ドルメン 第 15 話 ロベルトの秘密の書類
今回のタイトルの前に「ハリー・ポッターと」って入れたい……。
* * *
警察署から出ると、知らない番号から電話があったことにアルタフィは気が付いた。そして、その番号にかけ直した(注 1)。
「もしもし、こちらの番号からお電話頂いたようなんですが、どちら様でしょう?」
「ああ、アルタフィかい?」
「そうです。あなたは?」
「すまない。私はアントニオ パレデスだ。先日の葬儀でお会いしたロベルトの同僚だ。電話をかけて申し訳ない。学部で君の電話番号を聞いたんだ(注 2)。君に会って話したいことがある」
「ちょうど今学校に行くところです。カラスコ教授に会う予定なんです(注 3)」
「それは都合がいい。私も学部にいるから。一時間後でどうかな?」
「わかりました」
カラスコがオフィスにいなかったので(注 3)、アルタフィが階下のカフェに向かうと、アントニオ パレデスがいた。パレデスは二人の女性と話をしていたが、アルタフィに気が付いて席を移った。
「ずいぶん早かったね。たいして待っていないよ」
「カラスコ教授がオフィスにいらっしゃらなかったので、降りてきたんです。私に何の御用ですか?」
「ばかばかしいと思うかもしれないんだが、ロベルトは殺される二、三日前、とても神経質でイライラしていたんだ。彼のことは良く知っていたし、仲も良かった。だから、どうかしたのか聞いたんだ。そうしたら、発掘が始まるから興奮してるんだと、そしてこの発掘で大きな結果を出せるはずなんだ、と言っていたよ」
アルタフィは我慢できなくなって遮った(注 4)。
「それのどこがおかしいんでしょうか」
「ここまでは普通だ。ただ、殺される少し前の日に目のすわらない、落ち着かない様子で私のオフィスにやって来たんだ。そして私にフォルダーを渡して『これを学部以外のどこかに隠してほしい』と頼んだんだ。私がこれは何の書類なのか尋ねると、何も聞かずにただ隠してほしいと頼まれた。そして『すべてが終わったら、また返してもらいに来るから』と言ったんだ。」
「『すべてが終わったら』? 何を終わらせるのでしょうか?」
「わからない。彼はそういうとオフィスを去って、私は自宅に書類を持って帰った。その後のことは君が知るとおりだ。彼は切り刻まれて殺された」
「書類を見ましたか?」
「いや、見ていない。書類自体は彼の死とは何の関係もないと思う。彼の博士論文に関連したものだろう。私のブリーフケースに入れて、自宅のアパートの棚に置いてある」
「警察に話すべきだと思います」
「トラブルには巻き込まれたくないんだ」
「それではカラスコ教授かアルフレド グティエレスに渡せばいいのでは? 私たちは先日会ったばかりで、あなたは私のことを何も知らないでしょう?」
「それはそうなんだが……、まだ言ってないことがあって……」
「何ですか?」
「フォルダーを渡されたときに、ロベルトが独り言みたいに『これはアルタフィが興味を持つはずだから』とかなんとか言ったんだ(注 5)。なんて言ったのか聞き返したんだけど、ごまかすみたいに『なんでもない、独り言だ』って言われてしまった。君にも何か関係があると思うから、君に渡したほうがいいと思って。それに私はカラスコもグティエレスも好きじゃないんだ。彼らのところではロベルトの待遇は良くなかったからね。だから、これは君に渡したいんだ。読んだ後は、君が適切だと思うように処理してくれ」
「それでしたら、今日の午後、どこでも取りに伺います」
「午後は忙しいんだ。明日ここに持ってくるよ(注 6)」
「わかりました。私にも都合がいいです。もし良ければ、明日またここでお会いしましょう。私は出張から戻って来るシスネロス教授に用事があるんです(注 3)」
「わかった」
そう言ってアントニオ パレデスは満足そうに頷いた。何か重荷を下ろしたような様子だった。
「ロベルトは論文に自信があったみたいだからな。……ロベルトが自分の愛した巨石遺跡で死ぬだなんて、誰が想像しただろう」
「死の神はいつだって気まぐれですよね」
「何だって?」
「あ、いえ、こちらのことです」
「彼らに嘘を吐いてはいけない。彼らを刺激してはいけない(注 7)。何か楽しいことを考えよう!(注 8) 何か飲むかい、アルタフィ?」
「ビールを頼んでもらえますか?(注 9) すぐ飲みたい気分なんです」
* * *
(注 1)知らない番号から電話があった……その番号にかけ直した
危機管理がなってないアルタフィ。かけ直すとすごいお金取られる番号だったらどうするんでしょう。
(注 2)学部で君の電話番号を聞いたんだ
セキュリティの行き届いていない大学。いや、それにアルタフィ学部に属してないでしょう。
(注 3)今学校に行くところです。カラスコ教授に会う予定なんです……カラスコがオフィスにいなかったので……明日は出張から戻って来るシスネロス教授に用事があるんです
カラスコ教授の用事はいいんでしょうか。本当は全部シスネロス教授になる予定だったんじゃないかと想像しています。
(注 4)アルタフィは我慢できなくなって遮った
アルタフィ、短気……。我慢できなくなるほど長く話してないよね?
(注 5)『これはアルタフィが興味を持つはずだから』とかなんとか言ったんだ
ロベルトとアルタフィは知り合いだったのか!
(注 6)明日ここに持ってくるよ
明日フラグが多いなー。これはずっと待っていたのに現れなくて、書類が手に入らないってパターンではないでしょうか。
(注 7)彼らに嘘を吐いてはいけない。彼らを刺激してはいけない
聞こえてんじゃねーか!
(注 8)何か楽しいことを考えよう!
日本人だと何かと自粛ムードになりそうですが、この辺がやっぱりスペイン人気質なんですかねえ。
(注 9)ビールを頼んでもらえますか?
大学のカフェにビールって置いてあるんだ! まだ明るい時間だと思うけど、まあこれもスペインだからな……。
* * *
なんとロベルトはアルタフィのことを知ってたんですね! だったらアルタフィとカラスコ教授がランチに行って「ちくしょう!」って思ったのは、アルタフィ ラブだったからなんでしょうか……。いや、でも好きだったらあんな貶めるような発言しませんよねえ。真意がわからないロベルト。書類には何が書いてあるのか……。
初掲 2024 年 6 月 9 日
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