第4話 つまりはハッピーパラダイス!!

 私の世界での年齢を黙秘し、実年齢を詐称することを心に決めて、またみんなと話に花を咲かせる。

 そんな中で話を聞いていると、ありがたいことに、ヒノモトは今とても平和らしい。

 私が、鬼王きおう率いる鬼の一門と争うヒノモトを平和へと導き、この異世界から離れてから、ヒノモト的にはひと月しか経っていないそうだから、そりゃあ平和であってくれなきゃ困る。

 それでも鬼の一門の大将である鬼王も、絆を結んだことで完全に私の味方だし、新たに悪さをしそうな勢力も今のところいないことは、喜ばしい限りだ。

 異世界ヒノモトは今かつてないほど平和で、ヒノモトに暮らす人たちはその平和を喜び、謳歌しているという。

 それはこの上ないほどいいことだ。

 やっぱり、平和へと導いた身としては、できるだけ長く平和であってほしいと思うもの。

 ひと月と言わずヒノモトには、むこう百年、千年でも平和を謳歌してほしい。

 それは大前提として……。


――私がヒノモトに帰ってこれた理由ってなんだろう?


 いや、みんなが頑張ってくれたからヒノモトに帰ってこれたってことは確かなんだろうけど。

 でもだいたいどんなゲームでも漫画やアニメでも、異世界に再度召喚されてきたからには、何かしらイベントがありそうなもの。

 たとえばゲームとかだと、なんかメインストーリーとかクリアミッションとかがあったりするものなんだけど。

 現時点、そういうものは一切なさそうだ。

 そういえば、よく考えてみると、今、私が御神姫みこひめとしてできること、ほとんどないな。

 これまで、私がヒノモトで御神姫としてやってきたことと言えば。


①鬼王ならびに鬼の一門たちとのバトルに参戦、彼らが使う絶大な妖力を打ち消す。

②妖力によって、もしくは人の強い恨みなどの悪意によって暴走してしまったあやかしを抑える。

③帝や貴族たちが開く宴、もしくはヒノモトの伝統の祭りで舞う。


 鬼王が私の味方になってくれた時点で①と②はやる機会がない、ありがたいことにね。

 そうなると、とりあえず③はできるだろうけど、そのために異世界に呼ばれたってことはないだろう。

 御神姫ってそんな人気ダンサー的な立ち位置ではないはずだ。

 となると、もしかして……やっぱりこれは頑張った私へのご褒美的なものなんじゃない?

 だって私、ヒノモトでも頑張って、私の世界でも社会人として今日までとても頑張ってきたもの。

 そして、みんなが私の無事を願ってくれて、私と逢いたい!って心の底から強く思ってくれたことで起きた奇跡なのでは?

 まぁ、鬼がいて、あやかしもいて、妖力や御神姫の神聖な力とかもあって。

 なにより異世界に召喚されてきてるわけだから。

 不思議な現象や嬉しい奇跡が起こっても、なんらおかしくはない。

 私にとって今一番大事なこと、それは現時点、私には大変な責務とか役目とかないということ。


――ということは、やっぱりこれはただのボーナスタイムでしょう!?ゲームをクリアしたものだけに与えられるおまけイベント、後日談、アフターストーリー的なイベント!?最近そういうダウンロードコンテンツ増えてるもんね!


 そう考えても、いいんじゃない?

 だってヒノモトは平和!

 出逢ったイケメンは片っ端から仲間にした!!

 私は若返って体が軽い!!

 これはまさか、たまにあるオマケイベント。

 平和になったヒノモトで仲間にしたイケメンたちと楽しく悠々自適ゆうゆうじてきに暮らそう!的なやつか!?

 ここに、戻ってきた時からよもやと思っていたが。

今はもう、そうとしか考えられない。

 だって私が今、御神姫としてヒノモトでできることって踊ることしかないもん!

 そんなダンサーとして、世界はおろか異世界にまで股をかけた覚えないもん。

 だとするならば、なんの義務や制約もなく異世界にいる私は!


――つまりはハッピーパラダイス!!


 ということでいいんじゃないだろうか!?


「御神姫?急に黙り込んでどうしたんです?」


 ヤマトが心配そうな表情で声をかけてくる。

 そんな彼に私はとびっきり良い笑顔で答える。


「ううん、今、幸せだなって思っただけ!」


 私の笑みにヤマトは心底、安堵したようだった。

 そしてまたヤマトやみんなと笑い合う。


 今はただ、私はこの異世界生活を満喫することにした。


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