第4話 つくし、渋谷のダンジョンに行く。
私、渋谷のダンジョンに来ちゃったよぉ。
首相だから、安全な場所にいてもいいジャン。
ダンジョン怖いよお。
ああ。VMMO世界のおっさん少年盗賊の成り上がり読みたいっっ。
現実逃避したいっ。
ギルティスティーーーーール!!! 駆け抜ける疾風はおいらの盗賊ナイフの閃光だぜーーーーーー!!
私は国会の終わりに神崎さんの運転する車のカレーラで移動。渋谷に来たっ。
はあ………。
配信しなくちゃ。
神崎さんがカメラを担当してくれる。
「ははは。私はダンジョンにやってきたっ。当然のごとく、私はバリバリの活躍をし、徹底的に諸君らに、私と君たちとの格の違いを見せつけようではないかっっ。私は偉大なる首相だっっ。私の活躍を、諸君楽しみにしたまえ。はははははっははは」
ひぃ。
言っちゃった。どうしよ。
あっ、後ろに神崎さん、控えててくれる。だ、大丈夫だよね。
今日は、Eクラス冒険者の伊藤雄二くん(18)の冒険ルポ。
あっ、伊藤くん。ブサイクだけど、すごいがっしりした体してる。
あっ、ちょっと少年おっさん盗賊に雰囲気似てるっ。冒険者の人って感じ。
かっこいい。
「あ、あの、よろしくお願いします。つくしちゃん。ぼ、僕がんばるから」
「………あの、今日は迷惑かけてごめんなさい。私、がんばって伊藤くんについてくから」
あっ、素が出ちゃったっ。
視聴者のコメント。
> おう。弱つくし出た出た。
> つくし、人に会うと弱くなるんだよな(笑)
> おいおい。どうした。つくしぃいい。元気ねえぞおおおお?
> あははっ。つくしぃーーー。なんだ。お前、ほんとは弱弱じゃねえのかぁあああああ?」
「そ、そ、そんなことないぞ。諸君。私はいつでも全開バリバリだっ。私はいつでも君たち、愚民どもに負けない強い意志を持っているっ。愚民の君たちは、ただ、私に奴隷のように従ってればいいだけだっ。それをわかれっ。愚民どもっ。はははは、ははっははは」
ひぃいいい。
ほんとはいつだって弱いままでいたいんだけど、弱いだけじゃウケないから。
私、ゲームとファンタジー小説読んでただけだから、体すごく弱いし。
こ、こわいっ。
「じゃあ、僕が、今スライム倒します。つくしちゃん、見ててください。ほらっ。スライム来ましたよっ」
ぴょんぴょん
「ひぃいいいい。スライムこわいーーーーーーっ。ひぃいい」
> ぎゃははは。ツクシびびってるぅーーーー。
> おーーーい。ツクシ、キャラ壊れてるぞおおおおおお。
> どうした。どうした。つくしーーーーー。
> つくしちゃん、がんばって。
バシュっ。
バシュッ。
ガンッ。
ひぃいいい。伊藤くんがスライム全部倒してくれた。
こ、こわかった。
「こうやって僕らはいつもスライムを倒して日銭を稼いでます。スライムのコアは1つ500円。日本には、ダンジョン資源以外エネルギー資源がないから、僕らEクラス冒険者が魔核によるエネルギー資源を手に入れてる状態です」
「………そ、そうなんですか………」
「はい。だから、企業が参加して組織的にスライムの魔核狩りをすると困るんです。僕らはいつでも個人で生きられるように法制度でもダンジョン保険で守られているんです。だけど、それを企業がエネルギー産業に参入して、人の選抜でエネルギー資源の入手を安価でやろうと今してます。それじゃ、リストラする企業と変わらないダンジョンになる。ダンジョンは社会の最底辺の受け皿なんです」
> ぎゃはは。聞いたか? つくし。
> そうそう。ダンジョン視察ためになったろう?
> 企業のバカは組織として動いていつでも、人数管理とか勝手にやるんだ。
> そういうこと。それで捨てられた人間の受け皿がダンジョンになってる。
> そや。企業参入をダンジョンで禁止しろってこった。
> わかるやろ? クランも禁止。あれは企業だ。
ひ、ひい。
なんかわからないけど、言う通りにしよ。
「は、はは、ははははっ。な、なかなかためになったよ。しょ、諸君。それでは、私がダンジョンについて企業の参入を法律で止める立法を提案して、必ず実現しようじゃないかっ。しょ、諸君ら愚民の生活を守ることなど、私は全然考えていないが、道理にあった話は通すのが、私だっ。私にまかせたまえ。すべて君たちは奴隷のように私に従っていればいいのだっ。まかせてくれたまええええええええ。ははははっはは」
ひぃ。
これでいいかな?
今日も煽りうまくできたかな?
視聴者のコメント。
> うんうん。それでいいんだよ。がんばれ。つくし。
> 俺らの生活守ってくれよな。
> クランは確かにひどい。
> 1000人単位になって、下のヤツ、普通の冒険者よりひどい生活してる。
> その上あいつら、狩場独占するんだよ。
> ぶっこわしちまえ。いらねえよ。クラン。
高梨さんに電話で相談。
ぷるるる………
「ふむ。なるほど。5人以下でパーティを組むことで、冒険者たちは社会の最底辺の生活を支えてるわけだね。確かに国内でエネルギーが循環する状態なら、企業コストをやってムリにコストを下げなくても、魔石の共有は賄えている状態だ。よろしい。つくしくん。私にまかせたまえ。ダンジョンの企業参入阻止。クランの禁止。必ず法案として通してみせよう。君は心の優しい美しい子だね。つくしちゃん。好きだよ」
翌日は、高梨劇場国会だったの。
私は黙って高梨さんの隣におとなしく座ってるだけ。
私は視聴者のみんなから聞いた法案を高梨さんに話しただけ。
ただ、その法案を高梨さんはバババババって、党内ですぐ取りまとめてくれた。
世間では、また、お金持ちの憎悪を私は買ってしまった。
「産業構造でうま味のあるエネルギー産業への参入を法律で禁止だとっ!?」「一般冒険者の暮らしを守るために、我々の金儲けがなぜ禁止される!!」「ゆるせんぞ。つくし首相。またしても我々の金儲けをつぶしおって」「私なんてダンジョン産業へのポケットマネーの投資を損させられたんです。考える庶民などアホだから好きに死んでしまえばいいのに」「つくし首相ぜったいにゆるせない………」
一方、冒険者には私は大人気。
「すごいよ。つくしちゃんのお蔭で僕らの生活が守られた」「やっぱりつくしちゃんは俺たちの味方だよな」「下の生活の保障まで考えられる首相ってつくしちゃんぐらいしかいないよ」「ほんとにつくしちゃんが首相になってよかった」「つくしちゃん。好きだっ」「つくしちゃんありがとう」
ひぇええ。金持ちに恨まれて、貧乏な人に好かれても仕方ないよっ。
貧乏な人って、私を守ってくれないもん。
ただ、なりゆきだけど、国会はバリバリすごいことになった。
高梨さん、その日も頼りになった。
「くたばれっ。抵抗勢力。個人の生活を守れない組織など、この日本に存在している意義はないっ。企業組織よ。貴様らはなにをやっているっ。リスクをすべて下部組織の人切りに廻して、それで社会の根底をズタズタにして不況を作り出す悪人どもっ。根底の生活を私は守る。それがこの高梨ヒカルだっ」
国会のハンマーが鳴る。
カンカン!
国会議決!
賛成 88 反対 11 棄権 1
ダンジョン企業禁止法案。クラン禁止法案可決。
ただ、私はまだ、前日でダンジョンにいる。
ひいぃ。伊藤くん、すごく戦ってる。いつまで戦うんだろ?
あああああああ。オークの群れだっ。
「くっ。つくしちゃん、数が多いっ。逃げてっっ」
「きゃっ。きゃああっ。誰か助けてぇえーーーーーーーっっ」
あぁ。おっさん少年盗賊っ。私を助けてっっ。これは悪夢っ。
バシュ。バシュ。
「………大丈夫です。お嬢さん。私が必ずあなたを守る………」
あっ、神崎さん、戦って倒してくれた。
うぅ、よかったよおお。ほんとによかったよぉ。
こわかったよぉ。
もう、ダンジョン行きたくない。引きこもっていたい。眼鏡の神崎さん、私をお嫁さんにしてぇえええ。
ひぃい。
配信しなきゃ。
「は、はははは。諸君。今日は大変面白かったよ。わ、私は公約通り、確かにダンジョンに行って勇敢にたたかったろう? ど、どうだい? 諸君。私の強さを思い知ったかい? これに懲りたら、わ、私に平服して従うことだよ。わ、わかったかい?」
> おう。結構よかったぜ。つくし。
> お前の戦う姿、しっかりと目に焼き付けた。
> 配信おもしろかったよ。つくし首相。
> 法案も動いたし、私たち満足です。
なんか配信も公表で1000万人をキープ。
私はほっとして胸をなでおろしてたんだ。
翌日には法案も動いて、Eクラス冒険者を守る法案も出来たし。
このまま視聴者と高梨さんに任せてうまく生きてけばいいよね?
と、なんとなく思ってた。
ただ………
いきなり、その翌日ひどいことが起きたんだ。
そのとき、アメリカ大統領からロシアとの戦争への参加を打診するメールが飛んで来た。
「つくし首相。同盟国として、ただちにロシアとの戦争参加を打診したい。この意味がわかるね? これは命令だよ。ただちに従ってもらおう。自衛隊を戦場に派遣しろっっっ」
ど、どうしよう。せ、戦争問題?
日本が戦争突入?
ええええええ。この世界、最終戦争起こるんじゃ?
わ、私が首相なんだよね?
わ、わかんないよ。誰か助けて。私をニートに戻してぇえええええ。
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