2023 年 9 月 27 日 ドルメン 第 4 話

 今回からドルメンの手動翻訳も始めました。

 短い文や、単純そうな文は単語を調べながら訳していきます。途中でわからないところは ?? と入れて飛ばして、一文全部を訳し終わったら G◯ogle に訳してもらって答え合わせをします。G◯ogle さんは割りかしすっきりした文にしてくれてしまうので、ときにスペイン語の細かい構造が訳に反映されないことがあります。その場合は、ちょっと複雑でも、スペイン語の構造を残すようにして訳すようにしています。……まあ、あらすじにはそこまで書き込めませんが。


 それにしても訳文がめちゃめちゃぎこちなくて、読んでて修行が足りんな……と感じます。そのうちに、スムーズな訳になるといいなと思います。


 あ、それからまた登場人物の名前を間違えていました 😖

 モケダ警部ではなくてマケダ警部でした。なんで読み違えてたのか不思議です。

 マケダさんという名前もアラブ系の名前らしいです。アラブ語で「安定した、硬い」などを意味する「マカダ」から来たものとする説と、「戦略的に配置された」という意味の「マキダ」に由来する、という説があるそうです。

 負田まけだ警部とか牧田まきだ警部とか訳しておくと覚えやすそうです。


 それでは、今週のドルメンです。

 お話は、バレンシナ コンセプシオンに住む一児の母、テレサ ディアスが長年の夢だったプールを庭に作ろうとするところから始まります。



* * *


 テレサ ディアスは長年の夢に着手しようとしていた。息子のエドゥアルドの七歳の誕生日を迎えるにあたり、自宅の庭にプールを作ろうというのだ。

「友達の家にはみんなプールがあるのに、どうして僕ん家には無いの? うちは貧乏なの?」(注 1)

 そう尋ねるエドゥアルドを何百回と受け流して、市役所からの造成許可やら何やらを取って、やっと今朝掘削機がプール用の穴を掘り始めるのだ。

「無事に工事が進みますように」

 テレサがそう願っている間に動き始めた掘削機は、しばらくすると大きな音を立てて止まった。作業をしていた男は、掘削機(注 2)を降りると、ショベルに付いている土を取り除いた。そして、不可解な笑みと共にテレサに庭まで来て掘り当てたものを見るように言った。

 掘削機まで連れて行かれたテレサが見たものは、巻かれた金箔の束だった。男が言う。

「古代の財宝ですよ。以前の作業でも見たことがあるんです」(注 3)

 どうしたらいいのか尋ねるテレサに、男は今すぐ市役所に連絡すると言う。

「……でも、プールは?」

「調査が終わるまでは作業中止ですね」

 テレサは己の不幸を呪った。


 アルタフィ、マヌエル カラスコ、そしてマケダ警部は、ルイス ヘストソの葬儀に出席するために、バレンシナ コンセプシオンにある「星の聖母」教会に来ていた(注 4)。教会には、三人以外の参列者はいなかった。彼を知る者のない葬儀は、機械的で人の温かさに欠けていた。大きな農家に住み、裕福で仕事にも恵まれた人生だったが、不幸な最後を迎えたルイス。アルタフィは、昔ながらのよく出来た風習である「泣き屋」を思った(注 5)。悲しむ人がいない葬式のために雇われて、死者のために泣いて式を引き立てる。死者には嘆く者が必要だ。しかし、ヘストソは慰めの涙も無く旅立った。

 葬儀屋の職員によって教会の外に運び出されるヘストソの棺に続いて、アルタフィとカラスコが建物の外に出るとマケダ警部が言った。

「こんなに寂しい葬式は初めてだ。家族はいないのか? それとも来たくないのか?」(注 6)

「思いもつかないよ。私が知っているのは、ルイスは親しみやすくて、向学心に溢れた人物だったということだけだ」とカラスコが答えた。

「心配するな、家族は俺が見つけ出す。今は埋葬に行こう」(注 6)

 ヘストソを埋葬する間、マケダ警部は周りに目を光らせていた。その様子を見て、アルタフィは以前に読んだ推理小説をを思い出した。犯人は自分が殺した相手の死体がどうなったかを確認するために、犯行現場に戻ってくるのだ。そう思い、アルタフィも周りを見渡したが誰もいなかった。

 去り際にマケダ警部はアルタフィを引き止めて言う。

「パストラのドルメンはほんの数百メートル先にあるんですな」

 古代の墓地郡と現代の墓地はいつも同じ場所にあるのだ。

「そうですね……」アルタフィは沈黙の後に答える。アンテケラにあるメンガのドルメン(注 7)でも、すぐ近くに現代の墓地がある。

「偶然なんでしょうか?」アルタフィは、カラスコに尋ねる。

「この頻度で偶然はないだろう。今日の死者は過去の死者と共にありたいと思うのかも知れないね」

 そう答えるカラスコに、地元の警官が近づいて来て言った。

「カラスコ教授、至急考古学の鑑定をお願いしたいことがあります」

 そして、個人宅でプールを建設するための掘削作業をしていたところ、業者が何かを見つけたらしいことをカラスコに告げた。すぐに現地に向かうと答えたカラスコに、アルタフィは付いていくことにした。殺人のことは一旦忘れて、いつもの研究に没頭したかったのである(注 8)。

 現地で市役所からの考古学者とおちあい、カラスコは発掘された物を観察する。市役所からの考古学者は表面分析を終えると、発掘されたのは「金」だと断定した。

「どう思う? マノロ」(注 9)

 確かに金だと返答するカラスコ。埋出物から考察すると、土地の下に重要な遺跡がある可能性が高いため、この土地を調査する必要がある。そして、その調査が終わるまではプールを建設できないことをテレサに告げる。落胆するテレサ(注 10)。バレンシナ コンセプシオンとその隣の住宅街であるカスティリーハ デ グスマンは、巨大な古代墓地の上に建つ町なのだ。それは、地元のアマチュア歴史学者であるエヴァリスト オルテガ(注 11)が造成で掘り起こされた土地を地道に歩き続けて集めた遺物からわかった事実なのだった。



* * *


(注 1)友達の家にはみんなプールがある

 友達みんなセレブなんですか? バレンシナ コンセプシオンは、荒野の中にある町なので土地はたくさんあるみたいです。日本円で四千万円くらい出すと、ベッドルームが五部屋あるプール付きの戸建てが買えるようです。


(注 2)掘削機の操縦者

 原文は Elエル maquinistaマキニスタ de unaウナ retroレトロ となっています。「マキナ」は「マシン」と同義語で機械のことです。機械を操る人なので、マキニスタです。でも、レトロがわかりません。レトロの操縦者って何だろうと思って、辞書を見てみましたが、レトロは「旧式の」とか「レトロ調の」ぐらいしか見つかりませんでした。インターネットで調べてみると、「レトロ エクスカバドーラのマキニスタ募集!」という広告を見つけました。エクスカバドーラは掘削機のことです。これがレトロ? 旧式の掘削機のこと? 違いました。「バックホー」という、前方にローダーが付いて、後方にショベルが付いている掘削機を、スペイン語では「レトロ後方 エクスカバドーラ掘削機」と呼ぶらしいです。広告は、建設現場でバックホーを運転できる人を探してたんですね。小説読んでる人は、みんな「レトロ」で通じるんでしょうか。


(注 3)金箔の束

 掘ってそんなの出てくるところだったら今すぐ引っ越す! と思いました。


(注 4)「星の聖母」教会

 実在する教会のようです。今頃は「ドルメン ツアー」で、ドルメンやら教会やらガイド付きで巡れるようになってそうな気がします。


(注 5)泣き屋

 スペインでも泣き屋なんてあるんですね! スペインのお葬式を見たことがありますが、すごくカジュアルです。正装もしないで、みんな普段着(セーターとジーンズとか)で出席したりしています。平服なのはもしかしたら「急いで駆けつけましたよ!」みたいな意味があるのかもしれません。泣き屋は、泣くことによって悪いものを洗い流すという意味もあるそうです。昔は大切な風習だったんでしょうね。


(注 6)ヘストソの家族について言及するマケダ警部

「家族はいないのか? それとも来たくないのか?」「心配するな、家族は俺が見つけ出す。今は埋葬に行こう」

 被害者の親族を探し出して連絡するのは警察の仕事じゃないんかい! 自分が連絡してないんなら、家族が来るわけないと思います。マケダ警部、寝ぼけてます。


(注 7)アンテケラにあるメンガのドルメン

 スペインの南部にある町、アンテケラには二つ大きなドルメンが並んでいて、一つがヴィエラのドルメン、もう一つがメンガのドルメンと呼ばれています。G◯ogle マップで見ると、確かにこの二つのドルメンの横に市営の墓地があります。


(注 8)カラスコに付いていくアルタフィ

 アルタフィは今度は自分でカラスコに付いていくことにしました。しかも「殺人のことは一旦忘れて」とか、結構自由な人です。


(注 9)「どう思う? マノロ」

 原文は "¿Qué piensas tú, Manolo?" です。市役所の考古学者がカラスコさんに尋ねる台詞です。他のヨーロッパ言語と同様、スペイン語には丁寧語があります。Usted だったら丁寧な「あなた」、tú だったら「君」とか「お前」とかいう意味になります。この二人が知り合いだとかいう説明はこの時点まで全く無く、突然タメ口です。「マノロ」というのはカラスコさんの下の名前である「マヌエル」の愛称です。名前さえ出て来ないモブの考古学者が突然、「カラちゃん、どう思う?」みたいな感じで、お前誰だよって思いました。


(注 10)落胆するテレサ

 原文ではテレサは "Qué putada…" という悪態をつきます。putada は以前にも出てきた puta (売女)が形容詞化されたものです。英語で言う f ワードと同義語でしょう。日本人だったら「えー、もう、どうして……?」とか、「ツイてなさすぎる……涙」とか言いそうですけど、スペインの女性はそんなに口が悪いんでしょうか。


(注 11)エヴァリスト オルテガ

 オルテガさんは、バレンシナ コンセプシオンの郵便局で働きながら、バレンシナの歴史をずっと調べていたアマチュアの歴史学者だそうです。彼の貢献によってバレンシナの歴史が明らかになったことを称えて、2016 年にバレンシナのある道に「歴史家 エヴァリスト オルテガ 通り」という名前が付けられたそうです。



 今回は結構長い文章だったのですが、人の来ない葬式の様子や、バレンシナの遺跡がいかに広範囲にわたっているかについての記述が延々と続いていたので、だいぶ端折った感じです。

 LingQ アプリは訳した章から単語リストを作ってくれるのですが、全然覚えられなくてがっかりです。覚えるには、書き取りした方がいいですよね……。むー(面倒くさい……)。


 皆さんの勉強も続いてますか? 今から始めようかな、という方も大歓迎なので、気が向いたら応援コメントに書き込んでください。こちらからも応援させていただきます!



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