第27話 ゲームの闇
魁斗は静かに話を進める。その話は、これまでに魁斗がソードアンドマジックで出会った全てのこと、そして、洞窟に入ることで知ったダークサイドゲームついてだ。
面影は魁斗のその話を聞いて顎に手を当て深く考え込む。ルビーは突如現実世界に連れてこられ、隠していた2人の秘密を話され少しだけ心配な気持ちになる。
そして、魁斗本人はその話をしながら自分の今置かれている状況について考えていた。
「……ま、そんなところだよ。俺が知ってるのは。まだ知らないことは大量にあるけど、これだけの情報があれば多少なりともダークサイドゲームについて何か分かるはずだ」
「そうだな。だが、目的が分からない。なぜ人々を
「そんなことを俺に聞くなよ。俺だって全て知っている訳では無いんだ。ただ、これは俺の考えだから正しいか分からないが、
「……なぜそう思う?」
「人の生き死にを決めるのは脳だ。そして、
「その考えで行けば、もしかするとバーチャル世界で今ログアウトが出来ないと言っている人の大半は死んでいる可能性は高いな」
「……そうなるな」
魁斗と面影はそんな会話をしてVRゴーグルを見つめる。
「確か、そのゴーグルの名前はセカンドエンティティだったよな?」
「いや、知らん。俺はこのゲームをあまり好ましく思ってないからな」
「いや、たとえ好ましく思ってなくてもゲーム機本体の名前くらい知っとけよ。某ゲーム会社の某ゲーム機の名前だって分かるだろ?」
「悪いな。俺は基本的にパソコンでしかゲームをしない。だから、俺にとってのゲーム機というのはPC、つまりパソコンなのだよ」
魁斗は誇らしげにそういう。しかし、面影はその事が誇りになるとは全く思えなかった。そして、少しため息をついてルビーに声をかける。
「妖精の君は知ってるかい?」
「はい。一応ナビゲートピクシーなので。だから、このゲーム機本体の名前がセカンドエンティティであってることも知ってます」
「おぉそうか、偉い子だな。知らないって言ったら捕まえて裸で吊るすにするところだったよ」
「ひ、ひぇ……!や、やめてくらしゃい……!お、お願いしましゅ……!」
「フッ、冗談だよ。それより、ルビーちゃん。君は何か知らないのかい?」
「うーん……私もあまり知ってることはないんですよね。それに、先程シュテル様……じゃなくて魁斗様が言ってた『現実世界で死んでも
ルビーはそう言ってフワフワと部屋を飛びまわりながら考える。魁斗もその言葉を聞いて少し考え込む。
「……じゃあ、実際に死なないのかシミュレーションをしてみよう。このパソコンで出来ればの話だけどね」
面影はそう言ってカチカチとパソコンをいじり始めた。そして、なにかのシミュレーションの画面を見せてくる。
「これは?」
「これは僕が作ったシミュレーションのアプリだ。なんでもシミュレーションが出来る。ただ、やっぱりさっき言ったことは出来そうにないな」
「何でもじゃないのかよ」
「限度がある。何でもと言ったが、正確にはこの現実世界で起こりうる可能性があることでかつ、このパソコンのスペックが足り、更に正確な情報が必要になる。ここに与える情報によって結果の数値が変わってくるからな」
「……なるほどな。ちょっと変わってくれ。俺がやる」
魁斗はそう言って面影のシミュレーションアプリをいじっていく。そして、中の変数などを変えシミュレーションが出来るように数字を書き換えた。
「出来たよ。これで」
「さすがだな。さすが僕より一点だけテストの点が高い男だ」
「その1点がかなり大きな差になるんだよ」
「……同感だな」
2人はそんなことを言いながらシミュレーションをするために情報を与えていく。まず、どんな状況か、次に何が条件か、そして、時間などの設定だ。
2人はそのような細かい設定をきちんとして、シミュレーションを開始する。
「じゃあ1回目だな」
そう言って1回目が開始された。結果は失敗。2回目も開始された。同じく失敗。3回目、4回目、5回目……何回やっても失敗が続く。大体30回目くらいで記録を取った。そして、分かったことは1つ。さっき魁斗が言ったことはほとんど不可能に近いということだ。
だが、1つだけ成功した例がある。それは、条件を変えた時。突如として成功を収めた。しかし、それ以外は全て失敗。ほとんど死ぬのだ。
「この結果を見て分かるだろ?仮想現実で死ねば現実も死ぬ。ただ、この条件になった時だけ死ななくなる」
「だから、もしかするとダークサイドゲームというのはこの条件にするための裏の組織のようなものなのかもしれんな」
「だが、この条件はほとんど不可能だ。非人道的すぎる。まるで人間をゴミのように扱っている」
面影はそう言って少し怒りの表情を顕にする。しかし、魁斗はそんなこと気にせずに言った。
「……ダークサイドゲームにいるヤツらに常識は通じない。人道的かどうかじゃなくて、成功するか失敗するかの二択しかないんだ」
魁斗のその言葉には重たい何かを感じられた。面影はそんなことを思いながら魁斗の目を見る。魁斗の目にはどこか悲しみと責任を負う心が感じられた。
「それを聞くと、尚更ダークサイドゲームを辞めさせる他ないな。だが、俺たちのような一般人が喚いたところで何も起こらない」
「だったら、
魁斗はそう言った。そして、前を見る。目の前にはルビーが居る。魁斗はその時ルビーと共にダークサイドゲーム終わらせることを改めて胸に誓った。
その時、突如家のインターホンが押される。
「……?何だ?」
魁斗はそのインターホンのカメラで相手の顔を見る。
「誰か知ってるやつか?」
「なわけないだろ。まず、今日家に尋ねてくる人なんていない」
「……じゃあ、コイツは誰なんだろうな。ルビー、調べられるか?」
「任せてください!」
ルビーは魁斗に言われて男の情報を検索し始める。
「そんなことが出来るのか?個人情報だぞ」
「さすがに個人を特定するのは出来ないよ。ても、もしコイツの情報が何らかの端末に保存されていれば、ルビーはその端末からこいつの情報を盗むことが出来る。ただ、情報量が膨大すぎてルビーに処理できるかは分からんがな」
魁斗がそんなことを言って笑っていると、もう一度インターホンが鳴らされた。魁斗が画面を見ると、そこにはまだ男が写っている。
「……カーテンを閉めておけ。見えないようにな」
「いや、もう閉まってるだろ。それに、ここは外から見えないようにマジックミラーが貼ってある」
「あ、やっぱりお前ん家も貼ってんのか」
「お前ん家にも貼ってあるんだな」
「まぁな。なんせ、この家の3軒隣には人の顔を見て笑ってくる失礼なやつがいるからな」
面影は魁斗にそう言って笑う。魁斗もその言葉を聞いて笑う。やはり、2人とも考えることは同じらしい。
そんなことを言っていると、ルビーが情報を調べ終えた。
「あ、分かりました。どうやらあの人達はソードアンドマジックを開発した人達らしいです」
「何?ゲーム機を開発したのか?それとも、アプリを開発したのか?」
「アプリみたいですね。恐らくゲーム機本体にも何かしら関わってると思いますが、公表されているのはアプリを使った人達の中に入っているということだけですね」
ルビーは目を閉じ何かを頭の中で見るような素振りを見せながら魁斗達にそう教える。魁斗達はその言葉を聞いてさらに訳が分からなくなった。
「なんでそんな奴がここに?」
「……分からんな。別に俺らが調べていることがバレたわけでもあるまい」
「……なぁルビー、こいつが持っているアカウントって無いよな。だったらさ、面影が持ってるVRゴーグルでアカウントだけ作って俺と一緒にログインしたことに出来るか?」
「出来ますよ」
「何をする気だ?」
「俺の考えが正しければ、これであいつらは帰るはずだ」
魁斗はそう言ってルビーにアカウントを作ってもらう。そして、2人ともログインしたことにしてもらった。
すると、インターホンの画面で見えていた男達が突如帰っていく。
「……何しに来たんだ?」
「多分、俺達が向こうの世界に居ないから無理やりにでもゲームをさせようとしたんじゃないのか?」
「なるほどな。じゃあ、もしかするとリアルで話すのは危険かもしれない。僕も今日からそのゲームを始めるよ。アカウントは今作ったんだろ?」
「いや、やめといた方がいいぜ」
「……そういう訳には行かなくなっているのかもしれない。とにかく、バーチャルの世界でまた会おう」
「……分かった。ルビー、面影のスポーン地点を俺の家にしておいてくれ」
「了解です!」
魁斗はそう言って荷物をまとめる。そして、1度外を確認して玄関まで向かった。
「じゃあ、また後でな」
そして、家に帰った。
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