第17話 最強(最凶)お兄さんほぼ降臨
とうとう、明日は宴の日だ。
この宴は、ヒノモトの平和と繁栄を願い、盛大に
前回までのこの宴は、宮の
それこそ、たずさわっていない人たちはいつ
けれど、時が流れ、戦も終わり、人の考え方、生き方が変わっていくとともに、この宴も変化した。
ホオリと鬼王の関係が宴のあり方とやり方を変えていったらしい。
帝や
宴の開かれる場所も、宮にほど近い町の一角でみんなが足を運びやすい人通りの多いところになった。
神に奉納する舞も遠い場所からでもわかるように櫓の上で盛大に舞うことになった。
シンジさんは、「これはもう、別の宴……庶民の
みんながいて、やっとつかんだ平穏をみんなが繋いでくれようとしている。
あぁ、このヒノモトは本当に平和になった。
このヒノモトは本当に素敵な国になった。
今のこのヒノモトに陽が昇らない場所など、陽の照らせない場所などない。
きっと、この先も。
だからこそ、それを感謝し、伝え、みんなが安心して暮らせるようにこの宴を成功させよう。
舞、頑張るぞ!!
「でさ、何で鬼王の俺が御神姫のお守りを仰せつかってんだ?」
いきなり今日の朝に宮に呼び出されて、私の護衛役を
「たしかに鬼王は強いから私は安心だけど、急な話になったのは……なんでだろうね?」
私も鬼王と一緒に呼び出されて、その話を聞いた。
ヤマトも同様だったみたいで随分嫌がって猛反対してた。
けど、決定事項だったようで、その方針が変わることはなかった。
急な話に、戸惑っていないように見えたのは、私たちに話をしていたシンジさんやクサナギさん、インベさん。
そして、その話の場に貴族ではなくただの舞手であるヤタカさんが同席していたのも不思議だった。
それこそ、ヤタカさんが話を強く進めているようにも見えた。
ヤタカさんがいるのが、ダメとか嫌じゃなくて、珍しいって思った。
昨日のことも、ヤタカさんは何事もないように振る舞ってくれてるからあえて何も言わないけど……私の中では、なにか引っかかってる。
うーん……と答えの出ない
「まぁ、俺としては大変ありがたい話だけどな。急な話で驚いたってだけだ。小さい頭なのに、悩ませて悪かったな」
ヘラっとした顔で悪口を言う鬼王に、非難の目を向ける。
鬼王は私の非難の目など、どこ吹く風で言葉を続けた。
「ヤマトだけ残ってあーだこーだ話してるみたいだけど、遅ぇな……先、帰るか?」
「ヤマトを置いてけないよ」
「たぶんあいつ、お貴族様方がどう説得しようが納得しねぇだろう?かと言って、今回ばかりはお貴族様方が意見を変えることもねぇみたいだし……」
鬼王が両腕を真上に上げて伸びをする。
私も座りっぱなしで固まった体を軽く動かしてほぐす。
私の様子を見ながら、思い出したように鬼王が徐ろに口を開く。
「そういえば、さっき、お前のお師匠さん……すごかったな」
鬼王の言葉にさっきのヤタカさんの様子を思い出し頷いた。
「すごい、勢いだったよねぇ」
2人で大きく頷いていた。
先程、話がとりあえず終わり、鬼王が帰ろうとしていた。
私は、まだ話し合いが続いている(駄々をこねている)ヤマトの帰りを待つから、と鬼王を見送ろうとした。
それを見咎めたヤタカさんが、そりゃぁ、すごい勢いで鬼王に詰め寄った。
鬼王の胸ぐらを掴み、「何をひとりで帰ろうとしてんのよっ!!おまえの頭はザルか何かなのかい?おまえにこの子の護衛の任を与えるっつったろ!!あたしたちはまだヤマトに話があるの。その間あたしの可愛い弟子が一人ぼっちになっちまうだろ!!」とすごい剣幕で言い立てると、鬼王の首根っこ掴んで引っ張り戻した。
あぁ、鬼の一門の大将に、そんなこと……と思ったが我が身可愛さで何も言えなかった。
だってなにか口を挟もうものなら、ヤタカさんの怒りの矛先が私に向くかもしれないからさ。
助けてやれんで、ごめんな鬼王……。
「あんたも行くよ、ついてきな!」とヤタカさんに呼ばれて私は「へいっ!!」と元気いっぱいに三下みたいな返事をした。
だってあの鬼王を、鬼の一門の頭を、いともたやすく捻り上げて引きずりながら廊下を平然と歩いてるんだよ?
鬼王も抵抗してなかったけど、それでも大の男を平気な顔して引きずってるんだよ?
しかも人間の男の人よりも一回り以上でかい鬼の中でも、ルインと一、二を争うデカさを誇る鬼王を!通り過ぎる人たち、みんなびっくりして目を丸くしてるのにさ。
全然人の目も気にもしないで、スタスタ歩いていくんだもん。
もう最強(最凶)のお兄さんほぼ降臨してたもん。
そして話し合いしてる部屋にほど近い部屋にボンッと投げ捨てるみたいに鬼王をつっこんだ。
そして私にニッコリと微笑んで「ここで待っててくれるかしら?話が終わったらここにヤマトを迎えにこさせるから」と言ったヤタカさんに、私は微笑んで頷くことしか出来なかった。
そして未だ、ヤマトの迎えを鬼王と待っている、というわけなのだ。
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