(二)-10
「言えない事情でもあるのですか」
香川刑事からの優しく諭すような口調の言葉に対しても、黙ったままだった。
「このぬいぐるみと似た熊のぬいぐるみがベビーベッドの上で発見されています」
香川刑事が、美幸のバッグに突っ込まれた俺のことを指さしながら言った。
俺は心の中でアチャーと言わずにはいられなかった。いや、俺はぬいぐるみだから声を出すことはできないのだが。それはともかく、それは彼女にとっての地雷だ。
「それは……、子どもが欲しがったので買い与えただけよ」
この会議室に来て以来、初めて美幸は口を開いた。
そして彼女は、大粒の涙を落とし始めた。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます