第3話 スターは華麗に釈放してきました。
「はは☆ 捕まっちゃった☆」
署から出てきたキッドは飛び切りのキラキラスマイルでいう。
「捕まっちゃった☆ じゃなんだがあああああ!?」
とても爽やかな笑顔のキッドに俺は全力でツッコム。
「まあまあ、あの嫉妬狂いのおじさんの命に別状はないみたいだから」
ラビが俺を嗜める。 あの後、現場にきた警察にキッドは捕まってしまったのだ。 だけど、周りからの証言で正当防衛ということでなんとか釈放できた。
「そうそう、寧ろ、彼が先に銃を向けてきたんだ。 手だけですましてあげたことに感謝してほしいね。 オレにかかれば本当なら頭だって華麗に撃ち抜けたさ。 はは☆」
いや、笑いながらいうとかサイコパスかよ!
俺がガチ引きしていると、キッドは俺の反応を察したのか「ふっ」と笑うと口を開く。
「まあ、正当防衛とはいえ、初対面の人達の前でいきなり相手の手に風穴を開けたら、そりゃだれだって引くよね」
「え?」
突然のまともな言葉に俺はポカンとする。 そんな俺を気にせずキッドは続ける。
「だけど、目の前で女の子に銃を向けるクソ野郎がいたら、男なら誰だって我慢できないものさ。 少なくともオレはね」
「え? ということは、わたしを守ってくれたの?」
キッドの言葉にラビは驚いた顔をする。
「当然さ、男はレディーを守るものさ」
いつもの透かした笑顔ではなく、優しい笑顔をする。
「ありがとう、だけど、守ってもらわなくてもわたしは速いよ」
「ああ、そうだな。 正直あれぐらいならラビならひとりで対処できたな」
あっけらかんというラビの言葉に俺は肯定するが、言葉を続ける。
「まあ、だけど、俺もラビが銃を向けられた時、めちゃくちゃむかついた……だから、その、サンキューな」
その後、俺達は場所を移しながら互いを知る為に話していく。
「そういえば、さっきの『弾は入ってるけど、撃たなかっただけ』ってどういうことだ?」
歩きながら俺はさっきのキッドの不可解な現象について聞いてみる。
「え? そのままの意味なんじゃないの? だって、撃たなかったからそりゃ弾はでないよ?」
「いや、こいつは確かに引き金を引いて『撃った』ぞ」
「え?」
首を傾げながらいうラビに俺はいい、あの時の光景を思い出す。
あの時のキッドは確かにして引き金をしっかりと引いてたんだ。 しかも、三発中二発は不発で二発目『だけ』はしっかりと弾を撃った。 リボルバー式の銃なら弾の調整はできたかもしれないが、あれは『ハンドガン』だった。
「ああ、それはオレのスキルだよ」
「え?」
キッドは以外にもあっさりと答える。
「オレのスキルは【
右手に銃を出現させ引き金を引き、先から旗がでる。
「すごい! 手品みたいだね!」
ラビはキッドの銃をもの珍しそうにみる。
「キミ達にもあるだろう? オレはこういった【創造系】のスキルなのさ。 そう、スターは想像力豊かな表現者だからね キラン☆」
キッドは両手に銃を出現させてくるくると回しポーズを決める。
「それにオレのスキルはどっちかというと、『弾』がメインで銃は完璧に飾りって訳ではないけど、おまけだね 例えば、こんな風 パアン☆」
指先から小さな丸い弾をだし、空中を自在に動かす。
「すごい! これならどんな敵も逃げられないね!」
「そう! いわゆる、追尾弾だね」
二人は動く弾を見ながら盛り上がるが俺は少し怪訝な表情をしてしまう。
「どうしたの? ワタル、そんな飛んでるムシでもみるような眼をして」
「いや、どんな眼だよ」
「そんな眼」
俺の表情にラビが気づいたのでついでにキッドに目を向ける。
「さすがに迂闊すぎないか?」
「え?」
俺の言葉にラビはキョトンとするが、キッドは透かした笑顔を崩さない。
「これから旅をする仲間かもしれないが、さすがにペラペラ喋りすぎじゃないか」
「なにいってるのさ、仲間なんだから当然でしょ」
「ラビ逆にお前は信用しすぎだ。 この際ハッキリいうぞ。 俺はまだ会ったばかりのお前のことを『まだ信用してないからな』。」
「え!? なんで!?」
俺の言葉にラビは目を見開き驚く。
「なんでさ!? こんなに楽しく話せて親切に教えてくれてイケメンなのに!?」
「最後関係ないだろ!」
関係ないことをいいだしたので反射的につっこんでしまう。
「……ふふ」
「?」
「あはははは」
「はあ?」
突然、キッドが笑いだしたので、俺は唖然とする。
「ああ、ごめんごめん。 別にキミ達をバカにしたんじゃなくて、『面白くて』つい」
「はあ?」
キッドは一度自分を落ち着かせると話し出す。
「ワタル、キミのいうことは至極真っ当で当然の意見だよね。 だから、警戒させてしまったなら謝罪するよ。 オレは『対等』でいたかったからスキルを明かしただけさ」
「え?」
スタースマイルではなく、爽やかな笑顔でキッドは続ける。
「別にオレのスキルを教えることによって、キミ達のスキルを明かせなんてことは言わないし、寧ろ、オレのスキルを知ってもらうことによって少しでもオレを知ってほしかったのさ。 もちろん『信頼』してもらうためでもあるけど、それは少しづつで構わないさ」
キッドは自分の思うことを述べ、俺は静かにキッドの言葉を聞く。
「…………」
「ワタル、性格でも負けてるね」
「うるせえ」
ラビが哀れみの眼を向けてきたので、反射的に言い返す。
「そんな爽やかイケメン発言をされたから、やっぱりキッドのスキルだけいうのは、不公平だから、わたしのスキルも教えちゃうね!」
高らかに宣言すると、ラビはキッドの周りをすごい速さで走り出す。
「わたしのスキルは【
ラビはぴょんぴょんと飛びながら説明する。
「すごいね。 女の子とは思えない、パワフルさだね」
「でしょ!」
子供も褒めるようなキッドの安い言葉にラビは嬉しそうにする。
「次はワタル! さっさと言っちゃいなよ」
「いや、だから、まだ俺は……」
「もお! まだひねくれたこといってるの? はやくいいな……」
「キイッドオォォォ!!!」
「!!?」
突然、暑苦しい叫びが周りに響いた。
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