(三)-2

 ただ、これが熊のぬいぐるみではなく、何か別のキャラクターや他の動物であったら買い与えなかったはずだった。というのも、俺がそれと同じ熊を模したぬいぐるみだからだ。




 俺が彼女の元に来たのは随分昔のことだ。その頃はまだイオンのショッピングセンターなんてなかった。今はもうなくなってしまったが、関内駅の近くにあったおもちゃ屋さんでのことだった。

 当時、よちよち歩きの彼女は、彼女の娘と同じように、俺の目の前で俺のことが欲しいとダダをこねて、母親の幸子を困らせた。

 彼女の母親は大声で叱り、怒鳴りつけた。さらに手の平で彼女の頬をひっぱたいた。それでも彼女は大声で泣き続けた。そして彼女は母親に置いていかれた。


(続く)

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