第14話 東城正樹は(一部では)有名人

 銭湯から帰る途中いつも通る公園を横切る。

この公園は割りと近道になるし、人もそれなりに居る。


「ねぇ…あれヤバくない?」

「うわ~最悪。」

「警察呼んだ方が良くない?」


 何か有ったのか?俺は近くのおっさんに聞く。

「なんか有ったんすか?」


「ん?あぁ、どうやら女の子が柄の悪い輩に絡まれてるみたいなんだ。」


「ふ~ん」

 誰も助けないのね。そして俺はそこに向かう。周りが暗い事もあり、近付くまでその女の子の姿が判らなかったが…


「ん?あれは、高瀬か?」

 どうやら知り合いだった様だ。高瀬はその場を離れようとして、腕を掴まれた様だった…そして男達が何か言ったのか、高瀬が泣き出した。それでも周りは助けようとはしない。


 俺は考える前に高瀬の下に向かう。


「おい、そこの変態共。どう見ても嫌がって泣いてるだろ。離してやれよ。」

 と、声をかける


「あ?なんだてめえ」

「ガキは黙ってろ」

「てめえも泣かすぞ?」

「ヒーロー気取りかよw」

 男達が喚く。



「あ…」

「とう、じょう…?」

 高瀬がこちらを向き、俺に気付く。それに俺は


「おう。東城さん家の正樹くんだ。」

 と、答える。そして

「大丈夫か?高瀬。」

 俺は真剣な眼差しで聞く。


「うん」

 どうやら間に合った様だな。



「おい、が、ぐべぇら!?」

 こっちに来た男の顔面を打ち抜く。そして高瀬の腕を掴んでいる男に向かい飛び膝蹴りをかます。

「あが!?」

 これでとりあえず2人。


「高瀬、少し下がってろ。」

「う、うん…」



「このガキ…」

「調子に乗んなよ…!」


 俺はそのまま1人の懐に入り足をかけて転ばせせ、もう1人を思いっきり殴る。

「がは!?」

 そして転んだ男を蹴り飛ばす。

「ぶべ!?」



 そして俺はしゃがんで1番軽い怪我の倒れてる奴の髪を引っ張り、目線を合わせる。


「おい、てめえら何しようとした?ああ?」

 いや、俺の女じゃないけど、こいつらを脅す為だし

「ガキが…」

「それにここら辺はらしいからな。落とし前…着けさせてもらうぞ?」

「!?」

 男はそこでようやく俺が誰か理解したらしい

「と、と…うじょう…まさ…き?」

 男が震えながら俺の名を口にする


「ああ。俺が東城正樹だ。」


「あなたの彼女とは…し、知らず…」


「俺の女じゃなくても、嫌がる子に無理やり絡むんじゃねぇよ。」


「はい…」


「…次は無ぇぞ?」

「は、はひ…」

 そう言って男は泡を吹いて気を失った。

 これでもうこの辺で高瀬が絡まれる事は無いだろう。




 そして周りが騒がしくなる。どうやら警察が来た様だ。


「よし、ずらかるか。立てるか?高瀬。」

「え?あ…ごめん…腰が抜けて…」

 よし。ならば…

「悪い。失礼するよ」

「へ?きゃあ!?」

 俺は高瀬をお姫様抱っこしてその場を離れる。



「あ、と、東城!?下ろして!!お願い!!」

「いや、腰が抜けたんだろ?」

「ちが!?いや、そうだけど!違うの!!」

「?」

「そ、その…汚いから…私…今…」

 高瀬が恥ずかしさからか顔を隠し泣いている。

「…」

 理由は解っている。俺は解っていて黙っているし、高瀬をお姫様抱っこしている。


「大丈夫だ。気にするな。」

「気にするわよ!?馬鹿!!」


「あ、こら、暴れるな!」



 とりあえず…俺の家に運ぶか。

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