4話
珍しい天気だった。誤解を恐れず言えば、異常気象だ。朝は雲が多く過ごしやすい感じだったのが、昼になった途端日差しが強烈に差し込み、かと思えば昼下がりには暗くなってぽつぽつと水が地面に弾ける。こういうのを秋模様とでも云うんだろうか?まあ夏真っ盛りだが。
雨というのはつまり、ただでさえ億劫な通学をより複雑にさせるアルゴリズムである。俺は気象の異常さに身を委ねた、どうかここから晴れへと二転三転してくれないか、でも天の上でサイコロを振って決めている訳でもないだろうから望み薄だった。
天気を待つ間に屋根のある通路
「要るか?」
「先輩のだろ」
「もちろん、先輩の分だよ」
小高は黙って受け取るとすっと立ち上がり、小窓のこちら側からはアイツの膝の少し上までしか見えなくなった。そして色の無い声で話しかけてくる。
「ジュン。お前話聞いてたか?」
「聞いてたよ」
「話すから、もう聞いて回るなって言っただろ」
「聞いてた」
「じゃあ分かっててやったのか」
「細田のことだけだ」
「関係ない。やめろって言っただろ」
この場所は絶好という訳でもないらしい、屋根が短くて雨が内に入り込んでくるのだ。少し出ていた靴先は大変なことになっていた。
「今月中は、先輩は来ないよ」
「分かってる」
俺の一言で小高は火蓋を切ったように小走りで練習に戻っていく。俺は服が湿っぽくなるまで黙って待っていて、やっぱり用事を思い出した。さっきと同じ要領で屋根のある所を伝って帰る。だけれど上手くいかなかった。学校の敷地は丘の上で水はけが悪い、水溜まりがそこかしこに出来ていたからだ。
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