第10話 大人の私は、日々を悩ましくも面白おかしく生きている
もともと今日は帝に話があると言われて宮中へ向かっていた。
その途中、あの通りの道でキラたちに会った。
鬼王はまだ酒飲み対決してるんだろうけど、キラたちは大丈夫かな?
そろそろキラが終わらない対決に苛ついたり、ラスがそれをからかったり……しびれを切らしたルインに鬼王が頭をぐしゃりとかされてないといいんだけど。
それにしても予定時間よりだいぶ早めに出て正解だった。
予想外の出逢いがあったけれど、
なんていっても、時間を守るのは一応社会人としての常識だからね!なんてちょっとアラサーの自分が顔を出す。
まぁ、何歳でも時間は守ったほうがいいけどね!
思えば高校生の頃の自分はあえてそんな事、特別に考えたりはしなかったけど。
自分が社会人になって強く実感しているのは、信用と信頼と安全はお金では買えないということだ。
そして一度、失うと取り戻すまでに物凄い時間と労力とメンタルを要するということだ。
どこどこの会社が不正したとか、あの部署のあの人が
この世の中、嘘でも本当のことでも聞くにたえない嫌な噂や情報が飛び交ったりする。
要は大人になると、信用問題が大きくついて回るということで。
その一つが時間厳守だったりする。
アラサーになって、周りからも社会人として!とか大人として!とか、いい歳してどうのこうの、周りの声が煩わしくなったせいなのか。
前回ヒノモトに来た時よりも、ある意味したたかである意味、とても臆病になっている気がする。
まぁ、仕方ないことかもしれないな。
あの時はまだ、ただ大人に守られて生きてきた学生で。
今はヒノモトでの見た目はあの時のままでも、中身はアラサーなわけだし。
大人になって、イヤなことばかりってわけでもなかったし。
たとえば、お酒や食事、友人との遊び方も違う。
買い物一つとっても、学生では
ゲームへの課金も、推し活も、コミケへの挑み方も、たぶん学生時代とはゼロの数が全然違う。
私の場合、ある程度はアラサーとしての人生も普通に
あの時と今とでは、だいぶ感性や感覚が違うところがあるのも当然だよね。
「お疲れになりましたか?
何気なく考え事に耽って、口数が少なくなってしまった私を、疲れているせいだと勘違いしたヤマトがおずおずと声をかけてくる。
気遣ってくれるヤマトに、私は大丈夫だと伝えたけれど彼は心配そうな顔を崩さない。
「歩きどおしになってしまいましたし、
ヤマトがふと、辺りを見回した時、後ろから穏やかな声が降りそそぐ。
「いかがしましたか?ヤマト?」
声に振り返る私たちの目に映ったのは、何か探しものでも?と穏やかに微笑むシンジさんの姿だった。
「御神姫様。ご足労いただきありがとうございます。本来であれば車を用意して、私がお迎えにいかなくてはならなかったのですが……すみません」
シンジさんの言う車とは、
牛車とは
見た目も仕様も、家によって
装飾が
シンジさんの用意してくれる牛車は見た目も質もよく、乗り心地も
けれど今回は私から辞退させてもらった。
前は普通に牛車に乗せてもらっていたが、今はあまり得意じゃなくなってしまった。
大きいから道を塞いで通行人に迷惑をかけるから気が引けるし、何よりめちゃめちゃ遅い。
牛が引いてるから当然なんだけれど、私が普通に歩くよりだいぶ遅い。
さすが
それが今の私には耐えられない。
年齢のせいなんだろうか。
最近は、やけに時間の流れが早く感じて生き急いでしまう。
というか、とてもせっかちになってしまっている。
少女漫画でお約束の
最近読めるものなんて、グルメ漫画とか4コマ漫画程度のショートストーリー、日常マンガなど、私自身の感情の
ハラハラとか、ドキドキとか無理だ。
それだけで疲れてしまうから。
ふと、歳をとって感情が枯れてしまったのか、と悩む時もある。
しかしコミケ間近の感情は異常。
心身ともにお祭り騒ぎでも疲れなど一切感じない。
なのでその感情の起伏NG期間は自分的には、いつか来たる大好物のためのHPのチャージタイムだと思っている。
だって今、眼の前にいる私のイケメンを見ているだけで、
ニコリと微笑むシンジさんと、私を気遣うようにみつめるヤマトを見ているだけで、ヨダレが出そうになる。
昔、キュン死にする!とかいう言葉があったけど、まさに今その状態だ。
キュンで溶けそう、キュンで何か
――顔にはおくびにも出さないけどね!
せっかく、乙女ゲームのヒロインの立ち位置に、今いるわけだからね。
イメージ的にあまりよろしくない立ち振舞は、気をつけていますよ。
一度、軽く深呼吸してからヒロインモードになった私は、申し訳無さそうな表情でシンジさんに言葉を返す。
「謝らないでください、シンジさん!牛車は、私からやめてもらったんですから!すみません……せっかくだから平和な道をゆっくり歩きたくて……!」
嘘は言ってない。
他にも理由があるだけで嘘ではない。
私の言葉に柔らかい表情のシンジさんは、とろりと
「さすがは
甘い菓子は疲れに
ヤマトはホッとした顔でシンジさんに誘われるまま、廊下を歩く私の後に続いた。
ニコリとヒロインスマイルで、私はお礼を言う。
「ありがとうございます、シンジさん!ヤマトも心配かけてごめんね?」
和やかな時間の訪れを感じていた。
まぁ、心のなかでは甘い菓子よりシンジさんの微笑みのほうが甘くて大好物です!とか。
不謹慎だとわかっていて、あえて言わせてもらうなら、心配してくれるヤマトの表情が
心のなかではだいぶ和やかというより、お祭り騒ぎのバーサク状態だったけど、決して表にはださない。
――だって御神姫様だから!
乙女ゲームのヒロイン的な立ち位置を死守したいから!
シンジさんたちは、私が廊下を歩きながらずっと、ヒロインモードな私と欲望MAXな私が乱戦していたことなど知る
いや、絶対に知らないでいて!
そんな事を思いながら私は、シンジさんが用意してくれた部屋に入っていった。
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