第12話 三帝王

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……それからシュテルは20分程度で街に戻り、ギルドへ向かった。


 何故かその道中でかなりの人だかりが出来ていたが、それはあまり気にせずギルドの中へと入った。


 ギルドの中に入ると、何故か他のプレイヤー達が隅っこで固まっている。何かすごい神秘的なものでも見ているかのようだ。


 シュテルはそんなものは気にせず受付へと向かった。


「「「あの……」」」


 シュテルが受付の人と話そうとした時、誰かと声が被った。


「何?あんた誰?私がここに先に来たんだけど。邪魔だから早くどっかに行ってくれる?」


「え?いや、同時だっただろ。てか、お前こそ誰だよ」


「っ!?何よ!お前私が誰か分かってそんな口聞いてんの!?」


「いや、だから誰か分からねぇって言ってるだろ。頭悪いのか?」


「っ!?あんた……!誰に向かって言ってんのよ!私はあの三帝王の1人よ!」


 そう言って目の前よ女の子は怒鳴ってきた。


 今目の前にいる女の子はどうやらあの3帝王の1人らしい。実際に顔を見た事がないから本当かどうか分からないが、他のプレイヤーの反応を見た感じ本当だろう。


 そして、なんでかこの三帝王と言っている女の子は見覚えがある。最近会ってはないが、すっごい身近なところにいる気がする。


「へぇそう、凄いね」


 シュテルはそれだけ答えて受付の人と話そうとした。しかし、女の子がそれをさせない。


「ちょっと!あんた、私に謝罪の一言もないの!?ふざけてるの!?」


「いや、謝罪もクソもないだろ。じゃあお前が先にやれよ。俺は待っとくから」


「そういう問題じゃないのよ!もう頭に来たわ!あなた私と戦いなさい!」


「え?嫌だよ。俺は争いは嫌いなんだ。さっきだって、訳の分からんゴロツキに襲撃されるし……っ!?」


 その時、突如シュテルの首元に白い刃が突きつけられた。その刃には謎の文字が書かれており、普通の剣には見えない。


 そして、その剣を持っている女の子はシュテルを完全に殺す気で睨んでいた。


「あなたに決定権は無いわ。私がやると言ったらやるの。ねぇ、受付の人。早くPvPの準備をしなさい」


「は、はい!」


 受付の人は急いでどこかに向かっていく。そして、女の子はシュテルの首元から剣を話すと鞘に収め、睨みながらギルドの扉の前へと向かった。そして、吐き捨てるようにシュテルに言う。


「覚悟しておく事ね。私は初心者ビギナーだろうと手加減はしないから」


 そう言い残してギルドから出ていった。


「……マジで訳わかんねぇや。短気すぎるだろ」


 シュテルは再び呆れた声でそう呟いた。そして、ギルドの受付の人に話しかける。


「あの、すみません。依頼達成しました」


「……」


 シュテルがそう言うが、受付の人は誰一人として反応しない。


 あからさますぎるな。よく聞けば、所々でシュテルの悪口が聞こえる。どうやらシュテルは怒らせてはいけない人を怒らせてしまったらしい。


 だが、そんなことは関係ない。ここはギルドで受付の人がいる。そして、受付の人の仕事は依頼が達成したら報酬を渡すことだ。シュテルの依頼が達成されたのだから早く報酬を渡して欲しい。


「早くしろよ。陰口言う暇があったら仕事を全うしろ」


「チッ……!ほら、報酬よ。早く最後の時を楽しんだら?」


「ありがと」


 シュテルはそう言い残してギルドを出た。それから少し街を歩いたが、どこに行こうと全員軽蔑や憤怒の視線を向けてくるばかりだ。耳を済まさなくても陰口が聞こえてくる。


「あいつマジでなんなんだ?俺が勝ったらあの女を裸でつるし上げてやるよ」


 そんなことを呟きながら家へと戻る。ルビーはそれを聞いて苦笑いをした。


「……そう言えばさ、結局秘密基地的なの探してないよね。確かフィナムの家の地下だったはずだけどさ」


「じゃあ帰って行ってみましょうよ」


 シュテルの言葉にルビーはそう答えた。そして、遂にフィナムの家へとたどり着く。


「ただいま。フィナム、帰ったぞ」


「ん?あぁおかえり。今客人が来てるんだ。シュテルも来なよ」


 中からフィナムのそんな声が聞こえてきた。シュテルはその声を聞いてフィナムがいる部屋へと向かう。そして、扉を開けて衝撃の光景を目にした。


「「「あ!」」」


「なんであんたがここにいるのよ!」


 なんと、ギルドにいたあの女の子がいたのだ。しかも、他に2人いる。どうやら三帝王が揃っているらしい。


「あれ?シュテルは知り合いなのかい?」


「違うわよ!こいつがギルドで私に難癖つけてきたのよ!」


「いや、それお前の方だろ。どういう解釈したらそうなんの?」


 シュテルは直ぐにそうツッコミをいれる。そして、他の2人を見た。その2人も見覚えがある。


 ……いや、見覚えがあるとかないとかそういう話じゃない。


「……なぁルビー」


 シュテルはふりかって小さな声でルビーに呼びかけた。


「何ですか?」


「なぁ、驚くかもだけど静かに聞けよ。多分三帝王は俺の家族だ。道理で見たことあると思ったんだよ。両親と妹だ」


「っ!?本当ですか!?」


「本当だ」


 2人はそんな会話をして直ぐに妹と思われる女の子に向き合う。やはり似ている。この感じは妹に間違いない。


「……マジか……」


 シュテルはそう言って他の2人を確認した。やはり、母と父だ。


「興が冷めたわ!帰る!」


 妹はそう言って家の中からでていく。


「済まないね、フィナム。今日はお暇させていただくよ」


「分かったよ。じゃあね」


 両親はそう言って家から出て行く。


「……」


「それで、シュテル。何があったか話してくれ」


「何って、さっきギルドでな……━━」


 それからシュテルはフィナムにことの全てを話した。すると、シュテルは突然吹き出して笑い始める。


「ぷっ、はははははは!やっぱり君も同じことしちゃったか!あははははは!」


「何だよ急に。てか、同じことって、フィナムもあいつを怒らせたのか?」


「いやね、僕もミウを怒らせちゃってね。その時も決闘を挑まれたんだよ」


「そうだったのか。それで、勝敗は?」


「圧倒的に彼女の勝ち。速さも強さも負けてたよ」


 フィナムはやれやれと言った感じで言った。


「フィナムがスピード負けしたのか!?」


「いや、速さは負けてないんだよ。ただ、僕の魔法が通用しなかったんだ。シュテルはもう僕の魔法のこと知ってるよね?」


「いや、知らない。多分だけど聞いたことないよ」


「そうだったっけ?じゃあ当ててみてよ」


 フィナムは少しだけ微笑むとそう言ってきた。確か、フィナムはとてつもなく速かった。まぁ、それしか分からないんだが、恐らくフィナムの技はシュテルと似ている。理由は、シュテルに対して的確にアドバイスが出来たから。そして、魔法を完封されたからスピード負けしたからだ。


 単に足が速くなる魔法なのであれば、完封すること自体難しい。なら、シュテルと似たような魔法の場合完封するのは簡単だ。


 そこから考えると……


「何かしらの転移系の魔法だろ」


「まぁ当たりかな。正解は、『星魔法ほしまほう』だよ。僕は星を放ってその星の部分へと転移テレポート出来るんだ」


 フィナムはそう言ってシュテルの目の前で星を放ち、その星へと転移テレポートして見せた。


「なるほどね。その星を使えば攻撃も移動も防御も出来るわけか。で、それを完封されたの?」


「そうさ。この星を壊せば僕は転移出来なくなるからね。直ぐに倒されたよ」


「なるほど。立ち回りを考えなければならないか……」


「そう言うこと。……なぁシュテル。今の君ではミウに勝てない。だから、シュテルに特訓してもらいたいんだけど、良いかな?」


「良いよ。俺もフィナムに頼もうと思ってたからな。でも、日程は良いのか?」


「大丈夫さ。多分彼女も1週間後って言うはずだから」


「1週間……魔力が全回復する時間か?」


「そういうこと。それまでにシュテルにはレベル上げと立ち回りを覚えてもらう。そして、固有オリジナルの立ち回りも作ってもらう。出来るかな?」


「フッ、望むところさ」


 シュテルはそう言って不敵な笑みを浮かべた。

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