実録史劇④ これがテンカふぶ~の近道だっちゅーの。

「尾張一国献上して、テンカふぶ~」

 と、アホ面で言いつのる秀吉に、信長ちゃんは渋面をつくった。

「あんね。五畿内の和泉の国より、尾張一国のほうがはるか大きいんよ。年貢だってガッポガッポ入るし、なんで、そこの国の隅っこと交換せにゃあかんのー?」

「えっ。こんな田舎でくすぶっていたら、いつまで経ってもテンカふぶ~なんて無理ゲー」


 信長ちゃんは、それも一理あると考えた。

 言われてみれば、尾張はド田舎。京の都なんて行ったことないけど、ひょっとすればアメリカや天竺より遠そう。しかも上洛するには、美濃の斎藤、近江の浅井や六角ら、強敵が「ござんなれ!」と途中で待ち構えているのだ。そんなやつらを必死こいて、運よく全部倒しても、ボロ雑巾のように絶対クタクタになる。そこを6万の兵を率いる三好長慶さんに襲われれれば、この首はたちまち胴体から離れるであろう。


 やはりアホ猿の言うようにテンカふぶ~なんて無理ゲーなのだ。

 信長ちゃんは「はぁ~」と溜息をついた。

 その😞ションボリした信長ちゃんの様子を見て、秀吉がヘラヘラと追い打ちをかける。

「だからさあ。尾張一国献上だっつーの。その代わりに、和泉の国の片隅をもらうんだっつーの」

「和泉の国ってさあー、わし全然そんな国、知らんけど、なんでそんなとこもらうんだっけ?理由あんの?」

 秀吉が信長ちゃんの目をのぞき込んだ。

「(*´σー`)エヘヘ。サル知恵、聞きたい?ききたいっしょ」

「う、(゚д゚)(。_。)ウン」


 秀吉はチンプンカンプンの信長ちゃんに説明した。

「あのね。とりあえず和泉の国の隅っこをもらっておくの。でね。ここを足掛かりにテンカふぶ~すれば、いいんじゃね?京の都に近いし」

「なーる」

「長慶さんは、アンタ、もとい信長さまより12歳上。ひとまわり年上。ここはニャンニャン甘えて、まずフトコロに飛び込み、一所懸命ご奉公。安心させ、力を蓄えた上で、寝首を掻き、クーデターで一気に織田家乗っ取り~ってえわけチューの」

「なーる。なら、和泉の国でなくても、摂津でも河内でも、どこでもいいんちゃーうの?」


 その瞬間、秀吉はポカンとして信長ちゃんを見つめた。

 思った以上にバカ殿だと気づいたのである。

 秀吉ちゃんは、袴を脱いで、汚いフンドシ姿のお尻を信長ちゃんに突き出した。

「うっふ~ん。このお尻は和泉の国よ~。でね、この股の真ん中にぶら下っているモノはなーに?」

 信長ちゃんは、あっけにとられて、アホな答えを返した。

「えっ、タマキン?」

「なに言ってんの。和泉の国にある堺の町っしょ。日本でいちばんおっきくて立派な、この町には、はてさて、何があるでしょうか?」


 信長ちゃん次第にアホらしくなって、うんざり声で言った。

「えっ、わっかんなーい」

 ここで猿がちっこいイツチモツをフリフリしながらヒントを出す。

「タマキンのように、ドカン、ズッキューンって、ぶっ放すものってなーんだ?」

「それって、もしかして鉄砲のこと?」

「!(^^)!、ピンポーン!よくできましたの二重丸。堺の近くに領国があったら、鉄砲なんかが、バカスカ手に入るっちゅーの。富国強兵、分かりゃーすか」

「なーる。貿易で銭も稼げるし」


 秀吉はここで小鼻をふくらませて、ドヤ顔になった。

「以上、テンカふぶ~のための筋道、近道のプレゼン&ソリューションでござりまするー。今まで言ったこと、分かりゃーすか」

「う、(・∀・)ウン!!」

「では、この猿めが、三好長慶さんのところに行って、直談判。尾張一国を献上しますゆえ、わが殿を家来にしてチョーよ。で、代わりに和泉の国の隅っこでいいから、頂戴よと申し込んでもよろしいでごんすか?」

「う、(´ー`*)ウンウン」

 かくして、秀吉は三好長慶さんのいる京の都へと旅立った。

 果たして、その首尾は?

 

 ――つづく(次回で終わりにしたいのですが、さてどうなりますことやら……)

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