第18話 2つの貰い物
光が指す場所が必ずしもいいこととは限らない。人はそんなことを考えることは無い。きっと光の先には希望がある。そんな思いで人は光を目指す。
しかし、シュテルはそうではなかった。こんな状況だったからそう思ったのかもしれないが、この先にあるものは自分を地獄に引き込むものだと思った。そして、その思いは的中する。
そこにあったのは一通の手紙と1組の黒い手袋だった。シュテルはそれを見て何か嫌な予感がする。しかし、ここに来た以上引き返すことは出来ない。そもそも、このゲームを始めた時点でシュテルは後戻り出来なくなっていたのかもしれない。そんなことを思いながら手紙に触れた。そして、中を除く。そこにはこんなことが書かれていた。
『私は2つ目の地下世界を発見した。どうやらここは私の思考を読み取りそこに思い浮かべられた空間を形成するらしい。私はここに楽園のような空間が現れた。もしかしたら、私の望む空間というのは既に死した世界なのかもしれない。まぁ、そんなことはどうでもいいのだが。この空間のボスというのは前回に行ったボスより多少なりとも強いらしい。まぁ、私にはまだ最後の洞窟が残っている。それまでには強くならなければならない。ということは、死ぬにはまだ早いというわけだ。それと、この手紙を読むものがいるということはそれはこの空間を制したものだということだ。そんな君に2つ私からプレゼントをしよう。1つ目は近くにある手袋だ。それは、武器召喚の魔法陣と、錬成陣が描かれている。それを使えば武器召喚と錬成の魔法が使えるだろ。私は使いこなすことが出来なかったが、これを読んでいる君は使いこなせると信じている。そして、私からの2つ目のプレゼントとは、責任だ。このダークサイドゲームに関わり終わらせるという責任をプレゼントする。どんな手を使ってもいい。このダークサイドゲーム終わらせてくれ』
そこで手紙の内容は終わっていた。シュテルはその手紙を元あった場所において、隣にある手袋を見る。確かに、その手紙に書かれていた通り魔法陣と錬成陣が書かれている。
シュテルはその手袋を手に取ると、直ぐに装着した。すると、最初は少し小さい感じだったのだが、大きさが変わりシュテルの手の大きさになった。
「……これでこの洞窟も制覇したな」
「シュテル様、回復はしなくてもいいのですか?」
「回復?あぁ……そういえば体力減ってたな」
「私が回復します!」
ルビーはそう言ってシュテルを椅子に座らせ、その体の傷を癒していく。シュテルは傷を回復してもらいながら一息ついてその手袋を見つめた。
「……シュテル様、その手袋ってどんなのだったんですか?それに、さっきの技って何だったんですか?」
「この手袋は武器召喚と錬成の陣が書かれた手袋だよ。まぁ、まだ使ったことないからどんなふうに使うのか分からないけどね。それと、さっきの魔法はただの時空間魔法だよ。俺が基本的に使ってる魔法は転移魔法だ。だから、それを時空間で行えば良いし、しかも点と点を瞬間移動するんじゃなくて、点と点を繋いでその線を高速移動すればいい。言わば、
「ほぇ〜、めちゃくちゃチートな技ですね」
ルビーは目をきらきらさせてそんなことを言ってくる。
「おいそれを言うな。それに、これはチートなんかじゃない。まだそこら辺にいるヤツらの方がチートだよ。時空間に任意の場所だけ送れると言っても、精密な動きになるためかなりの集中力が必要となる。しかも、それをたった一瞬で決めなければならない。魔力の消費量も通常の転移魔法より少し多いし、時空間魔法と言う特殊な魔法だからか、使用後に強烈な目眩と頭痛を感じる。それに、ほぼ光速さで動いているんだ。周りの景色など見えるはずもない。さらに言うなら、初めにマーキングしておかないとどこにも移動できない。この技に欠点は多いんだ」
シュテルはそう言ってルビーの顔を見た。
「全く、ゲームなのに頭痛がするとか、どこまで現実に寄せてるんだよって感じだよ」
シュテルはそう言ってため息をひとつ着く。しかし、直ぐにルビーが驚いていることに気づく。なんせ、突然回復をする手が止まったからな。
「ん?どうした?」
「……ど、どうして頭痛なんてするのですか……!?」
「どうしてって……したんだから仕方ないだろ」
「そんな……!そんなの有り得ません……!」
ルビーは怯えながら頭を横に振りそんなことを言う。ルビーの様子はさっきと全く違ってなにかに怯えきっていた。
「……ルビー、何があった?言ってみろ」
「い、いえ……もしかしたらそういう仕様変更かもしれないので……」
「いいから言え!今この世界でこのダークサイドゲームを知っているのは俺とルビーとフィナムしかいない。だったら、この3人で出来るだけ情報を交換しておかなければ、後々後悔することになる」
シュテルはルビーに少し強い口調で言った。すると、ルビーは少し怯えながら言う。
「こ、この世界では全ての『痛み』というものがなくなっています。だから、辛いものを食べた時の痛みも、傷ついた時の痛みもなくなっています。その、だから、シュテル様の頭痛は本来ありえないものなのです……!」
「っ!?」
シュテルはその言葉を聞いた瞬間に言葉を失った。そして、頭の中にある一言だけ飛び込んでくる。それは、あの手紙に書いてあった言葉。
「ダークサイドゲーム……まさか、俺もログアウトが出来なくなったのか……!?」
シュテルはそう言ってログアウトのボタンを探す。すると、いつものところにあった。
「……どうやらログアウトはまだ出来るらしい。だが、もしかしたら俺はこの世界に囚われ始めたのかも知れない」
「っ!?ど、どうしましょう……」
「……」
ルビーはその言葉を聞いて慌てふためく。しかし、シュテルは冷静に考える。そして言った。
「ま、どうせ向こう側の世界でも起きていてもゲームしてても何も変わらない。それに、頭痛がしているということは、本当にゲームに囚われた時体の栄養はこの世界から取ることもできるということだ。だから、俺の体は安心しておいて大丈夫だ」
シュテルはそう言った。すると、ルビーはさっきより落ち着く。シュテルはルビーかま落ち着いたのを見ると言った。
「……ま、もしログアウト出来なくなったら2人でスローライフでもしような」
「うぅぅ、シュテル様は深刻に考えて無さすぎです……!」
「深刻に考えてないんじゃない。ポジティブに考えているんだ」
シュテルはルビーの言葉に対してそう言うと椅子から立ち上がり少し伸びをする。そして、てを握ったり開いたりして、少し肩を回し周りを見渡した。
すると、この部屋の奥に扉があることに気がつく。シュテルはその部屋にあるものを入るだけ全てバッグの中に詰め込み、マーキングを至る所に施して扉の中へと足を踏み入れる。
そして、気がついたら洞窟の外にいた。
入る時にあったあの見えない壁もなくなり、振り返ると洞窟の入口さえ無くなっている。シュテルは、そのことを不思議に思いながらも帰路に着いた。
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