第2話 これは片思いとは呼ばない(1)
根岸十六夜をひと言で言い表すなら、無個性だ。
人より他人に興味がない。
あいつが教師として我が校に赴任して来たときに抱いた印象は冷酷だ。
そんな奴がよく教員採用試験を合格出来たものだ。
根岸みたいな朴念仁でもとおってしまえる制度に疑義を呈したいところだが、試験というものはどれだけ他人を欺けるかが鍵だとあたしは捉えている。面接は特にその面が強い。個性を発揮しつつ、本性を秘匿する必要がある。本性をちらっと垣間見せてしまえば、面接官は瞬時に見抜き、不合格を言い渡される。面接官を欺き、さらには他人も欺かなければならない。その瞬間だけ全員が詐欺師になる。
根岸は特段に虚飾に塗れるのが上手ということだろう。
そういう意味では無個性と呼ぶのはちがう気もする。没個性と呼ぶべきだろうか。
個性という枠に当て嵌めていいものか。
根岸十六夜は他人よりなにかが異なる。
浮世離れしているわけでもない。
到って普通の成人男性。
しかし普通と言い切るのも憚られる。
かれこれ十年近く一緒に仕事をしているが、未だに根岸がどういう人間か把握出来ていない。
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