第10話 実践
「……なぁルビー、この効果ってどうやって発動するんだ?」
「頭の中でスキルを発動するイメージをするんです。そのイメージによってどんな効果になるか変わってきます」
「なるほどな。じゃあ、新しい技も作りやすいというわけか。それに、技が被ることも少ない」
「そういう事です。早速やってみて下さい」
シュテルは言われて直ぐに頭の中で技を思い浮かべた。イメージは影魔法で影が剣や自分の体に纏わりつくというもの。
「ん?フッ、スキルを覚えたか」
フィナムはそう言って笑う。そして、スキルを発動したシュテルの体は右腕だけ少し黒くなり、剣は完全影が纏わりつき真っ黒になっていた。
「おぉ!シュテル様!凄いです!かっこよすぎて写真を撮って毎日眺めてたいです!」
「いや、褒めすぎだろ。まだ剣だけだぞ。それに、あんまり形も綺麗じゃないし」
「それでも、シュテル様が使っているからかっこいいんです!」
「そんなもんなのか……」
「君……いや、シュテル!やはり君は凄い!わざと辛辣な感じのキャラを演じたけど、そんな事しなくても良かったよ!まさか、こんなに短い間にこのまで強くなるなんて、師匠に見せてあげたいよ」
「いや、キャラだったのかよ。まぁ、逆に安心した」
シュテルはそう言って少し優しく微笑む。そして、直ぐに真剣な眼差しとなりフィナムを見つめる。フィナムも直ぐに真剣な眼差しとなり構えた。
「行くぞ」
先に動きだしたのはシュテルだ。シュテルは剣を振り払い黒い斬撃を繰り出す。フィナムはその斬撃を難なく切り裂くとそのまま流れるように斬撃を縦に繰り出した。
シュテルは直ぐに違う場所に飛ぶ。そして、走り出し距離を詰め始めた。
「そろそろ僕もスキルを使わせてもらうよ。”スターソード”」
フィナムはそう言って剣に青い光の粒子を纏わせた。その粒子が一瞬で集まるとフィナムは斬撃としてと飛ばしてくる。
それも、とてつもない速さで。
その斬撃はとにかく速かった。見て避けようなんて考えていれば、避けられないくらい速かった。
そしてそれは、シュテルも例外では無い。シュテルはその斬撃を食らってしまった。
「っ!?」
剣で防ぐ暇さえなくもろに食らってしまう。
「グハッ……!」
「悪いね。これでも僕は一応トップランカーの1人なんだ」
「っ!?マジかよ……」
「マジだよ。でもシュテルも凄いよ。僕とまともな戦いができてるんだから。他の人なんて全然だよ」
フィナムはそんなことを言って笑う。だが、シュテルからしてみれば笑えない。さすがにトップランカーは強すぎる。このゲーム始めてまだ2日目の男が勝てるわけない。
「ねぇ、なんで諦めてるの?」
「え?だって俺負けただろ。体力ゲージも半分に……なってねぇ!まだあと少し残ってる!?」
「あ、今気がついたのね。さっき君の影が僕の攻撃が当たる瞬間に攻撃を防いでいたよ。多分オート防御機能があるんじゃないかな?」
「……かもしれないな。もしくは、この魔剣が意志を持っているか」
「それもかなりありうるかな。ま、どちらにせよあと一撃で体力が半分だってことだ」
「いや待てよ、なんでフィナムも半分になるんだ?」
「そりゃあ、レベルを君と合わせてるからだよ。じゃないと不公平でしょ?」
フィナムはそう言って微笑む。どうやらいつの間にか気を使ってくれていたようだ。なんだか申し訳なくなってくる。
シュテルは頭の中でそう考えて少しだけ謝った。そして、直ぐにフィナムに向き合い攻撃できる隙を狙う。
「さぁ、来い!”スターソード”」
シュテルは再び同じ技を繰り出してきた。だが、1度見てしまえば避けるのも容易い。斬撃が出る前に予備動作を作り、出た瞬間に飛ぶ。
「……甘いな」
フィナムはそう呟いて笑った。
(シュテル、君がたとえどれだけ速いスピードでどこに飛ぼうとも、もう僕は君の速さを見切っている。君に勝ち目はないよ)
フィナムは頭の中でそう思った。そう、言ってみればフィナムはトップランカーだから、1度見た初心者の技を2度も食らうわけないのだ。
もし、シュテルが中級者か上級者だったら1度見た技でも避けられないかもしれない。だが、シュテルは初心者だ。避けられない理由は無い。
フィナムはそう思って感覚を研ぎ澄ませた。どこに来ても切る。
そして、シュテルの気を感じた。それも、自分の後ろ……
「っ!?何故……!っ!?まさか!」
なんと、さっきシュテルが飛ばした影が、シュテルのマーキングと同じ模様になっていたのだ。
「しまった……!」
「俺の勝ちだ!”シャドウソード”」
シュテルはそう言ってフィナムの右肩から左の脇腹にかけて切り裂いた。
「グハッ!……なんてね」
「残念。これくらいじゃトップランカーには勝てないよ」
フィナムはそう言って自分の傷を治す。いや、治すと言うより初めから傷がついていなかったかのようだ。
「え?」
「いやはや、少し焦ったよ。でも、攻撃無効のスキルが発動してくれてよかったよ」
「は?え?攻撃無効?」
「そう。攻撃無効だよ。惜しかったね」
フィナムはそう言ってシュテルにデコピンをした。すると、シュテルの体力が1だけ減って半分になる。そして、フィナムの頭上にWinと出てきた。
「本当に凄いよ。こんなギリギリで耐えてたなんてね」
「……はぁ、負けちまったか」
「あれ?結構悔しがってる?」
「そりゃあ、初心者がトップランカーと戦って勝つのは夢だろ」
「ハハ……確かに」
シュテルの言葉にフィナムは苦笑いをする。しかし、シュテルも何故か笑ってしまった。
「ふふふ、はっはっはっ!」
「え?どうしたの?怖いよ」
「あぁ、いや、ごめんごめん。なんか突然面白くなってさ。なぁ、もし良ければだけど、俺の師匠になってくれないか?俺、もっと強くなりたいし、もっとフィナムと仲良くなりたいんだ」
「それなら、師匠より友達だろ」
「確かにな。なら、師匠であり、友達にもなってくれ」
「なんだよそれ?めちゃくちゃ大変だな。でも、良いよ。ただし、俺の弟子になるということは、負けは許されない」
「分かっている」
「そうか。なら合格だ。よろしくなシュテル」
「あぁ、よろしく。……名前はどう呼んだらいい?師匠?」
「普通に名前で良いよ」
「ありがとう。フィナム」
2人はそう言って固い握手をした。
「それじゃあ今日はこのくらいにしておこうかな。シュテルはこれからどうするの?」
「俺はまだ時間があるからレベル上げしに行こうと思う。それに、まだ魔法も慣れてないしな」
「そうか。じゃあ僕は今日ずっとここにいるから何かあったら聞きに来てよ」
「了解した」
シュテルとフィナムはそんなか嫌をして離れた。フィナムは家の方向に、シュテルはギルドと呼ばれる場所へと向かっていく。
……と、その前にシュテルは服屋へ向かった。さすがに初期の服じゃ嫌だ。
シュテルは服屋に着くと、中に入って服を見ていく。そして、何度か試着して1番いいものを見つけた。それは、黒いコートのようなもので胸ポケットが着いており動きやすそうだ。
しかも、何より1000ギルとお得。……ちなみに、ギルと言うのはこの世界の通貨である。今のお金を使えば買える。シュテルは初回限定で貰えたお金を使ってその服を購入した。
そして、早速着用するとギルドへと向かった。
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