第8話 悲しい未来の夢
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……あの日から始まった。地獄のようなダークサイドゲームは。
いつもあの日のことを後悔する。なんでダークサイドゲームを終わらせようとしたのか?なんで自分なら出来るなんて思っていたのか?
いや、根本的な理由はもっと前にある。なんであの時家族を止められなかったのか。それこそ最大の失敗だ。
シュテルはそんなことを追憶しながら涙を一滴流した。しかし、そんなシュテルを慰めてくれる人はもう居ない。
悲しみに飲み込まれそうになっても助けてはくれない。もし、自分が
だが、それももう出来ない。だからこそシュテルはまた歩き始める。どうせもう悲しむことは無いんだ。悲しむ要因は全て消えた。
シュテルは孤独の覇者としてこの世界に存在する。死んで行った皆の為にも、早くこの世界を終わらせる。それが、シュテルの目的。
ただ、唯一の救いとして家族はまだ生きている。ルビーという大切な存在を失うことで助けることは出来た。それだけが、シュテルの救いだ。
「ん?」
近くで何やら騒がしい声が聞こえる。さっきから人が少ないと思えば街の大通りに人が集っているみたいだ。
「そうか、ここは首都か……」
そう、今シュテルがいたのはその国の首都。そして、ここにはあの伝説の3人が居る。まぁ、シュテルからすれば伝説でもなんでもないがな。
「おい!
「我が国が誇るトップクラスのプレイヤーだな」
「おぉ!生で拝めるなんて奇跡だ!」
人々はそんなことを言いながら広場へと向かっていく。ちなみに、その三帝王というのはシュテルの家族のことだ。だから、遠い存在とは思えないし、逆に1度助けたことがあるから尚更思えない。
「クソが……!そのせいでルビーは……!俺が……俺が弱いから……!」
シュテルは後悔と悲しみ、怒りの感情に頭をぐちゃぐちゃにされながら、帰ってきた三帝王を見つめた。3人ともニコニコ笑顔だ。その後ろには
息子がこんなに苦労しているとも知らずに……。
「ん?あれは……」
「あの時の男だね」
「あれから話してないけど、生きてたんだ」
3人はそんなことを話しながらシュテルに向かって手を振ろうとした。しかし、その前にシュテルがその場からいなくなってしまい、手を触れなくなる。
シュテルは、そんな3人の顔を見てアジトへと帰還した。そして、また、ダークサイドゲームを終わらせるための旅の準備を始めた。
「いつか……いつかお前を生き返らせるよ。ルビー……」
その言葉は、重く冷たく部屋の中へと消えていった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……シュテルは一瞬の輝きの後、仮想現実で目覚めた。目を覚ますと目の前にはルビーがいた。見ると、ルビーは慌てている。
「ん?どうしたの?」
「シュ、シュテル様!泣かないでください!」
「え?」
何故か、ルビーは慌ててそんなことを言ってくる。シュテルは不思議に思いながらも自分の目元を拭った。すると何故か濡れている。
「……あれ?なんで?」
「シュ、シュテル様!悪い夢でも見たのですか!?」
「悪い夢?……あ、そう言えば、さっき未来の俺みたいな夢を……」
「や、やはり悪い夢を見たのですね!私が何とか癒してみせます!」
ルビーはそんなことを言いながらシュテルの頭を撫でてくる。
でも、なんでだろう?どうしてかわかんない。嬉しいはずなのに、それ以上に悲しさと会えたことに対する嬉しさと感動がすごく、涙が止まらない。
「あぁぁぁ!ま、また泣いちゃった!な、泣かないでくだい!」
「……うん。もう、泣かないよ」
「まだ泣いてますよ!」
ルビーは何とかシュテルを泣き止ませようと色んなことをする。頭を撫でたり抱きついたり、仕舞いには回復魔法を使い始めてしまった。
シュテルはそれを見ていると何故か涙もどんどん少なくなっていった。そして、自然と笑顔が戻ってくる。
「フゥ……やっと泣き止んでくれました」
「おいおい、俺が赤ちゃんみたいなこと言うなよ」
シュテルはそう言ってベッドから降りる。そして、いつか来るであろう未来のことを思って少しだけ覚悟を決めた。
恐らく、あの夢であったことは必ず来るであろう未来のことだ。未来は変えられない。なら、その先の、見てない未来で直ぐにルビーに会えるようにすればいい。
シュテルはそう考え下の階へと降りていく。そして、宿から出た。
「今日は何をするのですか?」
「今日はアジトに行く。それと、この魔剣の試し打ちもしたい」
「あ、その剣に着いて色々調べて見ました。どうやらその魔剣には影魔法と星魔法のルーン文字が描かれてました。私はそれを見ても何も無かったので、恐らくシュテル様しか使えないのだと思います。ステータスを確認してください」
「わかった」
シュテルは言われた通りステータスを確認した。しかし、何も書かれていない。
「何も書いてないぞ」
「そうですか……。では、剣を持ってください。なにか変わるかもしれません」
「確かにそうだな」
シュテルはそう言って背中に背負っていた剣を手に取った。すると、ステータス欄に影魔法と星魔法が増えている。
「なるほどな。武器を持った時だけ使えるみたいだ。教えてくれてありがとな」
「お役に立てて良かったです!他に何かありますか?」
「そうだな……ルーン文字ってなんだ?」
「ルーン文字は魔法の呪文などの効力を封じ込めた文字です。昨日シュテル様にまとわりついていた文字がそれです」
「なるほどな」
「ふふふ、シュテル様の役に立てるなんて嬉しすぎます♡」
ルビーはそんなことを言って嬉しそうに笑う。その笑顔を見ていると、なんでか心がほっこりしてくる。
至福の時間だとシュテルは思った。
「そう言えばですが、今どこに向かってるのですか?」
「え?今アジトに向かってるんだよ。地図見たらこっちになってるからさ。ほら、あそこに洞窟が見えてきたよ」
シュテルはそう言って目の前を指さす。その方向には洞窟があった。シュテルはその中に入っていく。すると、中はそこまで暗くなく、あかりがが着いていた。
シュテルはそんな一本道を歩いていく。すると、少ししたところで分かれ道が見えてきた。シュテルはその道を地図通りに進んでいく。それからくねくねした道を進み続け、シュテルはある部屋の前へとたどり着いた。
だがそこは、ここに書かれている拠点では無い。しかし、そこを通るように書かれている。シュテルはその中へと入った。
中に入ると普通の部屋だ。だが、色々と機材が置かれている。恐らくここはこの地下で研究をするために作られた倉庫かなにかだろう。シュテルはその中から使えそうなものを全て貰ってその部屋を出た。
そこから更に一本道が続く。そして、その一本道を進めば階段があり外に出られる。シュテルはその階段をあがり外に出た。
「おい!そっちに行ったぞー!」
「了解!」
外に出ると、いきなりそんな声が聞こえる。どうやらここは入ってきた場所から少し離れた林の中らしい。
外に出ると、他のプレイヤーが狩りをしていた。イノシシと戦っている。2人で戦っているからか、スムーズに倒せてるし連携が上手い。
「仲間か……良いよな」
「仲間ならここにいますよ」
シュテルの呟きにルビーが反応する。シュテルはその言葉を聞いて確かに、と思うと再び足を進めた。
そして、そこから更に20分ほど歩くともう1つの街が見えてきた。地図には、その街のある家の地下に拠点があると書かれている。シュテルはそこまで歩いて向かう。そして、その目的の家の前まで来た。
「……いや、明らかに誰か住んでるだろ」
そこは、中はあかりがついてなく真っ暗だが、かなり綺麗な一軒家がだった。
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