(三)
俺の持ち主である三川美幸は、そのぬいぐるみを自分の娘に買い与えた。それは娘が歩き回ることができるようになってしばらくしてからのときだった。買い物に行ったイオンのショッピングセンターで娘の幸恵がひと目みて気に入ったのだった。
「ほら、早く行くよ」「買わないよ」
そう言って娘を抱き上げて連れて行こうとする彼女であったが、娘はダダをこねた。その場に座り込み、ギャン泣きし始めたのだ。
ショッピングセンターは子連れ客に優しい作りではあったが、だからといってそこを訪れる客全員が、ギャン泣きする子どもに対し優しいわけではなかった。彼女は周囲の者たちから、冷たい視線の集中砲火を受けた。
彼女はそんな娘の意固地と周囲の無言の圧力に負けて、そのぬいぐるみを買い与えた。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます