第2話 英雄はスター? 華麗に撃ち抜くオレこそフォックスター

 放送を見た俺とラビは急いで都市の放送局に向かった。 そして、そこの裏口の警備員さんに話かける。


「す、すみません! 放送をみてきたんですけど、えっと、さっきのあの黄色い髪のイケメンいますか?」


 彼の名前が思い出せなかったので、特徴を伝えると警備員さんは訝し気にこちらを睨む。


「君達は?」

「俺達は英雄の証を持つモノです」


 俺の言葉を疑っている警備員さんに俺は『青色に輝く宝石』をラビは『藍色の宝石』を胸から浮かびあがらせると警備員さんは目を見開いて驚く。


「おお! これは失礼しました。 英雄を名乗る不届き者がよく現れますので、つい、疑ってしまいました。 直ちにフォックスター様を呼んでまいります」

「それには及ばないよ」


 警備員さんの後ろから声がして覗いてみると、さっき街のスクリーンに映っていた男が立っていた。


「はは☆ 待ってたよ、メンバー達☆」


 イケメンが二本の指を頭に当ててキメポーズをしながらいう。


「わあーやっぱりかっこいい! こんなかっこいいイケメンが仲間なんてうれしいな!」


 ラビは彼を見るとまたも目を輝かせながらいう。


「オレもこんなキュートな子ギツネちゃんがメンバーなんてうれしいよ☆」


 イケメンオーラを放ちながら彼はすかしたことをいう。


「まあ、ここじゃなんだ。 どこかでお茶をしながらでも話そうじゃないか」


 彼の提案でとりあえず場所を変えることになり、都市の中のオシャレなお店に入る。




「そういえば、自己紹介がまだだったね。 放送を見てるならする必要はないかもしれないけど、礼儀として失礼するよ」


 都市のカフェに入り、一通り注文を終えた俺達に彼が話を切り出す。


「オレの名前は『キッド・ザ・フォックスター』みての通りスターさ☆」


 なにがみての通りだ……と、ツッコミたいところだが、周りに目を向けるとたくさんの女性達が彼を遠目で囲んでキャーキャーと黄色い悲鳴を送っていた。 ……なんだろう……このめちゃくちゃ虚しい気持ちは……。 


「俺は『ワタル・トリッチ』、ここから少し離れた『シーニ』って国の一般人……じゃなくて……英雄らしい」


 取り敢えず、礼儀として自己紹介をする。


「はは☆ 英雄が一般人ってなかなか面白いことをいうね。 英雄ジョークってやつかな?」


 キッドは俺の言葉が冗談と思ったのか、クスクスと笑う。


「わたしは『ラビラビ・タンタン』だよ。 ワタルとは幼馴染なんだ」

「はは☆ これまた面白いこというね。 芸名かい?」

「本名だよ!?」


 かなり失礼なことを言われたラビは反射的にツッコム。


「これは失礼したよ。 本名だとは知らず笑ってしまって、すまなかったね」

「あーいいよ、よく笑われるし、芸名っていわれたのは、はじめてだけど」


 謝るキッドにラビは大丈夫だと返す。


「なあ、キッド、いきなりだが、ひとつ聞いてもいいか?」

「なんだい?」


 俺はとりあえず一番気になっていたことを聞く。


「なんで、あんな放送したんだ?」

「? え? なに? その質問」


 俺の質問にラビが首を傾げながら聞き返してくる。


「あの放送って『この街だけに流した放送』だろ?」

「え!?」


 驚くラビにキッドは気にせずに答える。


「なんとなく、『近くにいる気がした』んだよ」

「え?」


 あっけらかんと答えるキッドにもラビは驚く。


「ただの勘っていってしまえば簡単だけど、オレたちは『証』を宿してるんだ。 近くにいたら感じてもフシギじゃないだろう」


 キッドはそういうと『黄色に輝く宝石』を浮かびあがらせる、それに呼応する様に俺とラビの『証』も浮かびあがって輝いた。


「たしかに、昔からかくれんぼとかしてもすぐにみつかったり、みつけれたりしてたけど、もしかして、そういうことだったのかな!」

「だろうね、幼馴染パワーかもしれないけど、その可能性は高いだろうね」


 驚くラビにキッドは冷静に分析する。


「なるほど、いつも一緒にいすぎて気づかなかったんだね。 よし、ワタル、今から100数えて! わたしは急いで離れるから!」

「まて、遊んでる場合じゃない」


 席を立ちあがって今にも走り出そうとするラビの肩を掴んで止める。


「はは☆ ホントにさっきからキミたちは面白いね!」

「どこが……」


 バアァン!!


「!?」


 笑うキッドに俺は溜息混じりに返すと、突然、周りから銃声の様な音と悲鳴が鳴り響いた。


「どけっ!! 死にたくなかったら、どきやがれ!!」


 俺達が反射的にそちらを見ると、男が銃を天井に撃ち、周りの人々を退けていた。


「なんだ!?」


 俺とラビは身構えるけど、キッドは男を静かにみつめていた。 そして、男はこちらに気が付くと凄まじい形相でこちらにやってきた。


「お前がフォックスターだな」

「ああそうだよ、もしかして、オレの過激ファンかな?」


 近寄ってきた男にキッドはイケメンスマイルで返すと、それを受けた男はさらに怒りの形相を浮かべる。


「だまれっ!! お前がいなければ! お前さえいなければ! オレはあいつと結ばれていたものを! お前が俺からあいつを奪ったんだ!!」


(は? なにいってるんだこいつ)


 なんて俺が思っているとキッドが口を開く。


「もしかして、オレのせいで子ギツネちゃんに振られちゃったのかな?」 

「だまれ! この泥棒ギツネ!!」


 ん? つまりはただの嫉妬? 


「なら、悪い事をしたね。 だけど、正直いうとオレは関係ない気がするけどね」

「そうだよ! 女の子に振られたのを人のせいにするなんてかっこわるいよ!」

「うるせえ!!」

「!!」


 キッドの言葉にラビが肯定すると男はラビに銃口を向ける。 それをみたキッドの表情が少し歪んだ気がした。


「ラビッ!!」


 俺がラビの前に立とうとすると、ラビは小さく首を振り合図してくる。


(!?)


 俺だから分かる合図だった。 少し気を引けばラビの速さなら直ぐに男を鎮圧できる。


「はは☆ ずいぶんとカッコワルイことをするね」

「!?」


 俺が男の隙を付こうとすると、キッドが男に挑発する様なことを言い出した。

 

「なんだとっ!!」


 キッドの挑発に男は銃口をキッドの方に向け直す。 その隙をラビと俺は男を抑える為に動こうとするが、キッドは何故か首を横に振り俺達を静止する。


(!?)


 俺達はキッドの合図に驚きながらも一度動向を見守る。


「それはオレに撃たれてもいいってことでいいのかい?」

「はあ?」


 銃口を向けられながらも笑顔で聞き返すキッドに男は困惑する。


「ははっ☆ もしかして本気で撃つ気がないのにオレに銃口を向けているのかい? それに、子ギツネちゃんに銃口を向けるなんてカッコワルサを極めてるとオレは思うけどね☆」


 キッドはスタースマイルで挑発をする。


「うるせぇ! なら、望み通り撃ってや……」


 バアァン!!


 男がいい終わる前に鼓膜を破るかの様な爆発音が鳴り響いた。


「!?」


 俺達はその衝撃の光景をみて固まる。


『キッドが銃を発砲した』のだ。 しかし、『男は無傷で床に腰をついていた』。


「……え、え?」


 発砲された男は自分が撃たれていないことに困惑していた。


「どうだい? 驚いたかい?」


 キッドはキラン☆と言わんばかりの爽やか笑顔でいう。


「ど、どういうことだ……撃たれたはずじゃ」


 男は状況が読めずにいるとキッドが答える。


「オレは確かにキミを撃ったけど、『弾を撃たなかった』だけだよ。 そう、つまりこれは警告、オレが『弾を撃ってたら』キミは死んでたよ。 これに懲りたら無暗に銃を人に向けないことだね」


 キッドはスマイルを崩さずにいうけど、まるで脅す様にいう。

 

「……なるほど……つまり、お前の持ってるのは、ただの『モデルガン』ってことだな」


 男はカラダを震わせながら素早く銃を構え直した。


「! あぶねぇ!!」

「ダメ!」


 俺とラビは男を止めようとするが、間に合わない。


「しねぇ!!」


 バアァァン!!


 もう一度、鼓膜を引き裂く音が響く。 ラビは目を閉じて悲劇の瞬間から目を反らした。 しかし、またしても俺の目に衝撃な光景が飛び込んできた。


「……え…………え?」


 彼も同じことを感じているのか、自分の手をみつめていた。 『手に穴が開き血が床に散乱している光景』を……。


「!!! うわあああああああ!!!!!」


 自分が『撃たれたことを自覚した』男は痛みと恐怖で手を抑えながら床に倒れる。同じく店内にも悲鳴が響いた。


「あーあ、だから、いっただろう? 警告だって」


 男を撃った張本人であるキッドは溜息をつきながらいう。


「なんで? なんでぇ!? 偽物の銃じゃなかったのか!?」


 男はパニックになりながら叫ぶ。


「え? そんなこと一言もいってないよ?」


 男の言葉にキッドは首を傾げる。


「だって! 『弾は入ってなかった』はず!」

「いやいや、そんなこと一言もいってないって」


 パニックになる男にキッドは大きな溜息をする。


「『弾を撃たなかった』だけで『弾は入ってるん』だって」

「え? どういうことだ」


 俺の質問にキッドは答えずに男の前に立つと銃口を彼の額に付ける。


「!?」

「言っただろう? 撃たれる覚悟がないなら銃口を向けるなって」


 キッドの指がリボルバーを回し引き金に触れる。


「やめろ!!」


 バアァァン!!


 俺が止めるよりも早く三度目の銃撃音が鳴り響いた。


「!?」


 男はその場で白目を向いて倒れていたが、キッドの銃からは『手品の旗が出ていた』。


「……え?」

「はは☆ 驚いたかい? これぞ、スターのスターによるドッキリさ!」


 キッドは銃をくるくると回しながらキラリ☆と笑った。


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