「化けモノ展……？それを俺らにくれんの？毎日化けモノ展みたいなもんなのに？？」

「作りモノって分かってるから良いかなって。楽しそうだし」

「無邪気に鬼みたいなことしてくるな」

仕事の報酬で貰ったという展覧会のチケット二枚。晄一郎はそれを、榊に手渡しながら、からからと笑う。内容は『夏の化けモノ展』

「ここの美術館、比較的新しいところでね。カフェテリアとかミュージアムショップもお洒落で良いらしいよ。デートにぴったりじゃない」

榊の頭に、直ぐ恋人である菫の顔が浮かぶ。中身はともかく、静かな空間を二人でゆったり回ることを想像してみる。

「……ま、悪くはねぇ、か……」

「うんうん」

二枚のチケットと、にこにこと笑う兄の笑顔を見比べながら、榊は息を吐き出す。

「有り難く受け取る」

「楽しんで来てねー」

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