幕間 未来の国王と花の王国
昔のこの国は、どこもかしこも華やかで、ひだまりで朝露が煌めき、花の香りで包まれていた。
笑顔で溢れ、誰もが幸せだと語った。
ほとんど魔力切れの状態で、なんとか私は城内まで戻ってきた。
――私ただ一人で……。
この状態では、白き乙女を救出するのは困難だとわかっていた。
わかってはいたが、私は一人唇を噛み締める。
城の者は誰も、私を責め立てはしなかった。
むしろ戻ってきてくれただけで喜ばしいと。
――何が喜ばしいものか……!!
眼の前まで、この手が届く距離まで、辿り着いたというのに。
私は彼女を救い出す事ができなかったんだ。
私はおめおめと、ここまでただ一人帰ってきてしまったんだ。
自身で選んだことだ。
わかっている。
でも、それ以外、選ぶことができなかったじゃないか。
私の力がもっと強かったら……。
あんな小国に、彼女を残したりしなかったのにっ!
暗澹の彼奴らのそばに、彼女を残したりしなかったのに……っ!!
しかし、これではっきりしたんだ。
あの小国は敵だ。
暗澹の彼奴らを引き入れ、フィオーレ王国に牙をむいている。
私は、城の奥にある、王族以外は知らされていない隠された聖堂に向かった。
今度こそ、彼女を手に入れるために……。
聖堂の前で彼は一人呟いた。
「どうか……力を与えてくれ……」
無力な自分を知った。
絶望ならば、もう嫌というほど味わった。
自身ならば手に入れることができると息巻いて、なすすべもなく一人、帰ってきてしまった後悔を。
触れることができるほど近くにいて、触れることさえ叶わなかった失望を。
ただひとつの望みすらも、この手に掴みとることのできなかった絶望を。
私は全て、神の与えし力に変える。
私は聖堂の扉を開けた。
そして、広く静かな聖堂で高らかに宣言する。
「私は神の定めし
聖堂に響く私の声に誘われるように、天から光が降り注ぎ、人影が揺れる。
長き時間、鳴らされることのなかった鐘の音が、聖堂を越え城内、果てはフィオーレ王国中に響き渡る。
ただ一人、白き乙女。
あなたを、手に入れるために。
……もう、私は迷わない。
……もう、私は
どれだけの時間が過ぎただろう。
聖堂の時間は止まったように、何も変わらないというのに、私の身体は痛みに
心まで蝕まもうと囁く声は、耳から離れてくれない。
それでも、私は悲鳴を上げる身体を奮い立たせ、
どんな
この身、朽ち果てようとも、あなたのためならば。
この身、全て、あなたのものだから。
たとえ、
フィデスが聖堂にて
「来ねぇーー!!全っ然フィデスさん迎えに来ねぇんだけどっ!!」
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