青い果実
ㅤ君が死んでしまったので、燃やして灰を庭に撒いた。君の眠る土に、枇杷の苗木を植えた。大きな葉を携えて青々としたその姿は、まるで皮肉のようだった。
ㅤ庭の枇杷の木は、去年から実を生らせている。去年は、駄目だった。ようやく帰ってきた君におかえりを言う間もなく、熟れた実を鳥が食い荒らしていった。
ㅤ早朝。肌寒さを感じる空気の中で、穴の空いた実を呆然と見つめていた僕は、さぞや滑稽だっただろう。今年は同じ失敗を繰り返さないように、青いうちに全ての実を採った。
ㅤそのまま食卓に並ぶ枇杷の実。ようやく君におかえりを言える。
ㅤぶつり、フォークが表皮を破る。そのまま口に運べば、熟れる前の果実特有の、固さと生臭さが口に広がった。これからずっと、何度でも味わう君の味だ。咀嚼して、飲み込む。来年もまた、誰よりも早く実を採りに行こう。
ㅤ二度と誰にも啄まれないように。
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