第三話 人間こえー

 男はしゃがんで黒猫に声をかけました。猫は餌でももらえると思ったんですかね、男のほうに駆け寄っていきました。

 男は素早く立ち上がると、猫を蹴ろうとしました。

 猫はとっさに飛びのいて回避しましたけどね。その蹴りは、空を切る音が聞こえてきそうなぐらい本気の蹴りでしたね。私もうゾッとしちゃってさ。思わず「人間こえー!」って、深夜の公園で叫びましたもん。

 イケメンはげらげら笑いながら公園を出ていきました。どうやらこのイケメン、わざわざ猫を蹴るためだけに公園に来たみたいです。どんな性格してんの。怖すぎでしょうよ。

 あまりに怖かったんで、ちょっとそのイケメンにツバをつけておきました。ええ、ツバです。私がその気になったらいつでもあの男のところに行けるようにね。


 それから何ヶ月かしたころだったと思うんですけどね。駅前ですごい美少女を見かけたんです。まだ高校生だったのかな、幼い顔立ちではあるんですけど、天女様のようにまばゆく輝く美しさでしたよ。表現が古い? じゃあ、何ていうの。天女様じゃなくて、すんげえイケテルナオンって言えばいいの? 何わかんない。とにかくとびきりの美少女だったわけ。

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