第二話 深夜の公園で

 実は話を聞いてほしくて、あなた様に取り憑いてみたんですよね。ええ、これだけは絶対にどうしてもって思いましてね。お願いですから最後まで聞いてくださいな。


 あれはいつだったかなあ、二十年ほど前のことでしょうかねえ。ある晩、公園に行ったんですよ。何をしにって、そりゃ妖怪ですもん、やることは決まってるでしょ。怪奇現象の練習ですよ。こう見えて私まじめなんですよね。ただ、なかなか上達しないもんだから、ときどき嫌になってしまうんです。私はどうも妖力ようりきが弱くってね。

 その夜も、頑張ってもうまくいかないもんだから、もう練習する気がなくなっちゃって、ベンチの下でぼんやりしておりました。

 そのとき、若い男が公園に入ってきたんです。

 顔はかなりの美男子でした。今はイケメンって言うんでしたっけ。


 その公園には野良猫が住み着いていましてね。尻尾の先が曲がった人なつこい黒猫です。たしかメス猫じゃなかったかな。左耳にカットされた痕がありましたから。左耳を切られているのって避妊手術済みのメスっていう意味なんでしょう? 私もよくは知らないんですけど、公園に貼ってあった「地域猫サポーター募集」のポスターにはそう書いてありました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る