第2話 『入院生活2日目』
入院生活は暇すぎて死にそうになった。お見舞いに来てくれた友人達や部活の先輩たちは来てくれたし、心配してくれていたし、嬉しかったけどやっぱり退屈なのは変わらない。
否、昼は退屈じゃない。寧ろ楽しいし、子供達の相手をするのも楽しい。だけど夜中は退屈だ。スマホもいじれないのに眠気も襲ってこないし。そんなことを思っていると、
「ねぇ!ヨウスケー!遊んでー!」
「えー、俺とも遊んでー!」
目をキラキラさせながらそう言うのは入院している悟とつとむだ。子供というのはいつ見ても可愛いものだなぁ……
「遊ぶから飛びつくなって……で?何で遊ぶんだ?決めていいぞ」
病院内は退屈だし、子供達もきっと退屈なんだろう。ここに長期で入院している子も多いらしいし。
「じゃ、トランプしよう!」
「いいよ、トランプで何する?」
まぁ、ここはババ抜きとか神経衰弱とかダウトとかそんな感じだろう。……と、思っていたのだが。
「大富豪とかどう?」
「いいね!大富豪」
し、小学生が大富豪だと!?俺が小学生の頃、大富豪はルールが複雑過ぎて辞めたのに(後、親友が非常に強かった…というのもある)でもまぁ、楽しそうだしいいか。
その後俺は小学生に惨敗し、小学生に煽られまくった。
△▼△▼
「雑魚すぎだろ~!ヨウスケー」
「雑魚スケ~」
「うっせぇ!!次は勝つ!!」
……あれから2時間ほど経ち、今は全敗中である。しかも――。
「あ、お母さんが呼んでるー!またなー、雑魚スケ~」
「雑魚スケ~」
そう言って去って行く小学生の二人を見送りつつ、静かに決心する。
「(よしっ、決めた。今日は大富豪しかしない)」
絶対に負けない。そしてあいつらを見返してやるのだ! そう思いながら、本棚にあった"誰にでも勝てる大富豪必勝法"を手に取る。
さっきまで散々笑われてきた分、見返すために必死になって勉強しよう……!とは思うのだが――、
「……うーん、どこで勉強しよう……」
ここの病院は広い。カフェもあるし、図書室もあるし、自習室だってある。本を読むのには誰でも最適な場所だらけなのだ。だから迷ってしまう。
「……ここは無難に図書室でいいかー」
図書室。入院する前までは行ったこともなかった場所だ。本を読むより友達と遊ぶ方が好きだったし……だが今となってはこの病室にいる方が辛いから寂しさを埋めるため、という理由で図書室に行ってみることにする。
図書室に行くとそこには先客がいた。
その人は窓際の席に座っていた。窓から見える景色を見ながら本を眺めているようだ。
綺麗な人だと思った。大人びていてどこか儚げで触れてしまえば壊れてしまいそうな程繊細に見えるような女性だった。
「(………綺麗……)」
思わずそう思ってしまうほどには美しかった。
すると彼女はこちらに気付いたようで顔を上げた。目が合う。一瞬時が止まったように錯覚した。
それほどまでに彼女の瞳は美しく、吸い込まれてしまうようだったからだ。
「あー……えっと……」
何かをいう必要性なんて皆無なのについ口に出してしまった。
「あ、あの……ご、ごめん…なさい」
そんなことを思っていると彼女の方が謝ってきた。なぜ?と困惑していると彼女はこの場から去ろうとしている。
「ちょ、ちょっと待って!」
咄嵯に声をかけてしまった。何を言えば良いのか分からない、けど。このまま何も言わずに別れるのは嫌だと心の底から思った。
「……あ、あの……俺はこっちの席を使うので……その……気にしないでください」
それだけ言うと俺は椅子を引いて座った。……考えてみれば初対面の女の子をジロジロと見るとか警戒されても仕方がない行動じゃん……
これナースさんとかに言われたら怒られるやつだよ……と後悔したが、また話しかける勇気もなければ気まずい空気が流れるだけだと思い諦めることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます