第15話 新しい技のヒント
「っ!?な、な、な、何なんですか!?このモンスターは!?」
ルビーは思わず叫んでしまった。すると、そのキメラの目線がルビーに移る。その瞬間シュテルはルビーの体を掴んで横に飛んだ。すると、キメラの目からビームが出た。そのビームはさっきまでシュテルがいた場所をドロドロに溶かす。
「……熱か」
シュテルはその技を見ると、すぐに思考を巡らせる。そして、この技が何なのかをすぐに理解する。
シュテルは技の大体の情報が分かると短剣を取り出し構える。そして、自分の足元に1つマーキングをした。
「ま、こういうのはすぐに潰した方が良いんだよな」
シュテルはそう呟いてマーキングされた紙が着いた針をバッグから8本取り出す。そして、それをシュテルは全方位に投げた。
「じゃあ始めるか」
その一言で戦闘は開始された。
最初に動きだしたのはキメラの方だった。キメラはその巨体からは考えられないほど素早い動きでこちらに向かってくる。しかし、対応できないほど速いという訳では無い。
シュテルはその動きをよく観察する。すると、キメラが攻撃をしてきた。その鋭い爪を振り上げシュテルに向かって容赦なく振り下ろす。当たってしまえば一溜りもなさそうだ。
シュテルへそれを見てどこかに転移しようと考えた。しかし、ここで転移してしまえばフィナムが言っていた新しい
シュテルは少し考えたのち転移せずその爪の攻撃を難なく躱した。そして、その爪に向かって短剣を振り下ろす。しかし、その爪は想像の何倍も硬く短剣では斬ることが出来ない。
「……硬いな。普通の短剣では歯が立たんな。影魔法を使うか?……いや、それだと新しい技は出来ない。窮地に陥る前に編み出したいのだが、難しそうだな」
シュテルはそんなことを呟きながらニヤリと笑う。そして、再び走り出した。そして、キメラへと近づく。
近づいてみると分かることがあるのだが、どうやらこのキメラは思ってたよりでかいらしい。爪を切ろうとした時にも思ったのだが、恐らく建物1個と半分くらいの大きさはありそうだ。
シュテルはそんな巨体の腕を駆け上がり、肩まで来ると首を狙って刃を突き立てる。
そして、イメージをする。どんな技を使うのか。新しい技を編み出すにはイメージするしかない。
「……」
しかし、イメージすると言ってもどんなものをイメージすればいいかが分からない。そのせいで全く技が発動しない。さらに言うなら、自分がどういう属性かも分からない。大体こういうゲームでは適正属性があり、その適正属性以外は使えないはずだ。
「クソ〜、これじゃあ何年かかっても技が出来ねぇよ」
シュテルは小さくそう呟く。すると、遠くから自分に向かって攻撃を仕掛けてくる右手を発見した。シュテルはすぐに別のマーキングしてある場所に飛ぶ。
「さて、どうしたものかね……」
シュテルがそう呟いた時、突如服の中がモゾモゾした。そして、なにかが動いているのが分かる。
シュテルは服の中に手を突っ込みそれを取りだした。すると、それはルビーだった。
「何してんの?」
「シュテル様とお話がしたくてもがいてました!」
ルビーは満面の笑みを浮かべて自信満々でそう言う。そして、シュテルに近づいてきて言ってきた。
「シュテル様はどんな技を作りたいのですか?」
「どんな技かって?そうだな……自分のアドバンテージを全て使い切るような魔法だな」
「だったら、自分のアドバンテージを考えてみてください。そしたらなにか変わるかもしれませんよ」
ルビーはそう言った。シュテルはその言葉を聞いて深く考え込む。
シュテルの得意なこと。……圧倒的な力か?それとも、何人たりとも傷つけられない強靭な体か?それとも、どれだけ使っても無限に尽きることの無い魔力か?
いいや違う。シュテルのアドバンテージは速さだ。目にも止まらぬ動き、目で見た時には既に当たっている攻撃、どんな攻撃さえ避けてしまうその速さ。それらがシュテルのアドバンテージだ。
だとしたら、そのアドバンテージを全面に押し出して、得意分野を伸ばせばいい。苦手なことを克服するのもいいかもしれないが、最短最速で強くなるには、それしかない。
「そうだな……1つずつ試すしかねぇよな!」
シュテルほそう叫んでキメラに向けて走り出した。そして、背中から剣を抜き魔法を発動する。
「まずは影魔法だ!」
その瞬間、ジオクロノスから影が溢れ出して来る。シュテルはその影を刃と自分の右腕に纏わせて飛び上がった。
すると、そんなシュテルを狙ってキメラが爪で引っ掻いてくる。その攻撃を、シュテルは空中で体を捻り避けると、そのまま爪の上に着地してその上を走り出す。そして、何とか振り下ろされないように、暴れ出すより先にキメラの首元まで近づいた。
「なんか出ろ!」
シュテルはそう叫んで剣を振るう。しかし、何も出なかった。
「チッ……!」
シュテルは小さく舌打ちをすると、キメラの右腕に向けて針を1つ投げる。その針は真っ直ぐキメラの右腕はと向かい突き刺さった。
しかし、その事に喜んでいる暇は無い。ほんの少しだけだが、視界の端にキメラが左腕で攻撃するのが見えた。
シュテルはその攻撃が当たるより先に先程右腕に向けて飛ばした針についてある紙に書かれたマーキングのある場所に飛ぶ。そうすることで攻撃を全て避ける。
「……さて、次だ次!」
シュテルはそんなことを言いながら再び攻撃を仕掛けた。
そして、シュテルの長い戦いは始まった。気をつけていないと攻撃が当たり即死だ。そうならないためにも、常にマーキングの位置を把握しておく必要がある。
そのことも考えると、これから考える魔法や技は簡単な方がいい。そう思って色々な技を試す。しかし、基本的にシュテルには魔法の知識は無い。だから、魔法が使えない。
この世界で魔法を習得するには、魔導書と呼ばれるものを読む必要がある。その魔導書と言うのは学校の教科書のようなもので、それを読みある程度知識をつけることにより魔法を習得する準備が出来る。
しかし、シュテルはそれを読んだことがない。そのせいで魔法を発動することは出来ない。
だから、新しい技を作るには今ある技をどうにかしてアレンジする必要がある。
「全く……どうしたものかね……」
シュテルは小さく呟いて剣を見つめた。そして、そこに纏っている影を見つめる。
「……」
シュテルはそれを見てニヤリと笑った。そして、剣を背中に収める。
「シュテル様?なんで剣を収めるのですか?」
ルビーが不思議そうに聞いてきた。それに対してシュテルは言う。
「今の俺は剣を使って魔法を放ってるわけだろ?だったら、剣を使わずに魔法を放てるようにならば強いだろ」
「なるほど!でも、本当にそんなことが出来るのでしょうか……?」
ルビーは心配そうに聞いてくる。
「出来るかどうかはどうでもいい。やるか、やらないかだ」
シュテルはルビーにそう言ってキメラを睨みつけた。
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