(四)-3

 彼女は何か言いたそうではあったが、言葉にならず、ずっと沈黙していた。

「そうしてあなたは、身勝手な理由から、赤ん坊に睡眠薬を大量に飲ませて殺害、福山氏の自宅に逃げ込んだ。そういうわけですね」

 全く同じではなくても、似たようなフレーズで何度も追及をされると、人は黙っていられなくなる。彼女も、そうだった。

「そうよ! 私があの子にお薬を飲ませて殺したの。他にどうしろっていうのよ。そうしなければ、幸せになれないじゃない。何よ、身勝手な理由って。身勝手で何が悪いのよ。私だって幸せになりたいのよ!」


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る