第13話 秘密基地

「てか、ミウって名前安直すぎだろ」


「あれ?ミウのこと知ってるのかい?」


「あぁ。恐らくだが三帝王は俺の家族だ」


「っ!?本当か!?全然顔似てないけどな」


「よく言われるよ。俺の顔はじいちゃん似だからな」


 その言葉を聞いてフィナムは苦笑いをする。


「てかさ、特訓って何するの?レベル上げって言ってもモンスター倒さないと経験値貰えないでしょ?」


「いや、レベル上げなら対人戦でも上げられるよ。この街の中だと絶対にライフが0にならないからこの家の庭で特訓しよう」


 フィナムはそう言って庭に出て行った。しかし、庭だとそれほど広くない。シュテルやフィナムのように広範囲に広がって戦うタイプだと特訓しづらい。


 シュテルは他に場所がないか考えた。そして、あることを思い出した。


「そう言えばさ、この家の地下に何かあるらしいよ。もしかしたらそういう場所があるかも」


「そうなのか?行ってみる価値はあるな。師匠の残したものだろ?見せてくれよ」


 シュテルはフィナムにそう言われ、師匠の手記を取りだしフィナムに渡した。すると、フィナムはまじまじとその手記を見つめる。


 そして、家の中を歩き回りキッチンへと向かった。そして、床下収納を開き中を移動させる。すると、そこから地下へ向かう階段が現れた。


「本当だ……全然気づかなかったよ。行ってよう」


 フィナムはそう言って奥へ進み始める。シュテルもフィナムに続いて進み始めた。


 それから少しの間進むと、ドアが出て来た。その扉は見た感じ普通のドアで、鍵がかかっているわけでは無さそうだ。


 フィナムはドアの前に立つと、少し警戒しながらも開けた。すると、中は少し豪華な部屋となっており、大量の武器や飛び道具、そして回復薬などがあった。


 さらに、奥の方に行けばかなり広い特訓部屋がある。


「すごい施設だ」


「ここなら気軽に魔法とかも使えそうだな」


「じゃあ、ここでやるか。ここだと街の中っていう判定だからライフが0にならないからね」


「そうだな。……てか、こんな施設があってフィナムは気が付かなかったのか?」


「……そのことについては聞かないでくれ」


 フィナムは小さくそう呟いて奥の施設へと向かって行った。シュテルは少しだけフィナムの弱点が見えたような気がした。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━それからシュテル達は特訓を始めた。最初はシュテルと近接戦闘インファイトの訓練。次に遠距離戦闘の訓練。そして、最後はフィナムの速さに慣れることだった。


 しかし、フィナムはそれだけしても勝てないと言う。そして、新しい技を編み出すようにと言ってきた。


「新しい技か……」


「そうだ。それも、シュテル固有オリジナルのね」


「フッ、なかなか難しいな」


「難しくてもやらなきゃ殺られる」


 フィナムは真剣な眼差しでそう言ってきた。シュテルもそんなフィナムの目を見て真剣な表情を作る。


 その時、ふと上の方から音がするのが聞こえた。耳を澄ますと、インターホンの音が鳴っていることが分かった。上に上がって通路を隠すとフィナムはインターホンに応じた。


「なんでしょうか?」


「フィナム!あの男に伝えときなさい!勝負は今週の日曜日の朝7時!逃げたら許さないわよ!」


 ミウは突然そんなことを言ってどこかに行ってしまった。その声を聞いていたフィナムは振り返りシュテルに言おうとした。その時、シュテルがフィナムに言う。


「今週の日曜日か……。それまでに強くならないとだな」


「そうだな。だけど、今日はもう遅い。シュテルもリアルに戻ってご飯を食べてくるといい」


「そうするよ」


 シュテルはそう言って椅子に座る。


「あ、そうだ、2回の寝室を君の部屋に使って良いよ。多分僕の部屋の隣にあるから」


「お、マジか?ありがたく使わせて貰うよ」


 シュテルはそう言って2回の言われた部屋に行った。すると、確かに使われてない寝室がある。


 シュテルはそこに入りベッドの上に寝転んだ。使われてない割にはかなり綺麗だ。どうやらフィナムが掃除をしてくれているらしい。


「じゃあな、ルビー。少しの間待っててくれ」


「了解です!!!」


 シュテルとルビーはそんな会話をすると、シュテルは目を閉じ小さく


「”ログアウト”」


 と、唱え、現実世界へと引き戻された。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━目を開けるとそこは現実世界だった。自分はベッドの上に寝転んでいて、天井が見える。


「……」


 魁斗は何も喋ることなく無言で機械を頭から外し、起き上がった。そして、1階へと降りてキッチンへと向かう。


「もぅ!なんなのよアイツ!」


 すると、リビングからそんな声が聞こえてきた。誰かいる。しかし、魁斗はこの声に聞き覚えがあった。


 魁斗はリビングの扉を開きその声の主を確かめる。すると、そこには目覚めた妹……美優みゆがいた。


「起きてたんだ」


「はぁ?何よ?起きてたらダメなの?」


「いいや、珍しいなって思ってさ」


「あっそ、そんな無駄なことで私の時間を奪わないでもらえる?今私は大変なの」


 美優はそんなことを言って冷蔵庫に向かう。しかし、そこにはまだ夕飯ができてなかったため、機嫌が悪くなる。


「何よこれ!?夕飯が無いじゃない!」


「無いって、今から作るんだよ。時間見ろ。いつもこの時間から作ってるだろ」


「そんなこと知らないわよ!早く作りなさいよ!」


 美優はそう言って怒りながら急かしてくる。しかし、いくら急かされようと作る時間は変わらない。


「もぅ!なんでそんなにゆっくり作るのよ!私は今忙しいのよ!向こうだったらすぐに出来るのに……!早く作ってよ!」


「向こうだったらって……まぁ食事をすれば満腹感は得られるしな。栄養も実は貰ってんじゃねぇのか?」


 魁斗がそんなことをブツブツと呟いていると、美優が殴りながら言ってくる。


「何ブツブツ言ってんのよ。そんなことより早く作りなさい」


「今作ってんだろ。それともあれか?うどんを麺から作ってやろうか?」


 魁斗がそういった途端、美優は鬼のような表情を見せて威嚇してくる。どうやらダメらしい。仕方がないから今夜の夕飯はオムライスにしよう。


「……そうか、VRの情報をARに組み込めば、ルビーと現実世界で会えるのか。確か、前にARゴーグルが流行ったな。今度買いに行くか」


「何言ってんの?」


「なんでもないよ」


「じゃあ早くやりなさいよ!」


 美優は何を言ってもそう言ってキレてくる。さすがにここまで言われたら怒らない訳には行かない。なんせ、歳は魁斗の方が上なのだから。


 魁斗は頭の中でそう考えて、手を止め美優を押し倒そうと考えた。しかし、手を止めたところでふと我に返る。


 そう、これから美優と魁斗は戦うのだ。それなら、大衆の面前でボコボコした後に恐怖を植え付けてやればいい。


 そう考えて何とか自分を律した。そして、そそくさと夕飯を作る。


「やっと出来たの?遅いわよ!」


 そう言ってさらに急かしてくる。そんな美優に叩きつけるように夕飯を出すと、壊れるほど強い力でドアを閉めた。


「っ!?」


 その強さに驚き美優は体をビクつかせる。そして、少し申し訳なさそうな顔をした。しかし、直ぐに戦いのことを考えご飯を食べ始めた。


 魁斗は自分の部屋にご飯を持っていくと、ご飯を食べながらARゴーグルを取りだし改造を始めた。

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