第13話 正樹、フラグ立てちゃいました?

「お疲れ様でした。」

「はぁ~い。お疲れ様ぁ」

「お疲れ様です。」

「お疲れ」

 今日の俺の仕事は終わり、後は夜の営業だ。この喫茶店は金曜日と土曜日に限り夜中まで営業して、アルコールやディナーなどを提供している。俺達未成年のバイトはここまでだ。


 このバイトは中々に時給が良いし、シフトの融通もきく。実に有難い。


 そして俺は我が家に帰る前にある場所に向かう。それは近くにある銭湯だ。

 休日前のバイト上がりにこの銭湯くるのが俺の楽しみなのだ。


「ちわ~す」

「あら、まさきくん。いらっしゃい」

 この銭湯の番頭のおばちゃんが出迎えてくれた。毎週来てるからな。もう常連だ。

 おばちゃんにお金を払い、早速風呂に向かう。



「ふぅ~労働の後の風呂は最高だな。しかもでかい風呂」


 俺は風呂から上がり

「おばちゃん。フルーツ牛乳」

「はいよ」

 やっぱり風呂上がりは牛乳よ。牛乳、珈琲牛乳、フルーツ牛乳と順番にサイクルして飲むのが俺流だ。



 そうして俺はご機嫌なまま家に帰るのだ。




…帰る。筈だったのだ。





……………………

side渚


 今日は昼から調子が悪い。原因は解っている。

体育の時間の男子の会話…そして東城の答えだ。


 私はそれなりに見た目には自信がある、雑誌のモデルもやった事もある。

 そして私のクラスでは私を含め雪と原田美空と中本千代で四天王と呼ばれている。そんな事は別にどうでもいいけれど…四天王ってダサくない?


 そしてほとんどの男子は原田さんの胸を見る。中本さんも一部から人気だ。雪だってバランスのいい身体だし、美人だ。


 私は…雪よりも美人じゃないし、原田さんみたく胸もお尻も大きくない。中本さんほど振り切ってもいない中途半端だ。


 男子達の目線は雪や原田さんの胸やお尻ばかり見ている。

 あの進藤ですらチラチラみているのだ。東城はよくわからないボケーとした顔をしていたけれど。

 

 体育のサッカーは面倒で最初に適当に駄目なプレーをしてボールが来ない様にした。そして私はサボっていた。

 その時だ男子達の話し声が聞こえのは。


「で?東城はどうなんだ?」

「原田派か白崎派か高瀬派か中本派か」

「大、中、小、無」

「…」

 と、失礼な事を言っていた。私は聞き耳をたてた。

「…俺は」

 東城がそう言ったところでチャイムがなり有耶無耶になった。そして校舎に戻る時私は東城に聞いてみた


「で?東城は何派なの?」

 なんとなく。本当になんとなく、ちょっとした好奇心で聞いてみた。他意はない。…と思う



「…はぁ、俺は、好きな女なら関係ないが…高瀬派だよ」


「ふぇ!?」

 暫く理解出来なかった。あれからまともに東城の顔が見れなかった。


 あれからずっとあの言葉が頭の中でぐるぐると巡る。「好きな女なら関係ない」…そして、「高瀬派だよ」の言葉。つまり、そういう事…だよね?

 お昼からずっとこの事ばかり考えていた。



 そして、ふと周りを見るとすっかり暗くなっていた。

「あ、もうこんな時間。早く帰らないと…」

 買い物ついでに少し公園で休んでいたらだいぶ考え込んでいたらしい。周りも暗くなっていた。


 私は立ち上がり帰ろとすると、

「あれ?君1人?」

「こんな時間にこんなところにいたら危ないよ?」

「家まで送ろうか?」

「あ、これから俺達と遊ばね?」

「いいね!」

 と男達が私の囲みます。


「いえ、結構です。私、もう帰るので…」

 私は怖いのを我慢して出口に行こうとするが

「おい、つれないなぁ」

「きゃぁ!?」

 男に腕を掴まれる。

「いや…離して、ください!」

 怖い…けれど、それを堪えて男達を睨む

「お~怖い怖いw」

「お、この娘可愛いじゃん。お持ち帰りする?」

「いいね!」

 男達が騒ぐ。どうやら逆効果だったみたい


「い、いや…」

 私は泣きそうになり、もう、恐怖を堪える事が出来ず震えていた。


「お、この娘震えてんじゃん」

「大丈夫だよ。俺達優しいから」

 男達の嫌らしい目に、強い力で掴まれ私はとうとう…

「ぅ…グス…ぃゃ…」

 私は泣いてしまった。けれど周りに居た人達は見て見ぬふり、誰も助けてくれない。誰か…助けて…


「あ~あ泣いちゃったよ」

「やべぇ、俺興奮してきた」


 

 



 その時、


「おい、そこの変態共。どう見ても嫌がって泣いてるだろ。離してやれよ。」

 と男の声が聞こえた。


「あ?なんだてめえ」

「ガキは黙ってろ」

「てめえも泣かすぞ?」

「ヒーロー気取りかよw」


 そして私は声の方を向く

「あ…」

 そこに居たのは


「とう、じょう…?」


「おう。東城さん家の正樹くんだ。」

「大丈夫か?高瀬。」

 

 目の前に東城が居た。私を安心させる為かおちゃらけているが、私に大丈夫か問た時の真っ直ぐな瞳…それに私は確かに安心したのだ。



「うん」

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