第14話 危険を招く洞窟
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━あれから魁斗はARゴーグルを改造し続けていた。気がつけばもう1時間が経過している。
そろそろ戻って特訓しなければならない。そう思って魁斗はVRゴーグルを装着した。そして、ベッドに寝転び目を閉じ、言葉を唱える。
「”ゲームスタート”」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━シュテルが目を覚ますと、そこはベッドの上だった。シュテルはそれを確認すると周りを見渡す。
掃除された部屋に、少しだけある家具。そして、現実世界の自分の部屋とはまた違う模様の自分の部屋。
ここまで確認してやっと自分が仮想現実の世界へと来たことが理解出来る。
「……さて、やるか……」
シュテルは一言そう呟いて下の階へと降りていく。そして、リビングへと向かった。
リビングに入ると机の上に手紙が置かれている。恐らくフィナムだろう。シュテルはその手紙を開いて中を見た。すると、そこにはシュテルに向けて伝言が書かれている。
『済まないね。少し急用ができてしまった。僕はそっちに行かせてもらうよ。万一はないと思うけど、冒険に出る時は気をつけるんだよ。 フィナムより』
「……急用ねぇ……トップランカーは大変だな」
シュテルはそう呟いて少し考えた。そして、周りを1度見渡すと、そこに少し近くに置いてあったポーションなどを手に取って家から出ていった。
現在の時刻は20時。ゲームをする時間と言うには少し遅すぎる時間にも関わらず、この街も人だかりが出来ている。
「こんな時間にゲームをするとか、ゲーム中毒だよな。ま、俺もその1人なんだけどさ」
シュテルはそう呟いて歩き始める。
「シュテル様、おかえりなさい。今からどこへ向かうのですか?」
「そうだな……とりあえずレベル上げだよな。街の外に行こう。そこでモンスターでも倒して色々探そう」
「分かりました!では、案内しますね」
ルビーはそう言って楽しそうにふわふわと飛んで行く。シュテルはその後ろをゆっくりついて行く。
そして、ゆっくり観光気分で街の出入口である門の前に来た。
「まぁ、あまり変なことは出来ないよな。なるべく安全に行こう」
シュテルはそう言って気を引き締め街の外に向かって歩き出した。
……それから1時間ほど経過して、シュテルは街から少し離れた岩山のような所へ来ていた。辺りには大小問わず石や岩がゴロゴロと転がっている。
シュテルはその岩山でモンスターを狩っていた。
その岩山には夜だからなのか、骸骨が所々にいる。シュテルはそんな骸骨を倒しながら、その岩山を探検していた。
「レベルはどうなったのですか?」
「どうって、まだ15だよ。やっぱりこの程度の魔物だと上がりにくいんだよね」
「あれ?おかしいですね。あれほどの数を倒せばもっと上がるはずですよ。それに、あの謎のモンスターも、あれだけ大型だとレベルは30は上がるはずなんですけど……」
「確かにな。言われてみればレベルの上がり方がおかしいな。だが、ステータスは上がってるぞ?それに、スキルポイントも増えている」
「不思議ですね」
「……まぁ、そのうち分かるだろ。今はとりあえず目の前のことだけを考えよう」
「そうですね」
2人はそんな会話をして再び歩き出した。しかし、数歩歩いたところで突如シュテルが足を止める。そのせいでルビーはシュテルの背中にぶつかる。
「うぎゃっ!?もぅ、何なんですか?」
「……扉が開いた」
「え?」
シュテルがそんなことを言うせいで、ルビーは訳が分からなくなる。そして、シュテルの肩の上に登って前を見た。
すると、ついさっきまでは無かったはずの洞窟が現れている。ルビーはそれを見て背中を悪寒が走った。
「シュテル様!ダメですよ!そこからは嫌な感じがします!」
「分かるよ。俺も嫌な感じがする。今日はやめておこう」
シュテルはそう言って振り返った。
「っ!?」
そして、その時気がつく。いつの間にか背後に知らない謎の男が立っていることに。
シュテルはその男を見て直ぐに距離をとった。そして、背中に背負っていたジオクロノスを抜き構える。
「お前何者だ!?」
シュテルはそう叫んだ。しかし、その問いかけの返事は返ってこない。それどころか、男は手を前に突き出して魔力の弾丸を放って来た。
シュテルはその攻撃を難なく避けると睨みつけながら言う。
「何者か聞いてんだろ!さっさと話せよ!」
「……」
シュテルがいくら聞こうともその答えは帰ってこない。シュテルは警戒しながらその男と距離を話していき、ある程度距離が離れたところに着くと、後ろに振り返り走り出した。
「っ!?」
しかし、走り出してすぐに気がつく。なんと、シュテルは閉じ込められていた。ある程度の範囲に透明な壁のようなものが作られている。
「……やられたな」
「シュテル様、どうしましょう……」
「……あの男、前に会ったことあるよな?確かあの時も俺達は後ろに戻ろうとしていた」
「そう……ですね」
「だとしたら、あの洞窟を見た以上入らなければならないのかもしれない。俺達を導いているのか、もしくは俺達を陥れようとしているのか、どちらかは分からないが行くしかない」
シュテルは覚悟を決めて洞窟の入口に目を向けた。この透明な壁は洞窟からだいたい300メートルほどの範囲だ。そして、謎の男は洞窟の入口の前に立っている。
「……まるで俺達をダークサイドへと導いているかのようだ」
シュテルはそう呟いた洞窟の前まで向かった。すると、さっきまで攻撃してきていた謎の男が攻撃をするのをやめた。
シュテルは多少なりとも警戒しながらその洞窟の中をのぞき込む。そして、洞窟の中と足を踏み入れた。その瞬間男の姿は消える。
シュテルはそれを一瞥して前を向き直す。目の前には、永遠に広がる虚無の空間があった。シュテルはその先に向けて足を進めた。
それからシュテルは洞窟の中を進んだ。その洞窟は初めは坂になっていたのだが、途中で階段へと変わりその先を歩いていく。
入口付近には明かりはなく真っ暗な闇が続くだけだったが、奥に進むと松明の明かりが増えてきて周りが見えるようになってきた。
シュテルはその松明のうちの1つを手に取ると、それを使い周りを照らしながらどんどん奥へと進んでいく。そして、2人は遂に深層へと辿り着いた。
「っ!?」
シュテルはその空間に着いた瞬間凍りついた。なぜなら、そこは闘技場だったから。しかも、その闘技場は見たことがあるもの。そう、シュテルと共に特訓した闘技場だ。
「……なんで……!?」
ルビーが目を丸くさせながらその空間を見て怯える。そして、その恐怖心を和らげるためかシュテルにくっついた。
「……俺の思考が具現化されている」
その時シュテルはそう呟いた。
「どういうことですか?」
「俺がたった今考えていたものが具現化されているんだ。俺は今、この洞窟の先に何があるのかを考えていた。前見たく街があると思っていたが、もしかしたら闘技場かもしれない。そう思っていた。恐らく闘技場に関する情報量が街に関する情報量より多かったのだろう。だから、闘技場が具現化された」
シュテルはその空間を見ながらそう言う。しかし、ルビーはそれがあまり分からなかったのかキョトンとしている。
「……ま、あんまり気にしなくていいよ。でも、多分この空間は俺のイメージが反映された空間だ。だが、今どれだけ想像しても作り出すことは出来ない。この空間にはいる時に想像が具現化されるのだと思う」
「わ、分かんないです……すみません!」
「いや、分からなくて良い。それより俺の服の中に隠れておいて。危ないから」
シュテルはそう言って後ろを振り返った。そこに居たのは、巨大な爪を持つ人型のキメラのようなものだった。
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