さんがにこにこ笑って立ち上がる。

「さて。寝たし、今日も在庫取りのじゃんけん勝てそうだな」

「まだ分かりませんよ」

何だか少し悔しいからそう言い返すと、榊さんは私を見て楽しげに笑った。寝顔みたいな無邪気な笑い顔で、悔しい気持ちは結局消えてしまった。

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