第3話 『入院生活3日目』
結局、その後大富豪の勉強どころではなく、集中できないまま時間だけが過ぎていった為、今日も小学生に大富豪は惨敗した。
「……ようすけー!体調悪い?」
「今日は弱いどころの話じゃないぞ?」
しかも、小学生に心配される始末である。…どうしたんだろうか。俺……
「………ようすけー?ナースさん呼ぼうか?大丈夫?」
ヤベェ。悟とつとむにもの凄く心配されている。これはもう本当にダメかもしれない。
「………いや。大丈夫だ……」
「そう?なら、いいけど」
最近の小学生はめっちゃくちゃしっかりしている。こんなにも心配してくれるとは思ってなかった。そんなことを思っていると。
「おいっ!無口!」
遠くから声が聞こえてきた。見るとそこには昨日図書室にいたあの少女がいた。
……昨日よりオドオドしてる気がする……少女の方を見ると目が合った。するとすぐに逸らされ、少女はその場を去って行った。
「あー……今日も失敗じゃーん、友昭。そんなアピールしても無駄だって」
「うるせぇなぁ!」
そんな声が聞こえてくる。友昭って……初日に俺に突っかかってきてた奴だよな……小学生だから可愛いもんだが……
「友昭、また無口姉ちゃんに振られたのかよ」
「本当になー。いい加減諦めたらいいのに。無口姉ちゃんは確かに美人だけどさー……俺たちみたいなガキには興味ないんじゃねーかなー」
……こいつら本当に小学生か?言ってること大人すぎるんだが……?てゆうか、無口姉ちゃんって……あだ名酷すぎだろ……。
「お前ら……無口姉ちゃんって酷いあだ名を付けてやるなよ……」
「だってー、実際の名前より無口姉ちゃんの方がしっくりくるだもーん」
……小学生って時々残酷なあだ名を付けることがあるんだよな……俺が小学生の頃も酷いあだ名を言い合ってたりしたっけ……
「てゆうか、無口姉ちゃんの本名なんだっけ?苗字が……笹川だったような気もするんだけど……下の名前が思い出せないや…」
そんな会話をしている悟とつとむの話を聞きながら俺はあの少女のことを考えていた。
△▼△▼
今日は病院内にあるカフェでクッキーを食べながら勉強をしていた。……カフェと言ってもフードコートのような場所なので、周りでは沢山の人が食事をしていたりするのだが……
「………ここのクッキー美味しい」
追加で飲み物を頼んでしまった程である。しかし、そのおかげで少しだけやる気が出てきた。明日こそは絶対にあの二人に大富豪で勝ってやる!と心の中で意気込んでいると――。
「………あ」
目が合った。それは無口少女こと、笹川(仮)さんだ。笹川(仮)さんはバッ!と本で顔を隠してしまった。なんだか……
「(かわいいな……)」
動きが小動物みたいでとても可愛かった。例えるならハムスターとかの小さい生き物だろうか。思わず笑みを浮かべてしまうほどかわいらしい動作であった。
「………みのり!そんなところに居たのか!探したぞ!」
「え?」
突然後ろからそんな声が聞こえてくる。思わず、後ろを振り返るとそこには……
「(イケメンな男だな……)」
年齢は恐らく、年上で高校生くらいだろうと思われる男が立っていた。男はこちらに向かって歩いて来ると、そのまま笹川(仮)さんは……
「もうご飯食べられたかー?」
「う、うん…」
そんなか細い声を出しながら少女は顔を隠したままだった――。
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