(四)-2

 国選弁護人の横尾は、すっかり真っ白になった頭髪の持ち主で、腰が曲がりかけている高齢の弁護士であった。拘置所で接見したときからやる気がなさそうだったこの男は、検察の陳述と追及からときどき異議申し立てで彼女を守っていたものの、あまり頼りにならなそうだった。

 対する矢野検事の追及は矢継ぎ早だった。

「しかし、あなたは赤ん坊を殺した」「あなたが自分の意志で産んだのですよね」「ではなぜ産んだのですか」「なぜそんな人と関係をもったのですか」「どうして避妊をしなかったんですか」「そもそもどうして売春などしたんですか」


(続く)

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