神から厄災を倒す7人の英雄の1人に選ばれた俺が同じく選ばれた幼馴染と一緒に他の5人を探しに旅に出て共に世界を救いに行くそうです。

たぬきち

英雄はスター編

第1話 仲間を探しに旅してます。

 俺の名は『ワタル・トリッチ』。 どこにでもいる一般……ではなく『英雄』らしい。 なんで、疑問形かというと、俺が産まれた日に空から『青色に輝く宝石』が俺の中に入っていったらしいんだ。 その宝石は伝説に伝わる『英雄の証』で英雄が成長したら各地の7人の英雄を集めて厄災を倒しに行かないといけないんだ。 ……という訳で俺は国王から各地に散らばった英雄を探す旅に出た訳ですが……。


「どこに行けばいいんだよ……」


 俺は愚痴る様に森の中で項垂れる。 そりゃそうだ、いつも通り平和に暮らしてたある日、国王から呼び出されて『刻が来た!』なんて云われて突然、旅に駆り出された訳だから愚痴のひとつもひゃくも出る。


「いきなり泣き言?」


 そんな俺を近くの岩場に座りながらひとりの女の子がいう。


「そりゃ、泣き言の一つや二つ出るだろ、だって、『俺達以外の英雄』の居場所なんて知らないんだから。 ラビ、お前は何とも思わないのか?」

「えー別にー旅って楽しいじゃん」

 

 俺のネガティブな発言に呑気に返したこの女の子は『ラビラビ・タンタン』。 ふざけてる訳じゃなく本名だ。 俺の幼馴染で同じく英雄に選ばれたので、俺と一緒に英雄探しの旅に出た。


「まったく……国王も手掛かりのひとつやふたつ集めとけってんだ。 むしろなんで集めてないんだよ! 伝説信じてるなら、尚更準備しとけよ! これが英雄にやらせることかよ!」

「もぉーそんなグチグチいってないで、とにかく、わたしたちにできることは情報を集めることだよ」


 ラビは岩場から立ち上がり俺に荷物を投げ渡した。


「こんな森さっさと抜けちゃうよ!」

「おい!? ラビ!?」


 そういうとラビは驚く俺を他所に肩車しだした。


「合体! 『ラビラビ・ワタンタン号』! はっしーん!!」

「うわあーーー!!」


 謎の掛け声と共に俺を肩車したラビはもの凄いスピードで森を走りだした。


 これはラビのスキル『超脚力ブースト』だ。 この世界にはスキルという名の特殊能力的なのがあるのだが、ラビは超脚力と分かりやすく常人離れした足を持っているんだ。 このスキルを使って昔よくかけっこを挑まれてボロ負けしたものだ……。


 数分も経たない内に森を抜け街が見えてきた。


「とうちゃーく!」


 ラビは踵でブレーキを掛けて止まると俺を降ろす。


「うっ……酔った……」


 俺は地面に手を付き吐きそうなのを我慢する。


「みてみて! ここが大都市『レイン』だよ!」


 地面に倒れる俺を他所にラビは目を輝かせる。


 俺が酔いを醒ました後、早速街の中に入った。 大都市に来れば少しでも英雄の情報が集まると思ってのことだ。


「どこにいるんだろうねーわたしたちと同じ『英雄の証』を宿した人は」

「とにかく、少しでも聞いて周るか」


 まあ、この世界の5人なんてそんな簡単に見つかる訳ないよな……。


「キャー! キャー!」

「?」

 

 突然、女性達の黄色い声援が聞こえてきて、彼女達の見つめる先をみると、大きなスクリーンに1人の男が写っていた。


【はぁい☆ 子ギツネちゃん達、オレだよ、『キッド・ザ・フォックスター』だよ、キランッ☆】


 とても鼻に付く黄色い髪のイケメンが女性達をキャーキャー言わせていた。


「わあーかっこいいー」


 ラビもそれを見てテンションが上がっている。 ……別に嫉妬なんてしてねーし!


「なにが子ギツネちゃんだよ、さっさと仲間を探しに行くぞ」

「え? なに? もしかして嫉妬?」

「うるせえ」


 ラビに指摘されてしまい頭の悪い返ししかできないでいると、画面のムカつくイケメンが話だす。


【実はオレ、今、人を探しているんだよね。 その人っていうのは『オレと同じくこれを宿してる人』さ】

「え?」


 男の声に反射的に顔を向けると、画面の男は胸から『黄色い輝きの宝石』を浮かびあがらせた。


【これの意味は分かっていると思うから説明しないけど、もし、これをみてるならオレのところに早く来てね。 待ってるよ☆】


 そう一言だけ残すと画面から男が消えた。


「いたぁーーーーー!!!」


 俺は反射的に叫んでしまった。

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