第2話「夜更け」
【1】
客人が隣室に戻ったのを確認してから、アレシオは階段を降りてクラウの元を訪れる。
彼女は名残惜しそうに古びた本をぱらぱらとめくっていたが、彼の存在に気付くと柔和な微笑みを向けた。
「あら、アレシオさん。まだ起きてたんですね。
それならあなたも聞いてくれればよかったのに」
「確かにそれも魅力的な提案ですね。
しかし僕はもう十分に読み聞かせてもらいましたので」
「それもそうですね。
何度も聞いていたら、流石に飽きちゃいますか」
彼女の発言に対し、アレシオは慌てて首を横に振る。
「いえ、とんでもない。
あなたの声も語り方も、そんなにすぐ飽きるようなものでは……」
そんな風に言い訳めいた言葉を並べようとするアレシオを見て、クラウは堪えきれずに笑う。
「……ふふっ。そんなこと、わざわざ訂正しなくたって大丈夫ですよ」
20日程前からこの宿に泊まり続けている旅人の青年、アレシオ。
初めて会った時の彼は「別の世界から来た」なんてことを言っていた。
その時点でクラウにとっては意味不明だし、こんな寂れた村を訪れた理由も「探し物」の一言で、詳しいことは何も話してくれない。
字面だけで考えるとかなり怪しいはずなのに、クラウもその妹も何の心配もせず彼を宿に泊め続けている。
彼女達曰く、理由は二つ。
この村には他に宿がないから、というのがひとつ。
そして、こんな不器用そうな性格をした人間が悪いことをするとは思えないから、というのがひとつ。
車輪を動かして棚に向かい、それからティーカップを取り出す。
「よろしければ如何でしょう?」
先ほどの家族に振舞った際に準備した一式がそのままである。
これならすぐに準備できるだろう。そうクラウは判断した。
「いいんですか?」
「ええ、嫌なものですか。アレシオさんはお客さんなんですよ?」
そう言ってクラウは微笑み、お茶の準備をする。
【2】
「……温まりますね」
受け取ったティーカップから口を離し、アレシオは白い息を吐きながらそう呟く。
「私もお茶、好きなんです。お出ししたのはそれほど良質な茶葉ではありませんが」
「いえ、とても美味しいです。それに、僕の身の丈に合っている」
「身の丈……ですか?」クラウが首を傾げる。
「はい。一番の贅沢というのは、最も自分に合うものを楽しむことです」
「そういうものでしょうか?」
「ええ、きっとそういうものです」
「大人な考え方ですね」
格好つけた言い回しとも捉えられる内容なのに、アレシオはそれを真剣に口にしている。
----こういうところがどうにも憎めないなあ。
自分もティーカップに口を付け、それから一呼吸置いて、彼女は話を切り替える。
「この村に来てから、そろそろ20日くらいですか?」
「はい。探し物は何も見つかっていませんが」
「そうですか……それは残念ですね」
列車の中で出会った、あの後。
アレシオとクラウはすぐに再会することになる。
客人も少なく、まともな宿がここしかないこの村で、住み込みで働いている彼女と出会わないはずがなかった。
「なんの進展もありませんが、焦っているわけでもないんですよ。
なにしろ、時間は沢山あるので」
タイムリミットは無い。
もちろん早ければ早いほど良いが、余程遅くなければ時間切れにはならない。
手遅れになる要因は別の所にある。そういう仕事である。
「ええ、ゆっくりしてもらって結構ですよ。
その方が私たちも沢山稼げますし」
「それもそうだ。その方が君たち姉妹にとっては嬉しいはずですね」
「……あんまり真に受けないでくださいね?」
冗談を真顔で返すアレシオに、クラウは少し困惑してしまう。
調子を取り戻すために、紅茶を一口だけ口に含んだ。
「……しかし、あなたの言う『探し物』というのは、一体なんでしょうか。
私にはとんと見当もつきませんが」
わざわざ他の土地から(それも、彼の口ぶりからして相当な遠くから)訪れて得られる対価なんて、一つとして浮かばない。
----そんなものがあるなら、私が教えて欲しい。
----それを新しい名産品にすれば、この村ももう少しくらい潤ってくれるんじゃないかな。
クラウはそんなことを考える。
「……すみませんが、まだ答えることはできません」
「そうですか」
「はい。泊めて頂いている身であるというのに、申し訳ありません」
大丈夫ですよ、とクラウは首を横に振る。
「アレシオさんが悪い事をしようとしているとも思えませんから。
ただ、『この村で見つけられる探し物』というのが少し気になっているんですよ。
村人である私自身、何にもない村だな、と思う毎日ですし」
----だから暇つぶしに教会に通って、所蔵している本を借りて、村の昔話を調べたりしている。
----もしかすると……自分が昔の村の事ばかり調べてしまうのは、今に大した魅力を感じないことの裏返しなのかもしれない。
「クラウディナさんは……」
アレシオがそこまで言いかけたところで、彼女が言葉を遮る。
「クラウ、でいいですよ。何度もそう言っているじゃないですか」と微笑む。
「失礼しました。クラウさんは、どうして昔話を追いかけているんですか」
昔話について知っている少女がすぐ近くに居たのは、彼にとっては幸運なことであった。
彼の”探し物”のためには、把握しておかなければならない情報は沢山ある。
村の現在だけでなく、歴史にまで精通している少女がいることによって、彼の行動は何倍も楽なものになっていた。
しかし同時に、彼女がそこに詳しい理由が気になってしまったのだ。
「そうですね……」とクラウは顎に手を当てて考える。
透き通りそうなほどに白く細い指と、小さな顔が重なる。
彼女がそのような仕草をすると、それだけで絵になるような美しさだった。
特別な意識など持っていないつもりのアレシオですら、しばらく彼女に釘付けになる。
そんなことには少しも気付かないまま、やがて手を離した彼女は口を開く。
「こう言うと突拍子もない事かもしれませんが……私、救われたいんです」
「救われたい?」アレシオが訊き返す。
「はい。
私は生まれ持った身体も、生まれた環境も、決して恵まれているとは言えませんでした。
今は妹のおかげで生活できていますが、あの子から貰っている物に対して、十分な恩返しができているとも思えません。
……いつも笑っていますけど、私、意外と後ろ向きな性格なんですよ」
そう言って彼女は微笑む。
「今ではないどこか、この物語のどこかに……私がこの身体で生まれてきたことを許してくれる言葉があるような気がする。私がここに存在していいという証明を見つけられる。
そんな気がするから、昔話を求め続けているんです」
「自分の存在の理由、ですか」
「なに言ってるんだろ、って話ですよね。でも、そう信じたいんです」
「いえ、わかる気がします。
僕たちは皆、自分の存在意義や理由を探し続けています。それは当然です」
「……そう言ってもらえるだけで、少し気が楽になります。
ありがとう、アレシオさん」
もう一口、紅茶に口をつけて息をつく。
「……とは言っても、所詮は昔話ですから。不可解な点は沢山ありますよね」
窓が小さく揺れている。きっと外では少し風が吹いているのだろう。
「私、思うんです。
神様だって、自分の行為が人間のために、そしてその少女のためになると考えたのでしょう。
けれど、ちっともそんなことはないんじゃないかって」
「どういうことでしょうか」
「生命の質と量のつり合いを取るべきだ、なんてことを神様は考えたのでしょうが……
そもそも、長く生きることがプラスであると、言い切れるのでしょうか?」
「…………続けてください」
「質の低い人生を送っている人間ほど、長く生きることはただ苦しいだけなのではないでしょうか。
苦しいだけの人生ならば、本当は短い方が良いのではないでしょうか。それをわざわざ、苦しみの期間を引き延ばしている……」
----神様は、少女がせめて普通の人間と対等になれればいいと考えていた。
----けれど、むやみな長寿なんて、むしろマイナスかもしれないのだということに、神様は気付かなかったのだろうか?
「魔女は呪われているというのは、それは死ぬよりも辛く苦しい人生だからじゃないか、なんてことを考えてしまうんです。
そして彼女達は、だからこそ人を憎んでいる」
長い生を与えられることが本当に良いことであるならば、『呪い』ではなく『祝福』のはずなのだ。
なのに誰一人そんなことは考えない。
あくまでこの村の昔話であり、決してこれが真実であるとは言えない。
しかし、そんな架空の悲劇に対しても、クラウは真摯に向き合っていた。
どこか他人事とは思えない、その神様と少女のことを。
「アレシオさんはどう思いましたか?」
「どう、と言いますと、この村のおとぎ話についてでしょうか」
「はい。あなたの国にも、何かしらの神話やおとぎ話があるのでしょうが……
少なくとも、こことは全く同じものではなかったはずです。
だからこそ、何か感じる部分があったのではないですか?」
クラウの質問に対し、アレシオは少しだけ困ったような表情をして回答する。
「実は……そもそも僕の住んでいた場所では、魔女についての昔話なんてなかったのですよ」
「そうなんですか?」
「はい」
クラウはそのことを意外に思う。
----これまで、村や町や国の数だけ魔女の神話は存在するものだと思っていた。
ほとんどの国のほぼ全ての信仰は、魔女について言及していたはずだ。
彼の住んでいた場所では、全く別の信仰でもあったのだろうか。
それとも、魔女の存在とはかけ離れた世界だったのだろうか。
ますます彼の事がわからない。
「ですのでこれは、一人の人間の勝手な意見なのですが……」
そう前置きしたあと、アレシオは言葉を続ける。
「なんだか魔女が可哀想だな、と思いました」
「可哀想、ですか?」
予想外の回答にクラウが驚く。
「この物語の通りならば……彼女たちが魔女なのは、とびきり質の低い生を送っているからじゃないですか?
ただでさえそんな人生なのに、加えて人に忌み嫌われるなんて、追い討ちみたいで酷いじゃないですか」
アレシオがそう言うと、目を丸くしていたクラウはやがて小さく笑い始める。
「あれ、僕は何かおかしいことを言いましたか」
「いえ……ただ、そんなことを言う人間はアレシオさんが初めてだったので」
そうしてひとしきり笑った後、クラウはにこやかな表情のままアレシオに対して口を開く。
「村に住む人たちは皆、魔女のことを嫌っています。
ですから、その話はできるだけ外ではしないようにしてくださいね」
そう言って口元に人差し指を当てるクラウ。
しかし、何かを戒めるような素振りは全くない。むしろ穏やかなまま、言葉を続ける。
「けれど、そう考えてくれるアレシオさんのような人がいるのだとすれば……
この昔話も少しは報われるのかもしれませんね」
昔話が報われるなんて、優しい彼女らしい表現だなとアレシオは思う。
「アレシオさんは旅人なんですよね?
でしたら、色々な国の物語を知っているのですか?」
「そうですね、クラウさんのお眼鏡にかなうほどのことを知っているかはわかりませんが」
「少しだけでも教えて頂けると嬉しいです。
だって、私は実際には魔女を見たことがありませんから。
これだけ調べているというのに、本当に存在するという確証すらないんですよ」
「そうですね……僕が訪れた国や町も、決して多くはないのですが……」
そう前置きはしたが、アレシオはそのまま自分の見聞きした魔女について語り始める。
「例えば、魔女という存在自体を神格化しているような国もありました」
「神格化? それはいったいどういう理由でしょうか」
「ある国は、純粋に寿命の長い人間を神聖視していたのだと言います。
長い人生を歩んだ人間の智恵や処世術を尊敬していた。
そんな国にひとりの魔女が辿りついたならば、やがて神様のような扱いを受けるようになるのは決して不自然なことではありません」
長寿に対する信仰のようなものを持つ国は他にもある。
千年生きた動物が神になる、海の向こうにはそう信じている国もあるのだという。
「他には、神様というよりは軍神として扱っている場所がありました」
「兵器ですか」
「理由はなんとなく察しがつきますよね?」
「彼女たちの魔法、ですよね」とクラウは返す。
「そうです」アレシオは頷いた。
「やっぱり、魔女が魔法を使えるというのは、本当の話なんですね」
「はい。彼女達は確かに魔法を使っていました。
それも、簡単に人の命を奪ったり、国を滅ぼしたりすることができるほどのものです」
「そんな強大な魔法をほとんど無尽蔵に使うことができる魔女たちは、燃料の必要のない兵器にも等しい、と」
「はい、そういうことです」
「酷い話」
「僕もそう思います。
ただ……兵器とは言っても、兵士を束ねる将のような役割でしたから、一応はモノ扱いされてはいなかったのかもしれません。
それに、そんな魔女の中には、自分の生き方を良しとしている者もいましたから」
彼は言葉を続ける。
「僕は……魔女たちが満足なら、それでいいと思っているんです。
たとえ戦いに駆り出されようと、それを自分自身の意味としているのなら。
自分を犠牲にして得られる大衆の感謝、それを生きがいとしているなら」
----一瞬、冷たい人だと思った。
----けれど、たぶん違う。これもアレシオさんなりの魔女に対する優しさなんだろう。
----よくわからない部分は多い人だけれど……彼は本気で、他人の幸せを願っている。それだけは間違いない。
「今話したような軍隊の駒として使う国よりも、もっとひどい場所もありました。
魔女をただの道具として認識し、扱っている場所です。
これ以上はあまり説明したくはありませんが」
「私もそこまでは聞きたくないですね……」
----彼が躊躇するほどであるから、よほど残虐な使い方をしているのだろう。考えるだけで気が滅入ってしまう。
クラウがそう思っていると、遠くで鐘が鳴った。
毎日決まって鳴るこの鐘は、夜がもう深いことを知らせてくれる。
寝ている人間が起きるのではないか、と思うのだが、村の人たちにとっては生まれた時から聴いている生活音の一つだ。
どうやら寝ている彼等は気にもしないらしい。
村の外から訪れた人間だけが、驚いたように目を覚ましてしまう。
アレシオも最初の数日はその被害者だった。
「結構、話し込んじゃいましたね」
「そうですね、すみません」
「いえ、私も寝る前には誰かとお話ししたいといつも思っていましたから。
でも、ソレラったら、その日の仕事を終えるとすぐに寝ちゃうから」
ソレラというのはクラウの妹の名前であり、彼女と同じようにこの宿に住み込みで働いている女の子だ。
いつも柔和な笑みを浮かべて穏やかに過ごしているクラウとは違い、ソレラは活発でよく働き、そして姉よりも強気な人間である。
しかしだからといって悪い人間ではなく、むしろ芯の強い所は好感が持てる。
彼女たち姉妹は幼い頃に本当の両親を亡くしているのだという。
この宿は彼女達の叔母にあたる人が所有していたもので、今は二人の暮らす場所でもある。
叔母さんは彼女達姉妹のことをあまり快く思っていないようで、滅多に宿に顔を出すことはない。
たまに何割かの稼ぎを貰いに来るだけで、基本的には全て放任している。
『わたしたちのお金がなくなっても、餓え死にしても助けようとはしないでしょうね』とソレラが言っていたことを考えると、よほど姉妹と関係を持ちたくないのだろう。
「僕なんかが話し相手になるというのなら、これからも喜んで付き合いますよ。
とは言っても、夜更かしは女性の敵ですね。
特に、クラウさんのような美しい人にとっては」
「……もう」
----この人はところどころでこう言った台詞をためらいもなく飛ばしてくる。
そういう意味がないとわかっていても、どうにも照れちゃうな。
「そう言えば……アレシオさんの寿命は、いくつくらいなのでしょうか?」
話題を変えるためにそう言うと、アレシオは驚いたような表情をした。
「答えるのは構いませんが……
前に列車の中であなたが言ったじゃないですか。
『初対面の女性に寿命を訊くのは失礼だ』って」
「確かにそうですが」とクラウは笑みを浮かべる。
「でも、私とアレシオさんはもう、初対面というには会話をしすぎたように思えます」
----今の発言は、彼女にとっての信頼の証なのだろうか、そう自惚れてしまっても良いのだろうか。
「そうですね……僕の寿命は普通の人間と同じくらいだと思います」
「普通の人間と同じくらい……とすると、35歳から40歳くらいでしょうか」
「はい。ただ、本当は寿命を調べたことはないんですよね。
僕のもともと住んでいた場所では、そんな習慣はなかったもので」
アレシオは旅を始めてから知ったのだが、この世界には寿命を測ることのできる人たちがいる。
----正確に査定できるかは技術次第ではあるが……彼らにかかれば、対象者の生まれ持った持病や身体の状態を確かめることができる。
----かつてはその能力を応用し、人の健康や寿命を奪い取ることができたらしいが、今となってはどうなのだろうか。
「あなたの故郷は……今でも、外界との連絡を絶っているような村、ということですか」
クラウは彼と初めて出会った列車での会話を追想する。
----彼はこことは別の世界から来た、なんてことを言っていたな。
----彼なりの冗談か何かなのだろうが、やっぱりこの村とは常識も文化も違うほど遠い場所なのだろう。
「おおよそそんな感じです。……半分は」
「残り半分は?」彼女が言葉を拾い上げる。
「誰も、関心がなかったのだと思います。
おおよその寿命を知っていようと、知らなかろうと、生きていけないというわけではありませんから」
「まあ、確かにそうですね……」
----自分の残り時間を考えなくて良いというのは、ある意味では幸せなことなのかもしれないな。
「なんだか少し、羨ましいかもしれません。
自分がいつまで生きられるのか、いつ死ぬのか……それらは知らない方が良いこともあるような気がしますから。
アレシオさんの住んでいた村の人たちは、賢明ですね」
「そんな素敵なものじゃないですよ。
……あの人たちの場合は特に」
そう言ったあと、差し出されたカップを受け取り、口をつける。
冷めきってしまっていたものの、優しい味わいは残ったままだ。
「明日も探すのですか?」
「ええ。そのために僕はこの村に来ましたから」
----一体、彼は何を探しているのだろう。
----偉人がいるわけでもなく、名産品もそれほどない。
----凍てつくような寒さと、枯れ果てた冬の木々。
----客人をもてなすどころか、自分たちの明日の食事すらままならないような時期だって珍しくはない。
----そんな村に何か価値があるのか。あるとすれば、こちらが教えて欲しいものだ。
----疑問は止まないが、ここでこれ以上の詮索をするのは失礼かもしれない。夜も深いし、名残惜しいけれどそろそろお開きにしよう。
「お茶、ありがとうございました。美味しかったです」
アレシオがティーカップをクラウに手渡す。
「そろそろ部屋に戻りますか?」
「そうですね。もう既に十分遅い時間ですし。
それでは、おやすみなさい、クラウさん」
「はい、おやすみなさい、アレシオさん。
探し物、見つかるといいですね」
別れの挨拶を交わし、アレシオは自分の部屋に戻る。
【3】
そんな彼の後ろ姿をゆっくりと追ってから、クラウはため息を吐いた。
「見つかると良いですね、なんて言っちゃったな」
----自分は本心からそう思っていたんだろうか。
----彼が『探し物』を見つけてしまうことは、自分にとって本当に嬉しいことなのだろうか。
----きっとそれが終わると、彼はこの村を離れてしまうだろうし、それ以前に、きっと彼の目的は----
「……うん、考えるのはやめよう」
----ランプを消す。渦巻いた色々な感情は、闇の底に沈んでいった。
----今はこれでいいんだ。考えすぎても仕方が無いし。今の私は誰に対しても笑顔を向けて、皆の幸せを願おう。それだけで良いから。
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